2011GW 反・自粛岩手イーハトーブ・ツーリング3日目

 

 岩手県庁の前に止まる自衛隊の車両

 

 気がつくとホテルのベットで寝ていた。冷麺を食べた後の記憶が残っていないが、きちんとシャワーを浴びているから我ながら感心するやら気持ちが悪いやらだ。そしてまた眠っていると鼻水が止まらなくなり、花粉症の薬を飲んだまた床についたのだった。

 7時にホテルの朝食にいく。今日もしっかりと食事をとった。昨夕からの雨は降りつづけていて、気温も低いから気分は盛り上がらない。それでも7時30分にはチェックアウトし、バイクに荷物を積んでカッパとブーツカバーをつけだした。

 通りかかった地元の人と被災地の話をした。私は痛ましさを共有したいと思ったのだが、相手はちがった。その人は、被災直後はシャベルとほうきで瓦礫をかたしていた、あれでは100年たったって復興なんてできっこない、と言う。今では重機が入っている、と答えると、それだって1台や2台であれじゃあ100年たったって復興できない、と重ねた。会話はそこで終わったが、こんな心無い言葉を口にする人間が地元にいるとはびっくりしたが、こういう人種はどこにでもいるものである。人の痛みがわからないのだ。

 雨が強く降り、視界の悪い国道4号線を花巻に南下してゆく。今日こそは石鳥谷の道の駅にいこうと思っていて、その他に初日にたずねる予定だった宮沢賢治記念館や羅須地人協会、そして高村光太郎山荘などを見たいと考えていた。

 

 道の駅 石鳥谷

 

 雨に煙る国道をはしり8時45分に道の駅石鳥谷についた。2001年にここに来たときになんと読むのかと思い、観光案内のアルファベット標記を見て、せきちょうや、と読んだのだ。それが今回地図を見ると、いしどりや、となっていてそれが正しいようだ。こんなまちがいはないと思うから、あの時の看板をたしかめたいと思っていた。しかしその看板はなくなっているようだ。雨が強いからしっかりと確認する気になれず、2001年に苦しい野宿をした場所を見ようとするも、こちらも建物が増えていて判然としない。それでもこの辺りだろうと思えるところにしばしたたずんだ。

 花巻農高を退職した賢治が村人や学生たちに農業指導をするために開いた施設、羅須地人協会にむかう。国道沿いの看板にしたがってゆくと、それは花巻農高の中にあった。農高の門は閉ざされていて、関係者以外立ち入り禁止となっていたが、休日で生徒はいないし、私ひとりだからよかろうと思い、中に入らせてもらった。

 

 賢治と羅須地人協会の建物

 

 羅須地人協会は校門から50メートルほど入った中庭にあり、建物の前の芝生には賢治の像が立っていた。賢治の像と羅須地人協会の建物をながめる。賢治像はシルエットになっていて、それがよく似合っているように見えた。羅須地人協会は他の地にあったものをここに再現したとのこと。下ノ畑ニ居リマス、賢治、と書かれていた建物だ。

 宮沢賢治記念館と高村光太郎山荘も見たいが雨降りでは気分がのらない。荒川高原にまたやってくるだろうから、その時見学すればよいかと考える。予報では福島あたりまで南下すると雨はあがるとのことだったので、高速で帰路につくことにした。

 花巻ICから東北道に入ると気温は10℃、11℃と低いが、冬支度の上にカッパを着ているから寒くはない。幸いなことに南下するとすぐに雨は止んでくれて、路面も乾いてきた。それはよかったのだが花粉症の薬が効いてきて眠くなってしまう。高速走行が単調なことと気温が上昇したこともあいまって、眠気で100キロも走ることができずに長者原SAで休憩をとった。

 

 ステーキ丼 大盛り

 

 休んでいると昼時となった。この先は混雑しているようなのでここで昼食をとってしまうことにする。レストランでメニューを見ると、ラーメン580円、大盛りカレー630円とならんでステーキ丼680円がある。これはお得ではないか。前沢牛が有名だからこのメニューがあるのだろう。これを注文するとライス大盛りサービスとのことでそうしてもらうが、肉は少なく質もそれなりで、大盛りご飯をもてあましてしまった。

 それでも残すのはもったいないから完食して走りだす。しかしただでさえ眠かったのに腹いっぱいになってしまって更に眠気がつのる。こらえて走っているとツーリングの初日にも抜かれたホンダCB750Kにまた追い越された。ボストンバックをリヤ・シートにしばりつけたオレンジのCBだ。どこまで行ってきたのだろうか。しかし眠い。つい、ウトウトとしてしまい、グラリとふらついてハッとした。周囲の車が私の居眠り運転を見て車間距離をあけている。危険なので福島県の国見SAに入った。

 眠気覚ましに給油をして缶コーヒーを飲んだ。福島県は原発事故以来風評被害を受けているが、SAでは福島産のフルーツと野菜が飛ぶように売れている。福島を応援したいという人々の気持ちのあらわれだろう。

 

 きれいなCB750K

 

 バイク置き場にはオレンジのCB750Kがとまっていた。カワサキのZ750FX−Tもいる。2台とも使い込んだバックにヘルメット、グローブがおいてあり、それは私と同じだ。同年輩のFX−Tのライダーがもどってきて、カワサキのガラガラ音を響かせながら走り去っていった。このSAからは福島盆地が見下ろせる。春霞のかかつた福島の山間地は美しかった。

 雨は降りそうもないし気温も上がってきたのでカッパの上衣を脱いで出発した。しかしまたしても眠くなる。危険な状況なのでわずか50キロしか走らずに安積SAに入った。ここでフリースを脱ぐ。暑いからオーバーパンツもとりたいが、収納スペースがないから仕方なくそのままとした。

 那須から渋滞がはじまった。こんなときはバイクの機動力を発揮させる。一気に高速を走りぬけて一般道におりた。あと少しで自宅だ。しかし最後の3キロでまたしても雨が降りだしてしまい、逃げるように飛ばしたのだった。

                                                              525.9キロ

                                                   総走行距離  1430.9キロ

 

 遠野にて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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