自転車散歩 神楽坂へ

 

 神楽坂の裏道にて

 

 ランドナーのタイヤを30年ぶりに交換した。ほとんど乗らないので、タイヤが劣化したまま走っていたのだが、それも限界になったのである。30年ももったから、また同じメーカーのナショナルタイヤにした。元々はランドナーの王道、650B×42Bという極太のタイヤだったのだが、今やそんなものは必要ないから、たまたまショップに在庫のあった38Bにした。タイヤは1本2060円。チューブが748円である。650Bのタイヤは売れるの? と若い店員にたずねると、背の低い女の子に一定の需要があるから在庫している、とのことで、ちょっと複雑な気分になる。昔は人気のサイズだったんだよ、と言うと、ああ、昔のランドナーの方はそうですよね、だって。

 タイヤの新しくなったランドナーの試運転がしたいので、数年前にドラマで人気になりーー倉本聡の拝啓父上様ーー行きたいと思っていた神楽坂に今頃になって行ってみることにした。

 ランドナーで遠出するのは久しぶりである。650Bの太いタイヤは走行感が重く、チューブラー・タイヤのロードレーサーに慣れた身にはきつい。重量もロードの5割増しだし、フランス製の性能の悪い、ユーレー・アルビーという変速機をムード重視で使っているのもしんどい。30年まえの体力があったころは、変速機の反応が鈍いのは脚力でカバーできたのだが、いまでは坂道で、あれれ、まだ変速しないの? それじゃあ倒れちゃうよ、という感じである。性能だけ考えれば、世界一の日本のシマノにすればよいのだが、そこは趣味のものだから代えるつもりはない。でもハブだけはシマノのデュラエースを使用している。初代デュラの、マニアしかわからないと思うが、珍しいラージフランジ・ハブである。

 

 懐かしのヤマハGX250

 

 水道橋あたりでこれまた懐かしいバイクがとまっていた。ヤマハGX250SPである。30年まえのモデルだから、ランドナーと同じ時代のものだ。思わず写真をとらせていただいた。ところで自転車少年だった私はこのランドナーではじめて北海道に行ったのだ。1981年の夏、大学1年のときだった。その自転車をまだ所有して使っているのだから、私も相当に物持ちがよい。

 

 神楽坂のメインストリート

 

 飯田橋をすぎて神楽坂の入口についた。坂道のメインストリートが通っているが、かなりの急坂である。ギヤを低くしてゆっくり、じっくりと左右を見ながら登っていく。思ったよりも庶民的な街である。散策に来た観光客もいるが、観光地ほど多いというわけではない。

 

 イメージ通りの裏道

 

 ドラマでは裏通りの細い路地が効果的に使われていて、それを見に来たからメインストリートからそれて裏道を探索していく。するとここがドラマで主人公とヒロインが出会った場所ではないかという階段にでた。路地の奥、鍵の手に曲がった先である。さっそく写真をとるが、街歩きの若い女性もカメラを構えていて、この人はブロガーなのかなと感じたりした。

 

 料亭のある小路

 

 神楽坂は1丁目から6丁目まで坂の下から上にむかって続いているが、それほど広いわけではない。自転車でくまなく走っても30分もあればまわりきってしまう。すべての路地を走りきり、仕事に出かけていく和服姿の25から70くらいまでのお姐さんたちを見送ったりして、古くからの花街のムードを感じて神楽坂を離れることにした。

 

 飯田橋駅前 お堀の向こうにカナルカフェ 

 

 飯田橋の駅前を通っていくと、お堀の先にキャナルカフェがある。上の写真では分かりにくいがお堀の対岸にあるのがそれである。東京大神宮に寄ったあとでどこに向かおうかと迷い、外堀通りで新宿方向に行くことにした。しかし向かい風が強い。市谷駅前で風に負けて方向転換をして、靖国通りで九段方向にはしる。つまり風に乗ったのである。

 

 靖国神社

 

 靖国神社の横をいくので写真をとる。せっかくなので靖国神社の参道を九段方向にいくと骨董市をやっていた。

 

 骨董市

 

 骨董市をのぞいていく。骨董趣味はないので欲しいものはない。自転車を押して市を歩きながらそろそろ昼だからどこに行こうかと考える。前から一度食べてみたいと思っていた九段のラーメン店、斑鳩(いかるが)、にいってみることにした。

 

 斑鳩は休み

  

 しかし斑鳩は日曜定休だった。がっかりである。ただ中ではチャーシューを煮ているようで良い匂いがしていた。休みの日も仕込みをしているというのはすごいと思う。是非試してみたいと思いつつ、走りだすと水道橋にもどっていってしまうから、神保町方向に行ってみる。適当な店はないかと物色するも、よさそうな店はものすごく混んでいる。並ぶのは嫌なのである。神保町には古本屋やスキー屋があって見ていこうかと思うが、空腹では集中できないから立ち寄らない。それはそれでまた来ればよいのだ。昼食を求めていくが人気店は行列か日曜定休で、けっきょく街道筋のトンカツ屋で腹を満たしたが、これはこれで美味しかったりする。

 1日走って使ったの昼食代、ロースとんかつ定食920円のみ。自転車散歩は体に良いし、財布にやさしい。ところでフロント・バックは犬印製である。25年物だ。リヤ・キャリアはフランスのルネルスを意識してつけている。エルスのシクロ・ランドナーのつもりである。わかるのは40以上のマニアだろうか。