2012年 北海道ツーリング 6日目 深ジャリ林道をリベンジ

 

 廃道化している林道

 

 5時に起床した。ここもカラスがうるさい。夜明けとともに鳴きだすからやかましくて寝ていられない。カーカーといろいろな音程で鳴き、それが不協和音だし、ついには金切り声のようなカーをだす奴もいるからたまらない。起きだしてトイレに歩くがここは遠いのが難だ。200メートルは離れているから我慢するのがたいへんだった。

 カップ麺の朝食をとるが風が強い。昨夜から強風が吹いていたので、ヌプカの教訓を生かしてテントのすべてのペグを打っておいたのだが、作業のためにジッパーを開けたままにしておいたら、風をはらんでひっくり返ってしまった。まただよ。軽バン氏が見ていて恥ずかしいから急いでたてなおした。

 今日はここに連泊して林道ツーリングをする予定だ。チェーンに埃が付着しているので、掃除と注油をして6時12分に出発した。気温は27℃。国道239号線で内陸にむけて走り、奥サンル林道を目指す。はじめて行く林道なので入口をさがしながらすすむ。TMには一の橋付近から入ってゆくようになっているが、曖昧な表記だ。そこで導入路らしきものがあればチェックしてゆくことにしたが、はじめにみつけた林道は廃道のようでーーそれが上の写真だーー、一の橋の集落に入ってみるも山につづく道はなく、なかば諦めながら先へゆくとそれらしき道路があった。「下川木工場作業場」とでている。「緑水荘3.6キロ」ともあり旅館だろうかと考えた(帰ってから調べてみると、北海道電力の社長をつとめた人物の別荘だった)。

 

 奥サンル林道

 

 この道に入ってゆくと2キロほどで舗装が切れてジャリ道となり、林道の入口についた。ゲートはあるがチェーンははずしてあり、立ち入り禁止の札がかかっている。ただし誰の名において通行禁止なのか記されていない。バイクをとめて看板を見ていると、ワンボックスのバンが横を通りすぎた。道のことを聞きたいと思ったが、運転手はジロリと私を見ていて嫌な感じである。車内に4・5人の男が乗っていて木工場にゆくようだった。

 立ち入り禁止とあるし、男たちの態度は友好的なものではないので引き返すことにした。誰もいないなら入ってみるが、ストレスが溜まっていそうな男らがいるのならトラブルになりそうで嫌だ。彼らに注意されたり怒鳴られたりするのは真っ平だし、そうなったらこちらも言い返すから、誠に不快な思いをすることになる。道には町道一の橋然別線とでていたが、ここが奥サンル林道の入口のようだった。

 風が強いからテントが心配だ。しっかりとペグを打ち、ジッパーもきっちりと閉めてきたから大丈夫だと思うが、突風が吹いているのを見ると不安になる。しかし案じてもどうにもならないから気にするのはやめた。

 下川から道道260号線に入って北上してゆく。国営草地開発事業サンル牧場という看板がでていて、国はこんなこともしているのかと驚いた。道道の右から奥サンル林道がぬけてきているはずなので注意してゆく。林道は何本かあったがすべて工事中で閉鎖されていた。そしてどれが奥サンル林道なのかわからなかった。TMによると奥サンル林道は、走りやすい31キロ、とのこと。残念だ。

 

 奥幌内本流林道

 

 幌内越峠にあるピヤシリ越林道の入口にむかう。ここは神門の滝入口と看板がでているから迷うことはない。林道は奥幌内本流林道が8.5キロ、その先にピヤシリ越林道が21.5キロつづき、全長30キロとなっている。じつは今回のツーリングでピヤシリ越林道がいちばんの目的地なのだ。2007年にここを逆方向から走ったのだが、急坂の深ジャリのひどい道で、トラウマになるほど苦労した。何度も引き返そうと思ったし、2度も林道から飛び出してしまい、危ない目にもあった。ここは私が走った中で最悪の林道なのだ。そのトラウマと恐怖心を克服するためにここにやってきたのである。

 7時45分に林道に入っていった。肩に力がはいっているし不安でもある。神門の滝まで7.4キロとでている。フラットだが穴ぼこが多く、水たまりになっているダートをゆく。穴をよけてゆけば走りやすい道だ。7キロすすむと分岐があり、左が滝で右がピヤシリ湿原登山口となっている。2007年に神門の滝を見ていた。滝へは本線をそれて支線でゆくのである。そこで滝方向ではなく湿原方向にすすんだが、これが間違いだったのだ。

 

 ピヤシリ湿原登山口にむかう林道

 

 分岐を右に折れると路面は一変した。道の真ん中には草が生えていて、除草もされていない荒れた林道になった。最近ジャリを入れたようだが車はあまり走っていない。神門の滝にゆく支線はもっとガタガタだったし、ここからピヤシリ山の登山口までは通行量が少ないから、こんなものかと思ってすすんでいった。

 カーブをぬけると鹿がたっていた。鹿は森の中に逃げてゆく。道は更に悪くなった。路肩の草を刈ったものがそのまま放置されて枯れ、すさんだ雰囲気だ。そしてついに宿敵の急坂と深ジャリがあらわれた。コイツをやっつけるためにここに来たのだ。

 

  行き止まり ピヤシリ湿原登山口 看板の奥に登山道がのびている

 

 急坂の深ジャリコーナーはローでいく。タイヤが路面をつかまえきれずに空転する。たえずハンドルをとられるから、バランスをとりながら走った。やがて深ジャリにも慣れてきた。スムーズに走行することができる。いける、いけるぜ。やがて坂を登りきると狭い広場にでて、行き止まりとなった。ピヤシリ湿原登山口とあり、湿原まで2.5キロととでていて、山の中に登山道がのびている。風は強く吹きぬけ、誰もいない。ここではじめて道を間違えたことに気づいた。私が行きたいのはピヤシリ山登山口であってピヤシリ湿原登山口ではない。ピヤシリ山の登山口から山頂まで歩くのもいいなと思っていたから勘違いしてしまった。それに考えてみたら、いくらなんでもこんなにひどい道のはずもなかったのだ。

 5キロの荒れた林道をもどってゆく。間違えなかったらこんなハードなダートを走ることもなかったから、よい経験をしたのかもしれない。ミス・コースはしたが森はフレンドリーなので不安はなかった。深ジャリにも慣れたから、この先のピヤシリ越林道もいけそうな感じだ。

 

 ジャリの入った路面 ここは深ジャリではない

 

 正しいルートにもどった。こちらも道の真ん中に草が生えているが、道幅は広いし車の走行した跡がある。深い森の中をすすんでゆく。見通しのきかないカーブでは獣よけにクラクションを鳴らしていった。風が強い。木々がざわめく。林がゆれる。やがて深ジャリがあらわれた。しかし間違えてはいった林道にくらべたらジャリは深くないし、それに深ジャリに慣れてしまったから問題なく走れる。これでトラウマは克服した。リベンジ完了だ。しかし2007年は荷物を満載してここを走破したのだ。キャンプ道具を積んで走るのはきびしいルートだから、我ながらよくぞ走り切ったものだと思う。

 

 ピヤシリ越林道のストレート

 

 2007年にここを悪戦苦闘して走っていたときに、後からやってきたライダーにあっという間にぬかれた。バイクはヤマハTDR250で、オフロード・バイクというよりはモタード・タイプのモデルだ。TDRは空荷だったが、私を右からぬくと、深ジャリの路面を右から左にもどり、その過程で前後のタイヤがスライドしたが、ライダーはじつに易々とバイクをアクセル・ワークと体重移動でコントロールし、走り去っていった。私にはそのライダーが達人のように見えたが、その彼に少しは近づけただろうか。

 林道は森林限界をこえてやがてピークにいたった。木がないので風が強い。路面はずっとジャリがはいっている。ときに深ジャリだ。頂上をすぎてくだってゆく。絶えずハンドルをとられるから手を軽く添えるだけにして、遊びを大きくとり、安定したリズムで走る。深ジャリでもストレートは飛ばす。強気にゆけないところはスピード・ダウンし、ときにギヤをローまで落として慎重に走行した。

 

 名寄の町や山々を見下ろすビュー・ポイント

 

 名寄の町を見下ろせるビュー・ポイントに到着した。ここがピヤシリ越林道のいちばんの見所で、ピヤシリ山周辺の山塊と名寄の町を見渡せることができるのだ。バイクをとめて暫し風景を楽しんだ。もちろんバイクはアイドリングせず、エンジンは止まってしまった。

 ピヤシリ山の登山口から山頂まで2キロなので歩いてみるつもりだった。しかし着いてみると強風のため登山者はひとりもいない。たしかにこの風では危険だから私もやめておいた。

 ジャリダート、深ジャリ、たまに舗装路があらわれる林道をくだってゆく。2007年よりも舗装区間が長くなった感じだ。やがて道の斜度が落ちると広くてフラットな、ジャリのないストレートとなり、ここはとても走りやすいからガンガンと飛ばしてゆく。ハイ・スピードのダート走行を楽しんでいるとサンピラースキー場にでて林道走行は終了した。

 9時45分にスキー場のジャンプ台の前にバイクをとめた。ミス・コースをした5.4キロの往復10.8キロを足して40.8キロの林道走行だったが、かかった時間は1時間40分で休憩はとらなかった。バイクがアイドリングしないから、止まるとキックでエンジンをかけなければならない。それがわずらわしいから休まなかったのだ。写真をとりたいときだけ停止し、その度にエンジンはとまってしまうから、キックで再始動してまたすぐに走りだすということを繰り返した。

 

 名寄のひまわり

 

 水をがぶ飲みする。走りどおしで喉が渇いていた。大量の水を一気に飲みながら、ワイルドだぜぇ、と自分で思う。こういうのがほんとうのワイルドなんだよ。名寄の町に下ってゆくとひまわり畑の案内がでていたので寄ってゆくことにした。最大の目的だったピヤシリ越林道の深ジャリを走破したし、もう林道を走る予定もないから、心に余裕が生まれたのだ。ひまわりは満開だった。

 朱鞠内湖にいきたいが正しいルートにのれない。名寄の町の東から、西にある国道40号線にでたいのだが、思うようにならず右往左往してしまった。名寄にはスープカレーのレストランがリスト・アップされていたが、まだ昼には早いので、朱鞠内湖にいった後で美深にある寿司屋にむかおうと考えていた。

 国道40号線から道道798号線とつないで朱鞠内湖を眺めることができるPAについた。巨大な湖が人造湖だというのが驚きだが、これを作りあげた日本人の力と知恵にあらためて感心する。すばらしい国力である。朱鞠内湖は複雑な形をしているが、場所によって水の色がちがう。水深が異なるせいだろうか。湖の左右の青色の濃さがちがうのは不思議な光景だった。

 美深にむかう。今日はなんだか咳がでる。喉にひっかかるものを感じるが、風邪ではなく旅の疲れだと思う。以前のツーリングでもこんな症状がでたことがあったが、病気ではなかった。私は旅先では気を張っているから、病にかからない性質なのだ。

 日本最低気温の氷点下41.2℃を記録したことを示すモニュメント、クリスタルパークに寄ってゆきたかったが、気づかずに通過してしまった。名古屋大学の観測所の看板はあったが、クリスタルパークのものはなかった。10キロも通りすぎた地点で気がついたので、もどるのは面倒でやめてしまった。

 美深で給油をする。24.8K/L。146円。目的の寿司屋にいくと休みだ。今日は寿司だと決めていたから肩の力がぬけてしまう。木曜定休とは思いもよらなかった。だって休みは月曜のはずだから。

 こうなったら名寄にもどってスープカレーにしようと思う。しかし国道を走りだすと20キロもあるとでているからやめた。たかが昼食のためにそんな無駄なことはできない。美深で食事処をさがすことにした。

 

 むつみ食堂の天ぷら蕎麦

 

 バイクで美深の町を探索してみると、いちばん繁盛しているのは、むつみ食堂という蕎麦屋だった。店の構えがしっかりしているし、地元の方の車がたくさんとまっている。近所の人が集まっている店に外れはないから、ここに入ることにした。

 天ぷら蕎麦1050円を注文する。サービスのコーヒーを飲んでいると10分ほどで料理は提供された。蕎麦はふつうだがつゆが美味しい。天ぷらもサックリと揚がっている。これで1050円はお値打ちだ。むつみ食堂は客が次々にやってくる人気店だった。接客も気持ちよかったからまた利用したいと思う。

 ここまで来たら函岳にゆくしかない。函岳には去年もいっているが、美深歌登大規模林道17.5キロとレーダー林道10.5キロを走った先にある、巨大レーダーのたつ函岳の山頂なのだ。函岳は北海道にやってくる林道ライダーの聖地と言ってよいところだと思う。眺望がよく、運がよければ利尻富士まで見ることができるし、長距離の林道を走破することのできる、北海道有数のオフロード・コースだからである。しかもここのダートは走りやすいから、気負いなく入ってゆけるのだ。したがって行きがけの駄賃だとばかりに、ついでに走り散らしてゆこうと、虹別林道を走った際のボンベツ林道のように考えたのだった。

 

 レーダー林道 山頂にレーダーがみえる

 

 美深の北で国道40号線から道道680号線に入ってゆく。国道の分岐には看板がたっているからわかりやすい。ただしダートとは書いていないから、案内に誘われて立ち寄った車やバイクの中には、驚いて引き返す者もいるのではなかろうか。

 道道をすすむとダートとなった。走りやすい林道のはずが今年は様子がちがっている。ジャリが入れてあり、浮きジャリダートになっているのだ。しかもなかなか手強い。たぶん去年の台風で痛んだ路面の補修のためにジャリが入れてあるのだと思う。

 いつもは思う存分飛ばせるダートをハンドルをとられながらすすみ、17キロ先の加須美峠についた。ここから左に折れてレーダー林道で函岳山頂を目指すが風が強い。森林限界をこえているから、木がはえていなくて強風がまともにぶつかってくる。バイクがあおられて怖いほどだ。無理だと思ったら引き返そうと考えてすすんでいった。

 レーダー林道も浮きジャリ、深ジャリで走りづらい。斜度のきつい登りではジャリの上で後輪が空転する。熊の糞が2ヶ所にあったので緊張してゆく。古いものなのでまだよかったが、ここは来るたびにヒグマの糞があるところだ。

 函岳山頂につく前から盛大にクラクションを鳴らしていく。もちろん熊よけのためだ。しかし山頂の広場には自衛隊の人がたくさんいたので、気まずい思いをしてしまった。

 

 函岳山頂 

 

 人がこれだけいれば熊の心配はいらない。風が強いのでバイクをとめるのに気をつかい、レーダーの裏にある函岳山頂に歩いてゆく。自衛隊のジープのほかに都内ナンバーのパジョロがいたが、それに乗ってきた男性ふたりが山頂にいた。晴れているが遠くは霞んでいる。したがって利尻富士は見えない。それでも他では眼にすることのできないすばらしい山岳風景がひろがっていた。

 

 加須美峠からオホーツク方向にすすんだ美深歌登大規模林道

 

 函岳をでて加須美峠にくだり、美深歌登大規模林道をオホーツク方向にすすむ。ここもジャリが入っていて浮きジャリ、深ジャリで走りごたえがある。しかしピヤシリ越林道からずっとこうなので、ジャリに慣れてリズムよく走っていくと、エイプ50とNSR50の若者ふたりが、コンクリート製の橋の上で休んでいるのに出会った。ジャリの上ではなく、平坦な橋で休憩している彼らの気持ちがよくわかる。彼らは相当苦労してここまで来たのではなかろうか。そしてここから函岳の山頂までは、まだかなりの距離があるのだ。私は彼らの前で速度を落とし、左手を上げて会釈をすると、アクセルを開けて走り去った。橋の先のジャリ道でバイクがスライドすると、アクセル・ワークと体重移動でコントロールして、強引に加速してゆく。彼らには達人に見えただろうか。

 加須美峠から10キロは狭くてジャリの入った路面で、その先の7キロは広くてフラットなダートとなった。こうなると飛ばせる。アクセルを開けてガンガンと走る。時速80キロで走行しバックミラーで後方を見ると、砂埃が猛々しくあがっている。これぞ北海道の林道だ。土煙をまきあげながら疾走するのが、北海道のダートの醍醐味である。

 美深歌登大規模林道のジャリ道は終わり舗装路にでた。するとすぐに道道120号線にぶつかるので、右に折れて天の川トンネルをぬける。トンネルの出口の近くに風烈布林道の入口があり、引き続きこの林道に入った。

 

 風烈布林道

 

 風列布林道も走りやすいダートだったのだが、ここもジャリが入れてあった。それでも美深歌登大規模林道ほどではないから手強くはない。交通量が少ないせいか、道の真ん中に草が生えている。また強風のために木の枝がたくさん落ちていた。風列布林道はすすんでゆくとストレートが連続するようになる。真っ直ぐだが狭い林道なので50〜60キロで巡航する。鹿の飛び出しと対向車が怖いからほどほどの速度にしておいたが、ミラーを見ると砂埃が盛大にあがっていた。ここにも熊の糞がふたつあった。加須美峠の下りにもひとつあったから、この地域はヒグマの多いところである。

 15時10分に風列布林道の出口についた。林道の終わりは牧場でここで休憩にする。今日はピヤシリ山周辺が40.8キロ、函岳周辺で72.5キロの、合計113.3キロのダート走行をした。よく走ったものだが、北海道はほんとうに林道天国だ。ジャリ道を走らないオンロード派の人は興味がないかもしれないが、これを体験しないのはもったいないと思う。

 

  オホーツクにて

 

 牧場のホルスタインたちと記念撮影をして出発した。当り前だがアスファルトはものすごくスムーズだ。ダートを走った後だとそれを実感する。オホーツク海にでると海が美しい。思わずバイクをとめて写真をとるが、通りすぎてゆく地元の車は、何をしているのだろうという顔で見ている。この風景も日常になると何も感じなくなってしまうのだろう。

 公衆電話をみつけて職場に電話をする。余っているテレホンカードを使うために公衆電話を利用しているのだ。オホーツクにいるのに暑いと話して電話を切ると、地元の老人が、暑いね、と話しかけてきた。どこを走ってきたのかと聞くので、美深から函岳にぬけるジャリ道を通ってきた、と答えたが、ハコダケ? どこだ、と言う。説明すると、地元の俺の知らない道だな、と笑った。たしかに地元の人はわざわざ不便な林道など使わないし、知らないのだろう。

 

 釣人たち

 

 オホーツク国道のR238を南下してゆく。釣り好きでもある私は海や川があると釣人がいないか注意している。すると小さな川の河口に釣人が5・6人いるのをみつけた。彼らは河口から海にむかって竿を振っている。狙っているのは鮭だと思う。川で鮭をとるのは違法だが、海でなら良いと聞いたことがある。川に立ち込んでの鮭釣り。ワイルドだね。

 オホーツクを南下していくと道の駅おうむがあり、タワー展望台があったので立ち寄った。バイクを駐車場にとめると、ヤマハ・メイトの若者がいる。ナンバーを見ると近くの人なので立ち話をした。メイト君は道の駅のスタンプラリーをしているそうだが、歩道を走っているところをお巡りさんにみつかって、切符を切られてしまったとのこと。道の駅に泊まっていて、宿泊費もほとんどかかっていないのに、罰金7000円なんすよ、これってどうなの、と訴えていた。どうして歩道を走ったの?、と聞くと、近道をしようとした、とのこと。メイト君あんまり嘆くので、可哀想なのだが笑ってしまった。

 メイト君はスタンプ帳を見せてくれたが、道東地区はすべてコンプリート、道央も!、という感じで周辺を制覇していた。私は性にあわないからやらないが、スタンプラリーは人気があるようだ。

 タワー展望台にのぼるとオホーツク海とおうむの町が見下ろせた。メイト君はスタンプにしか興味がないようでやってこない。駐車場には首都圏ナンバーのワンボックスカーが2台とまり、両方ともリタイヤ組の男性がひとりで乗っている。リヤ・ゲートを少し空けて風を入れているのも、新聞か本を読んでいるのもいっしょだ。のんびりした旅ができてうらやましいが、なんだか時間を持て余している気配があった。

 西興部のキャンプ場にもどることにする。興部の北にある月の出岬から道道883号線で西興部にゆけるようだ。TMを見てみると、牧草地をぬける舗装路、とあるからこの道を利用することにした。

 なだらかな牧場の中をぬけてゆくと国道239号線に合流し、16時50分にキャンプ場についた。強風でテントが心配だったが、いささかも乱れることなくきちんとたっている。まだ時間が早いから近くにある鹿牧場にゆこうかと思ったら、バイクが3台やってきた。2台はハーレーのカップルで、もう1台は旅人ではなく近所の人のようだ。ハーレーのカップルは30くらいだったが、男と眼があったので会釈をすると無視された。こんなことははじめてなのでびっくりしたが、そちらがそうならと、こちらも黙殺することにした。

 鹿牧場にゆく気持ちは失せてしまった。バカップルに近くにテントを張られたくないので、メモをつけて見ていることにする。男女は離れたところに幕営した。公園の管理人さんが来たので、昨夜居酒屋にいったと報告すると、今夜は是非町営ホテルのレストランを利用してくれと言う。地元愛の強い方なのだ。また管理人さんはライダーでもあるそうだ。

 引き続きメモをつけているとキタキツネが道路を歩いてきた。何かくわえているなと思ったら食パン2枚だ。どこかで盗んできたのだろうかと思って見ていると、居酒屋の奥の森に入っていった。そしてしばらくするとまた食パンをくわえてあのキツネがやってくる。今度は2枚ではなく1枚だ。どうやらどこかの家でもらってくるようだが、食パンを2枚、1枚とやるのはきっと老人だろう。キツネはまた森に去っていったが、子供が待っているのかなと思ったりした。

 キャンパーがまたひとりやってきた。釣人のようでバカ長を干している。公園の管理人さんはホテルのレストランを利用してくれと言っていたが、自宅から持ってきたスパゲティーとパスタソースがある。これをそのまま持ち帰るのは嫌だから、今晩の夕食はパスタにすることにした。ナポリタンの大盛りだ。そしてスーパーか酒屋兼総菜屋でもう一品手に入れようと思ってゆくと、スーパーは休みで総菜屋も思うようなものがない。しかたがないからチキンとタマネギのフライを各100円で買った。

 

 パスタとフライの夕食

 

 テントの横でスパゲティーを茹でつつビールを飲む。フライをかじりながら缶ビールをぐびりとやり、缶を芝生の上においたら倒れてしまった。たいへんだ。酒がこぼれちゃったよぉ。

 食後にホテルの風呂にいった。入浴すると体は火照るが外気は23℃とすずしい。しかしテントに入ると暑いから、ジッパーをあけて風を入れながら焼酎を飲んだ。ラジオを聞きながら、野営の夜は更けてゆく。

                                         359.9キロ