八溝川の渓流釣り

 

 沢沿いの林道にて

 

 バイクで八溝山周辺の林道探訪に行った際、久慈川とその支流の釣りが気になった。長らくホームグラウンドにしていた群馬県の神流川が台風の災害で崩壊してしまい、釣り場としての魅力を失ってしまったから、ほかの釣り場をさがしていたのである。久慈川は鮎で名高く、山女や岩魚はあまり人気がないと聞いた。穴場であると、昔の雑誌に書いてあったことも思い出す。いろいろと調べてみると、じっさいに行って確かめたい気持ちがおさえられなくなり、この日の釣行となった。

 釣り場に着いたのは8時30分で、夜明けから釣りをはじめた地元の人なら、もう帰ってしまう時間だ。もっと早く行こうと思っていたのだが、この時間になってしまうのはいつものことである。遊魚券は1500円。八溝川をさかのぼっていくと、何件もの商店が釣り券をあつかっている。そのうちの一軒にはいったが、どこがよいのかと釣り場をたずねると、上野宮から上流、大久保沢より上がよいとのことなので、そこに入ることにした。

 

 八溝川の流れ 沢のように細く天井が低い

 

 はじめての川はどこから入ったらよいのかわからないからもどかしい。大久保沢の上流、釣り人のものらしき車が1台とまっていた先に駐車場所をみつけて入渓した。川幅は思ったよりも狭く、沢と呼ぶほうがふさわしい。そしてここ数日の雨で水位が高いように感じられた。

 エサの川虫をとろうとするとあまりいない。水温が低いためか成長もすすんでいないようだ。それでもなんとか川虫を集めて釣りをはじめた。ポイントに仕掛けを入れるとすぐに渋い当たりがでた。スレている魚の警戒心いっぱいの素早い当たりだ。これは反応が早すぎて合わせられないが、もう一度流しても二度と当たらないから、魚はスレている。

 流れはザラ瀬と淵の連続で、淵がポイントだがなかなか当たらない。まず来たのはチビ山女で、つぎはハヤ。そしてその次は誰かの仕掛けを釣ってしまった。しかもこの仕掛けには良型のハヤが針がかりしていた。針をはずして逃がしてやったが、長いラインをつけてどれだけ泳いでいたのか。ハヤも難儀しただろう。

 

 八溝川の山女

 

 足跡から判断すると今日の先行者はひとりのようだ。釣り人は少ないが、魚はかなり攻められてスレているから、釣りかたを変えることにした。細いラインに軽いオモリで、できるだけ自然に流していたのだが、みんながこのナチュラル・ドリフト釣法をしているようなので、あえて大オモリをつけて仕掛けを止めながら底をたたいていく。それが当たって山女がきた。ハリスは0.2号。エサは川虫。カメムシかな?

 つづいて民家の庭の横の落ち込みで岩魚をかけた。この家のおじいさんと犬がギャラリーとなり、ふたりに見守られながら釣ることができたが、こんなのは私もはじめてだった。ハリスはやはり0.2号。エサは岩魚の特エサのオニチョロ。

 

 岩魚と山女

 

 禁猟区の手前で川をあがり昼食とする。車にもどってカップめんとおにぎりの食事だが、釣りではいつもこんなものである。午後は上流を見にいってみた。禁猟区の上も好ポイントがつづくようだが、花の草の先は入渓点がみつからない。そのまましばらくすすむと川幅は極端に細くなってしまい、ザラ瀬となり、岩魚がいるとガイドには書いてあるが、ポイントらしきものがないから竿をだす気になれない。花の草集落の下までもどって、橋から川にはいったが、水量が多くて遡行に苦労するし、ポイントがなくてザラ瀬ばかりなので、このポイントを見切った。水が落ちればこのあたりもよいのかもしれない。

 本流から差してきた大型山女もねらいたいと思っていたので、久しぶりに8メーターの本流竿を持参していた。それを使うために山をおり、久慈川との合流点を釣ろうと思ったが、国道との合流点はまだ久慈川本流ではなかった。それでも堰があったので、その下を攻めるがまったくの不発で、魚の気配も感じられないから、5分ほどでやめてしまった。

 はじめての川なのでいろいろと見てまわりたい。つぎは沢を見にいこうと大久保林道にはいると、野ウサギがいた。野ウサギを見たのは何年ぶりだろうか。以前に見たのは岩手県の岩洞湖で、7年まえのことだ。野うさぎはヒョコヒョコとあるいて草のなかに消えていったが、それだけ自然が豊かなところなのである。

 大久保沢はほんの小沢で、ここも釣る気にならないが、大久保林道をのぼっていってみると、ダートになってしまった。バイクでダートを走るのは大好きなのだが、普通車のセレナでは走りたくない。びびりつついくが、林道の幅は車1台分で、引き返したいのにUターンできるところがなく、しばらくたえて走ることになった。

 

 大久保林道

 

 なんとか空地を見つけてUターンし、林道をくだっていくが、写真をとりたいのに後ろからバンがやってきて、はたせない。そこで走りながら撮ったのが上の写真である。また、ダートを抜けた舗装路で撮った写真がトップのものだ。

 夕刻になり、ラストは禁猟区の上を釣ってみることにした。ここは淵がつづく好ポイントだ。しかし当たりは遠く、今日の釣果は2尾だけ。もうすこし川の様子がわかれば釣果は伸びそうだが、すぐとなりにある福島県の矢祭川も気になる。その奥にも広大な渓流釣りワールドがあるようだ。

 帰宅の途につくが、国道293号線の栃木県小川町には『林屋』という川魚屋があり、盛大に鮎の塩焼きをしているのが見えて気になっていた。この店に立ち寄って鮎の干物5枚で1050円を求め、さらにためしたことのない鮎のはらわたの塩辛、うるか、を買おうかと思ったのだが、冒険する勇気がでなくて、買わずに帰宅した。

 鮎の開きは小ぶりだが淡白な味わいで、日本酒によくあう。ご飯にもよくあうようで、私と家内が1枚ずつ食べると、息子は一気に3枚たいらげてしまった。若いってすばらしい。

 茨城県から福島県にかけての久慈川水系の渓流釣り場は、面白いところがあるようだ。これからまたたずねてみようと思っている。

  

 

 

                     Pキャン・車の旅・トップ