ETC導入顚末記――二輪車ETCらくらく導入キャンペーン利用

 

 2008年に四国・九州ツーリングを計画し、フェリーではなくて高速を自走していこうと考えたときに、ETCの導入を思いたった。元来高速料金は高すぎると思っていたし、旧来の道路公団の無駄使いと無責任ぶりには呆れ果てていたから、高速は使わない主義だった。それでも遠方の旅行に出るときには使わざるをえないし、これまでも使用してきたのだが。

 2008年のツーリングで高速を利用するならば、割り引きのあるETCを導入したほうが、このツーリングでは元はとれなくとも、長い眼で見ればお得なのはあきらかだ。高速は使わない主義ではあるのだが、ETCで50%引きの通勤割り引きや40%オフの深夜早朝割り引きがつかえるのなら、割高感は薄れるから、利用してもよいと思えるではないか。それに二輪ETCは4万円ほどの無料通行サービスがついていると聞いていたので、これだけで導入費の大半がまかなえてしまうではないかとも考えたのだった。

 さっそく調べてみると、4万円の通行料付きのキャンペーンは終了していて、落胆してしまった。それでもETCの導入にはいくらかかるのか大手バイク用品店のAで聞いてみると、総額で45000円ほどかかることがわかった。2008年のツーリングで割り引きになるのは1万円くらいだろうから、これではなかなか元がとれず、踏ん切りがつかない金額だ。しかしさらに調べてみると、二輪ETCは15750円の助成金がでていることを知った。これは正式には『二輪ETCらくらく導入キャンペーン』という名前で、(財)道路システム高度化推進機構(ORSE)――各高速道路会社の下部組織のようだ――が助成金をだしているものだ。45000円から15750円を引けば3万円ほどになるから、これなら元はとれる金額、納得のいく計算がなりたつと判断し、ETCの導入を決めた。

 ところがこの助成金を受けるには、指定された店でなければならないと言う。指定店の一覧表を見てみると、よく行く大手バイク用品店Bの名があるから、ここにいって聞いてみた。すると助成金を受けるには条件があると言う。どういうことなのか詳しく聞いてみると、ビザカードの24回払いで買わなければならないとのこと。助成金を受ける条件が24ヶ月以内の分割払いにかぎる、となっているためだが、これは長くETCを使ってもらいたいがためにORSEが考えたことらしい。利用する者としては金利を負担しなければならないから、なんとも納得のいかない理屈である。

 バイク用品店のBに金利はいくらなのか聞いてみると、カード会社ではないからわからない、という答えがかえってきて驚いてしまった。カードを使えと言っておいて金利も知らないのは商売人とは言えないが、こういうことは本社が管理していて、末端の店員はわからないのかもしれないと善意に解釈したが、カード会社からバックマージンをもらうのだろうから、失礼な話だとは思った。

 ビザカードはたまたま所有していたが、分割払いで利用したことがないので、金利を問い合わせてみると、なんと年利13.27%とのこと。普通の買物を24回払いにするだけで、こんなにとるの? とオペレーターの女の子に強い調子で聞いてしまったが、オペレーターは、ハイ…‥、と困惑した声をもらしていた。これは高すぎると思う私が常識がないのだろうか? これが当り前なのか。

 正式な金利計算とは誤差があるかもしれないが、単純に計算して、3万円を24回払いにすると、金利は7962円となる。助成金が15750円だから、実質7788円の助成ということになり、7788円はたしかに大きいが、この金額のために大嫌いなローンを組み、24回、2年にもわたって神経をつかって毎月の支払いをするというのは、間尺にあわないと思うのは私だけだろうか。しかもそれなのにである。BにETCの在庫はなく、1ヵ月待ちの状態になっているというから驚く。私とおなじように助成金をもらってETCをつけようとしているライダーがそんなにいることに、ETCの人気と、皆しっかりしている、と感じるが、店員に、もしかすると待っているあいだにキャンペーン台数が終わってしまうこともありうるので、そのことはあらかじめ了承してほしいと言われて、絶句してしまった。

 予約しますか、と店員に聞かれたのだが、実質助成7788円には魅力を感じられずに保留とした。とりあえず取引しているカード会社にETCカードの発行を依頼しーーETCの助成金のためにわざわざ取引していないカード会社を使うことは面倒で嫌だったーーほかの指定店にも電話して条件を聞いてみることにした。

 メーカー系列店のⅠに電話をしてみると、お上が決めたことですから、という表現で助成金を使う場合には24回払いのカード利用が条件と言われた。お上の、という物言いは、昔下取り車を買い叩くときに、下取り車の価格は公正取引委員会が決めていますからーーこれは嘘であるーーと言っていた一部のバイク店、中古自動車店を思い出させ、あまりにもレベルが低いのですぐに電話を切った。お上が、お役所が、と言う商売人は客の無知につけこもうとしているから許せない。だいたいORSEはお上でもなんでもないのである。天下りはしているのだろうが。

 つづいて個人店①に電話をすると、カードを利用しない分割払いでよいので、金利はかからないという説明を受けた。となると助成金が丸々有効になるので、ここがいちばん条件がよいことになる。ETCの在庫はあるのか聞くと、1台だけあるとのこと。ETCカードが来たらいくことにしたが、オフロード・バイクの場合は、現車を見ないとETCを取り付けられるのかわからないとも言われた。

 店によって条件がかなり違うことがわかったが、これでお得に導入できそうだと思われた。ETCカードは2社に頼んでおいたが、インターネットで申し込むと3日目と5日目に配達記録郵便でそれぞれ到着した。

 さっそく個人店①に連絡すると、残念ながらETCは売れてしまったとのこと。そしてつぎはいつ入庫するのかわからないとのことで、ここも保留とし、周辺の広い範囲の指定店に問い合わせてみることにした。これまでの経験から大型店よりも、小型店、とくに個人店の条件がよいことがわかっていたから、個人店を中心に電話をかけた。

 個人店②に聞いてみると、ニコスカードかJAXカードの24回払いが条件とのことで、ETCカードまでJAXカードにすれば、金利が安くなるとも言う。カードがなければ作らなければならないのは言わずもがなである。

 つづいてメーカー系列のⅡに電話をすると定休日だった。

 さらに個人店の③にたずねると、JAXカードのカード払い、及びJAXのETCカード使用で、特別金利3.75%とのこと。この金利なら考えてもよい数字だが、カードを使わなくともよいショップもあるから妥協できない。ちなみにJAXカードの特別金利は、上記個人店②も同条件だろうと推察された。

 ためしにどうせ条件は悪いと思われたが、ここまで来ると悪乗り気味で、大型バイク用品店のAにも問い合わせてみた。するとやはりニコスカードの24回払いが条件とのことで、すぐに電話を切ろうとしたら、ここは取り付けに注意をはらっていて、基本的にシートの下などの鍵のかかるところにしか設置しないとのこと。防犯と雨対策とのことだが、大型店だけに意識の高さは立派だった。しかし融通のきかない感じでもあり、たとえばここにつけろと指示されても、断ることもあるという物言いだった。

 個人店④は電話がかからなかった。定休日の案内も流れない。

 遠方の個人店⑤に電話をすると、ここは個人店①とおなじく、カード会社を使わない分割払いでよいとのことで、金利はかからない。ETCカードもどこのものでもかまわないし、ETCの在庫もあるとのこと。さらに細かくたずねると、セットアップ料が500円引きで、助成金は15750円受けられて、ETCの本体価格や取り付け料のことも、聞けば即座に、明確に答えがかえってくる。非常にビジネスライクで、裏表のない語り口に好感をもち、ここに頼むことにした。

 さっそく⑤にいってみると小さなバイクショップだった。在庫も原付スクーターが4台と125スクーターが1台、それに250オフロードが1台しかないが、店は忙しそうで、折りしもスクーターの契約がされていて、修理のバイクも作業中だった。

 電話で話した35くらいの店主が気持ちよく応対してくれて、まずETCの取り付け位置についてDRを見て確認する。シート下にスペースはないので、フロント・カウル内に設置してもらうことにしたが、機械は完全防水とはいえ、なるべく雨にあたらないところがよいに決まっているので、場所をえらんで位置を決めた。そしてETCには二重防水と防塵のために専用カバーをつけることとし、つづいて助成金の申し込みや、ETCのセットアップ時に機械に情報を読ませるカードを発行してもらう書類の記入をする。ETCの取り付けはこれらの手続きが済んでからになるとのことで、この日は帰ったが、⑤は修理中心に繁盛していて、店主の人柄が客を惹きつけるのだなと感じられたのだった。

 3日後に準備がととのい、ETCの取り付けが可能との連絡がきたので、⑤にでかけた。⑤では郵便カブのタイヤ交換中で、前回はなかったリッター・バイクがあり、中古車とのことで、活発な商いが感じられた。最終的にETCの取り付け位置と、アンテナの設置場所を定め、作業に入ってもらう。まずETCの電源コードの接続場所をさがすために、テスターで電線を調べている。キーがオンになったときだけ通電するポイントをさがしているそうだが、それが見つかるとコードを接続し、ETC本体を取り付け、アンテナを設置し、そしてテストを繰り返す。専用の検知器でETCの電波が読み取れるか確認しているが、DRにはミニ・カウルとスクリーンがついているので、反応がよくないとのこと。電波障害があるようだが、問題なくつかえると思う、とのことだった。

 作業は終了して使い方の説明をうける。使用法は簡単なものだった。店主にETCの取り付けでいちばん大変なのは何かと聞くと、コードの引きまわしなのだそうだ。素人の私は接続ポイントをさがすことだと思ったのだがちがっていた。そして助成金の取り扱い指定店になるには、お金をだして登録するのかと思ったら、無料で、ただORSEにやりたいと申し込めばよいとのこと。もっと難しいことを考えていたので意外だったが、このことはバイク・ショップでもあまり知られていないそうだ。又、カード会社を介在させても、カード会社に手数料をとられるだけで、バックマージンはもらえないとのこと。大型バイク用品店はもらっているのかもしれないが、又はいろいろとつきあいがあって別の便宜をはかってくれるのかもしれないが、個人店はカード会社をつかってもメリットがないことを知らされた。そしてセットアップ料は決められていなくて、店によって3000円だったり、5000円だったりすることも教えてくれた。じつにざっくばらんで話していて楽しい人だった。

 さて支払いである。ETCが31500円。ETCのアンテナステーとカバーが4200円。取り付け料5250円。セットアップ料は3125円-500円で2625円。二輪ETCらくらく導入キャンペーン助成金が15750円で、差し引き合計27825円だった。3万円を予定していたので思っていたよりも安く導入することができて満足した。

 帰宅するとネットからETCマイレージ・サービスの利用申し込みをする。これはETCを使った分だけポイントがたまり、通行料としてつかえるサービスなのだが、申し込まないと利用できない。なるべく利用させまいとして、こういう制度になっていると私は感じるが、登録しなかったがためにポイントを損した人が職場にいるので、すかさず手続きをしておいた。重ねて言えば、ETCのサイトでマイレージサービスを見つけるのも大変わかりにくいから、やはりなるべくつかわせまいとしていると感じてしまう。登録して3日後に受け付け書類が送られてきた。

 テスト走行にもいってみた。高速に入ってETCゲートにむかう。電波障害があるとのことで、ゲートが開くかドキドキだが、スパッとバーが上がって、その瞬間は感激してしまった。無線でデータが送信され、それを読み取って、瞬時に処理することに新鮮な驚きをおぼえる。今では当り前になってしまっていて何も感じないが、JRのスイカカードを使い始めたときに感じた、技術への衝撃的な賛辞を含んだ驚きを思い起こした。しかしこんな国は日本だけのはずである。

 これで高速道路を割引料金で走れるようになった。お金をやりとりしなくてもよいというのも便利で、これなら車にもつけようと考えている。そしてそのときのために、マイレージサービスのカード登録について問い合わせてみた。車とバイクにETCを取り付けた場合、1枚のカードを両方のマイレージ対象に指定できるのか、と。するとETC1台に1枚のカードしか登録できないので、両方の登録はできないが、バイクで登録したカードを車でも使用すれば、マイレージのポイントは加算されるとのことであった。

 

                                                   2008.7.19

 

 

  

 

 

 

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