2012年 北海道ツーリング 1日目 新潟へ

 

 おかちゃんとマユミさんと

 

 深夜の1時すぎに眼が覚めた。さっそくバイクに荷物を積んで出発の準備をするが、この時間に家の前でエンジンをかけるのははばかられる。DRを大通りまで押して歩き、キックで始動した。

 走りだしたのは1時30分だった。酒がけっこう残っていて、警察の検問があったら酒気帯びになりそうで不安だ。時刻が早朝の4時や5時なら取り締まりはもう終わっているのだろうが、この時間では可能性がある。しかしその心配は杞憂だった。

 すぐに高速には入らず群馬県の前橋まで国道17号バイパスを利用した。むろん高速代をケチるためである。前橋までは順調にすすんだのだが、欲張ってその先も国道をつかったのは失敗だった。前橋の北は道路が整備されていないため、車の流れが悪くなり、時間をロスしてしまう。沼田ICから関越道に入ったが、前橋からにするのが正解だった。

 上越国境にむかっていくと気温は下がり、関越トンネルをぬけると寒いほどだ。しかし湯沢に下ってゆくと温度は上昇してくれた。山谷PAで休憩し、黒崎PAで給油する。燃費は21.2K/Lと悪い。高速を100キロ以上の速度で走るとDRの燃費はとたんに落ちるのである。

 新潟西ICで高速をおりた。料金は1700円。新潟駅にいって営業しているレストランをさがすと、マックとすき家しかない。昨年に続いてすき家を利用し納豆朝食280円をチョイスした。つづいてセブンイレブンでフェリー内での食料を買い、フェリー・ターミナルについたのは7時20分だった。 

 

 おかちゃんの軽トラ

 

 いつの間にか日差しが強くなり暑くなってきた。フェリーではキャンプ仲間のおかちゃんとマユミさんといっしょになる予定なので、おかちゃんの車があるか駐車場を見てみる。すると特徴のある軽トラがあった。荷台にバイクが積まれ、幌がかけてあり、ホイールも赤いから一目でわかる。ふたりの姿はないがすぐに会えるだろうと思っていると、フェリーの受付で出会うことができた。

 おかちゃんと初めて会ったのは2005年の支笏湖だった。フェリーで苫小牧に上陸した私はモーラップキャンプ場に宿泊したのだ。そこでいっしょになったのがおかちゃんで、その夜と翌朝の朝に立ち話をした。おかちゃんはスズキのちょいのりという原付バイクでツーリングをしているユニークな人で、とても印象深かった(『2005年北海道ツーリング』もどうぞ)。その後おかちゃんと何年も会うことはなかったのだが、北海道ツーリングのつながりで昨年再会することができたのである。人の縁はとても不思議なもの。そして今回はおかちゃんの婚約者のマユミさんと3人で船旅をすることになったのだ。

 フェリーの乗船受付は以前は住所・氏名などを記入したものだが、今回は支払いに使用したクレジット・カードを提示するだけである。飛行機のチェックメインのようで進歩したなと思う。

 おかちゃんとマユミさんの3人でお互いの車とバイクを見にいく。おかちゃんの軽トラには250ccのグラストラッカーが積まれ、幌がかけてあるがバイクがのせてあるようには見えない。おふたりは軽トラとバイクのタンデムで北海道を楽しまれるのだ。おかちゃんの軽トラは全天候型のマディなタイヤが装着されていて、MTの4駆だ。いまどきMTは珍しいと思うし、とてもこだわっている。おかちゃんは他にも2台の車を所有しているが、2サイクルのジムニーと古いシトロエンなのだ。マニアックすぎる。

 私のDRを見にいくとバイクが次々にやってくる。フェリー乗り場にこんなにたくさんのオートバイが集まっているのは初めて見たとおかちゃんと話し合う。しかし暑い。暑気が耐えがたくなり、フェリー・ターミナルに非難して乗船時間をまった。

 乗船のチェックはチケットに印刷された4次元コードを係員がバーコード・リーダーで読むだけである。去年まではチケットの半券をちぎっていたのだからやはり進歩したね。船の寝台に荷物をおいて風呂にゆく。ターミナルで待っているあいだに汗をかいたからサッパリしたかった。浴場からもどってくると、隣りの寝台の方と話すなりゆきとなった。70を越えているのにハーレー・ソフテイルに乗っていらっしゃる神奈川の人だ。バイクだけが趣味ではなく猟もしているそうだ。猪を仕留めた話などをうかがった。

 ハーレー氏はソロでツーリングした後で娘さんと合流し、タンデムで標津にゆくとのこと。標津のとほ宿の、モリシバ、というところが大のお気に入りで、毎回ここで連泊されているそうだ。私は林道ツーリングに来て、標津の近くでは、虹別林道やからまつの湯、川北の湯などに行くつもりだと話した。

 ハーレー氏はダート走行の経験や知識はまったくないそうだ。それもあって、山の中でパンクしたらどうするの、と聞いてくる。パンク修理の道具を持っていると答えても、それでも難しいんじゃないの、と納得しない。そこでサイド・スタンドしかないDRを、センター・スタンドがあるように立てる補助スタンド(キャンプ仲間のhirokiさん作)と前後の予備チューブを持参していると話すとやっとうなずいた。

 ハーレー氏は何度も北海道に来ているなら、おすすめの場所をおしえてくれと言う。ダートを走れるのなら、函岳の山頂や30キロのパンケニコロベツ林道を走破した先にある奥十勝峠、ピヤシリ越林道から見下ろす絶景などがあるのだが、ハーレーでは無理だから話だけ紹介しておいた。

 ハーレー氏は私と飲みたそうにしていたが、おかちゃんとマユミさんが待っている。失礼してラウンジに行くとふたりが私を待っていてくれた。早速サッポロ・クラシックのロング缶で乾杯する。

 おふたりは結婚の日取りが決まったそうだ。それは目出度い。またまた乾杯だ。式や新居のことをうかがう。結婚はうれしいものだが、いろいろと決めなければならないこともあってたいへんだ。

 サッポロ・クラシックのロング缶2本と缶チューハイを飲んだら酔ってきた。そこで14時30分に一度解散し、ベットにもどったら眠ってしまった。眼を覚ますと17時で、また飲もうかと思ったがまだ早いと自重し、風呂にゆくことにする。時間のある船旅なので、ゆっくり入浴してサウナにも入り汗をながした。

 風呂からあがると夕日がしずむ時間だと船内放送がながれている。デッキに出て写真をとろうとすると、マユミさんが一眼レフカメラをかまえていた。おかちゃんは寝ているとのこと。いっしょに撮影していると夕焼けの空の表情が刻々とかわってゆく。茜色と灰色のグラデーションがドラマチックにうつろっているのだ。これには眼がはなせなくなり、空が完全に暗くなるまで見守ることにしたが、マユミさんは先に引き揚げていった。それが2012年北海道ツーリングの扉のページの夕日である。

 空の色が変化しなくなるまでデッキにいた後で、ラウンジで飲みはじめた。ツーリング・マップル(TM)やキャンプ場ガイド、自分でえらんできた行ってみたいレストラン・リストや居酒屋リストを見ながら焼酎をやっていると、おかちゃんとマユミさんがやってきた。おかちゃんは上陸の8時間前になると酒を飲まないそうだ。きちんとした人なのだ。一方いい加減でアルコールの誘惑に弱い私は、焼酎をぐんぐんと飲みすすむ。おかちゃんは先に引き揚げ、マユミさんもほどなく部屋にもどっていった。私はそのままラウンジで飲んでいたが、やがて酔いを自覚してベットに歩いた。

                                          306キロ