2017年北海道トランポ林道ツーリング8日目

 

 屈斜路湖畔林道

 

雨で移動

 夜中に雨がポツポツト降っていて、これではバイクは無理で車だなと思う。6時半に起床すると天候はくもりで路面はかわいている。これなら雨のくる前に屈斜路湖畔林道を走れるのではないかと考えた。さっそく支度をはじめた。

 セイコマ・ブランドの味噌カップラーメンの朝食をとる。時々雨粒が落ちてくるが空は明るい。もしかしたら屈斜路湖畔林道をはしった後で、釧路方向にもゆけるのではないかと考えて出発した。

 7時25分に屈斜路湖畔林道の入口についた。またこの林道を走れるのはうれしい。道はずっと森の中をゆくのかと思っていたが、出だしから右手に湖が見える。今朝は車もバイクも1台もいない。路面にたくさんある穴をよけてスラロームしてゆく。こぶし大の石もさける。一昨日はよけられずに乗り上げた、三角形のコンクリートの突起もさらりとかわした。つとめて写真をとってゆく。今回のツーリングでいちばん落ち着いて林道をはしり、風景を撮影することができた。

 鹿一頭に会い8時7分に林道の出口についた。ダートを快走し、美しい屈斜路湖と山なみを見て最高の気分だ。雨は降ってこないので釧路の林道にゆくことにした。

 国道391号線を南下してゆくと川湯温泉では21℃と表示されていて肌寒い。快調に走る。心は浮き立っている。弟子屈を通過して標茶にむかってゆくと路面がぬれてきた。雨が止んだばかりのようだ。進んでゆくと雨粒がポツポツと落ちてきて徐々に強くなる。これはまずいと思っているとセイコマがあったので雨宿りをすることにした。

 セイコマでゴミを捨てさせてもらい、ボスの北海道オリジナルブレンドの缶コーヒーとカップめんを買った。あたたかいコーヒーを飲みながら待つも弱い雨はやまない。セイコマには天気予報の画面があり、釧路の降水確率は70%と表示されている。しばらく待ったが雨降りはとまりそうにないので、カッパとブーツカバーをつけて道の駅にもどることにした。

 弟子屈にもどってゆくと虹別方向の空は晴れている。そちらに行ってみるもまた雨にあい、10時に道の駅にもどった。ТW氏は雨天なので動かなかったそうだ。時間のある人は落ち着いている。弟子屈は雨は降っていなかったが時間の問題だと思われた。

 

 いちばん左が釣人の車 ハイエースの右に軽キャンカーとアドリア

 

 2日前にここに来たときからとまっている大型キャンピングカーのアドリア氏が話しかけてきた。そのバイクは2サイクルですか?、と。いや、4サイクルです、と答えたのだが、朝の始動のときにマフラーから白煙がでていたから、2サイクルなのか、いや4サイクルだろうと考えていたそうだ。オイル上がりをおこしている古いバイクだと説明したがよく見ているよね。バイクをハイエースに積んできていて林道をはしっていると話すと、バイクが好きなんですね、とおっしゃっていた。

 アドリア氏は75くらいの方だ。大型キャンピングカーのアドリアはフィアット・ベースでスロベニアのメーカーがキャンピングカーに仕立てたモデルなのだそうだ。大きいからトラック・バス扱いになるそうで、フェリー代は普通車の3倍になるとか。それで九州からずっと下道をとおり、船便も大間・函館間のいちばん短いところだけを利用したとのこと。これはТW氏とおなじで、リタイヤして時間のある人は似たようなことを考えるようだ。

 アドリア氏は北海道に14年連続できていると言う。昨年まではコースターで、今年からアドリアに乗りかえたそうだから大きな車がお好きなのだ。北海道では根室のさんま祭りやチューリップ祭りなどをめぐるのが楽しみとのこと。祭りでは海産物が格安で手に入るそうだ。1000円でホタテが10枚以上も買えるとのこと。その貝をむいておいてアドリアの冷蔵庫に入れておけば好きなときに食べられるとおっしゃっていた。年をとったら北海道の祭りをまわるのもいいね。アドリア氏は高価な車にのっていたが奥様共々とても気さくな方だった。

 リタイヤして家にいても金はかかる。一方で車で旅にでても生活費は変わらないのではなかろうか。ならば夏のよい季節は北海道でうまいものを食い、好きな酒を飲み、温泉につかって夫婦で暮らす。これも人生の過ごしかただ。余裕があればコースターのキャンピングカーかアドリアを手に入れるのもいいだろう。一年のうちの30日をおくる部屋だと思えば高くはないのではないか。

 ТW氏がバイクを車に積もうとしている。釧路に車のオイル交換にゆくそうだ。車を見せてもらうとフロアには自作のコンパネ(ベニア坂)が敷いてある。フロアの形にベニアを切るのはたいへんな手間がかかっただろう。因みにハイエース用のコンパネは市販されているがエルグランド用はないと思う。エルグランドをキャンピングカーやトランポにする人はほとんどいないからだ。

 ТWをのせるのは車の中央だ。積載バランスを考えてそうしているとのこと。私はDRを車内の右に積んでおりバランスは考慮していない。上げ下ろしのしやすさを優先している。ТWの固定は摩擦式のタイダウン・ベルト8本でおこなう。前後左右だけでなく、天井や横の壁からもベルトでかためていた。

 コンパネの他に物干し用の棒も自作されていた。この棒は山歩きでは杖になり、護身用の棍棒にもなるそうだ。またТWの前はトライアンフ・スピード・トリプルにのられていたとのこと。スピード・トリプルに乗る人はコーナーをかけぬけてゆくイメージがある。やはり走るのがお好きなのだ。そのスピード・トリプルもエルグランドにのせていたそうだが、狭い山道をはしるのにむかないので、ТWにしたとのこと。そして、そういえば朝の始動のときにDRは白煙をマフラーから出していたが、あれはどうしてだろう、とおっしゃる。またしても古いバイクなので、27年前のモデルだからオイル上がりをおこしていると説明したが、皆さんよく見ている。

 私もバイクを車に積み込んだ。昨夜ハイエースのとなりにぴったりととめていた同ナンバーのワンボックスカーには80くらいの老人がのっていて、スナック菓子を夢中でたべている。変わっている人のようなのでかかわらないようにした。

 軽トラ・キャンピングカーの犬をつれた老人がバイクの積み込みを興味深そうに見ていた。この方の軽トラ・キャンカーにはご自身とバセット・ハウンドの絵がかかれているが、ご自分でえがかれたのだろう。とてもよい味をだしていた。リタイヤしたら愛犬をつれた旅もいいね。

 気がつくと誰かが釣りの話をしている。スナック菓子を夢中で食べていた老人に、車中泊をしている男性が話しかけているのだ。老人はいつの間にか車から出て釣竿を手にしている。道の駅の横をながれる釧路川で釣りをしてきたようだ。リール竿に脈釣り仕掛けをつけている変わった釣り方だ。ふたりの会話は終わったので私も老人に話しかけてみた。

 老人は釣りにいったが雨が降ってきたのでもどってきたそうだ。リール竿に脈釣り仕掛けはめずらしいですね、と言うと、ポイントが遠くて延べ竿ではとどかないのだそうだ。ニジマス狙いですか?、と聞くと、そうだ、とのこと。でも山女のチビしかかからないそうだ。川はザラ瀬ばかりに見えるがポイントはありますか?、とたずねると、岸の際に消波ブロックが入っていて、そこにある穴がポイント、と教えてくれた。ニジマスはかかれば30センチがアベレージで、去年はここで44センチのアメマスをかけたそうだ。44センチはすごい。またひとりだから山奥には入らず、危険のない本流でだけ釣りを楽しんでいるそうだ。

 バイクで雨天は最悪だが釣りでは絶好の日和なのだ。ツーリング中に雨降りにあったら渓流釣りをしてすごすのがよいかもしれない。老人は車に乗り込むとまた夢中でスナック菓子をたべだした。

 バイク乗りのあいだには連帯感があると思う。同じオートバイに乗る者同士ですぐに打ち解けあえる。それは車中泊をしている人の中にもあった。昔はキャンプ場にもそれがあったのだが今は失われた。最近のキャンプは道具にやたらに凝って、ファッション第一で、やっている人種も変わった。

 ТW氏は釧路にオイル交換にでかけた。道の駅にいってみやげを買い足して、近くにある弟子屈ラーメンに昼食をとりにゆくことにする。道の駅のそばには弟子屈ラーメンと蕎麦屋の福住があり両方とも人気だ。どちらにするのか迷い、ラーメンにすることにした。

 

 弟子屈ラーメンのチャーマヨのりまき

 

 弟子屈ラーメンにはいると満席だったがすこし待ってカウンターにすわることができた。お勧めを聞くと、魚介しぼりしょう油ラーメン800円とのことで、それと行者ニンニク入りの餃子280円をオーダーする。ラーメンがやってきてみると麺がすくない感じなのでチャーマヨのりまきというご飯メニュー230円も追加したが、ラーメンの量はけっこうあって、チャーマヨはいらなかった。味はまずまず。☆5点満点平均3点で3、4点。お会計をするとサービスで弟子屈ラーメンのシールをくれた。これはうれしい。ハイエースにはろうかと思ったが、やめておいた。

 弟子屈ラーメンをでると雨が強くなった。弟子屈の温泉、亀の湯にゆく。亀の湯はレトロな建物の昔ながらの共同湯だ。中に入ると誰もいないので、勝手に入浴することにした。湯はぬるい。しかしつかっていると体の芯からあたたまった。誰も来ないので番台に300円の料金をおいておく。ここは内風呂があるだけで300円だが、昨夜利用したびほろ後楽園は露天風呂にサウナ、休憩室もついて380円だから格安だ。ボロイが人気のわけである。

 苫小牧にむけて走りだす。明日の朝食をマルトマ食堂でとりたいから、今日のうちになるべく近づいておきたい。そして昼食は余市の柿崎食堂と決めた。来るときにもつかった国道241号線で阿寒湖にむかう。双岳台があるが雨にくわえて霧もでてきたのでどうせ何も見えないだろうと考えて立ち寄らなかった。

 

 双湖台からペンケトウを見る

 

 つづいて双湖台の看板があらわれた。ここもどうせ見えないだろうと思ったが、霧でかすんだ風景の写真をとるのもよかろうと考えて展望所にゆくと、ペンケトウがうっすらと見えた。パンケトウとペンケトウのふたつの湖がのぞめるのが双湖台だが、ペンケトウだけが見えていた。それがとても意外で霧の中の湖をしばらく眺めていた。

 このルートは自衛隊の車がたくさん走っていた。トラックやジープだけでなく、装甲車のよううな車輌もおおい。装甲車は隊員が車内から顔をだし、前方を注視していた。

 阿寒湖をすぎて上足寄にはいると雨は土砂降りとなり、たたきつけるように降りだした。見通しが悪くなったので速度を70キロ、60キロと落とす。ラジオでは日高で大雨・洪水・竜巻注意報がでたと言っている。猿払も大雨・洪水注意報とのことで天候は荒れてきた。雨量が増えると道東道が通行止めにならないか心配になる。これからゆくから通行止めだけは勘弁してほしいと思った。

 足寄の町の手前で雨はあがった。もっとひどくなるかと心配していたのでホッとする。足寄のホクレンで給油をした。10、17K/L。128円。

 荷物を整理するためのボックスがほしいと思っていたので足寄のホームセンター、イエローグローブに立ち寄る。ここは2005年にカッパを買ったところなのだが、当時はワールドホームという店だったから、会社が入れ替わったようだ。ここでちょうどよい箱を手に入れた。

 今年はホクレンのフラッグはブルーの1本しか手に入れていない。他の色もゲットしたいので今更ながらホクレンのHPで在庫のある店舗をしらべてみた。するとほとんど完売で、あるのは辺鄙なところばかりだ。フラッグのために遠回りをしたくないし、データも8月31日のものだから、行ってもなくなっているかもしれない。フラッグは諦めることにした。

 十勝清水から道東道にはいる。気温は14℃で清水では虹がでていた。道東道は占冠ーむかわ間が事故のため通行止めとでている。高速代を無料にするために元から占冠で高速をでるつもりだったが、その先が通行できないから、入りなおす必要がなくなった。

 ところで日勝峠が昨年の台風の災害で通行不可になっていて、その代替道路として道東道が無料で利用できることは前にも書いた。適用条件が十勝清水と占冠でのりおりしたときだけなのもである。それなのに通過車輌はのりおりするな、と垂れ幕がでている。ICをでてもUターンをするなと看板がでているのだ。本来ならばここを通るすべての車輌を無料にするべきだと思うが、なるべくタダにさせまいとしている。誠に姑息な、役人根性のすけてみえる運営だ。

 占冠で道東道をでると料金は1410円と表示されたが請求はされなかった。占冠から国道237号線で日高にゆき、国道274号線の石勝樹海ロードで夕張にむかう。このルートは山道でカーブの連続だ。コーナーでかなりのGがかかり積んでいるバイクが心配になる。それで速度をおとして走ったが、バイクを積載したときにギヤをローに入れなかったことを思い出して、冷汗をかいてしまった。

 バイクの状態が不安なので道の駅・夕張メロードにたちよった。ここは外灯がついていなくて真っ暗だ。暗闇の中を手探りするようにすすんで車をとめた。夕張は金がなくて明かりもつけられないのかと感じてしまう。バイクの固定は問題なかった。ギヤをローにいれるのは明日の朝でよいだろうと判断した。

 紅葉山のセイコマにゆく。ここはゴミ箱がない。設置していない店舗は利用しないことにしているのだが、この先で酒が手に入らないかもしれないから、ここで焼酎を買った。

 セイコマの入口には大型の山蛾が舞っていてなかなか店に入れなかった。蛾がはなれた瞬間にドアをあけたが奴も店内に入ってしまう。私は大きな蛾は苦手だが地元の人は平気で大した反応はなかった。この大きな蛾が車やバイクで夜に走っていると横をかすめて飛ぶのだ。コウモリのような大きさだからびっくりしてしまう。

 

 ウトナイ湖での夕食

 

 紅葉山で道の駅ウトナイ湖をナビにセットすると50キロの距離で到着時間は20時30分と表示された。もう疲れてしまって走りたくないのだが、いちばん近い道の駅がウトナイ湖なのでそこまで行くしかなかった。

 セイコマには買いたい食品はなかった。どこかで今晩のツマミを手に入れたいと思っているとローソンがある。しかしここもゴミ箱がない。この先にコンビにはないかもしれないので節をまげてここでミックスサンドとシューマイ、ミートボール、玉子焼きのとりあわせ、それにサッポロクラシックを購入した。

 国道234号線から道道をとおって国道36号線にアクセスする。道道でキツネ2匹に会って国道36号線にでるとウトナイ湖はちかい。20時30分に道の駅ウトナイ湖に到着した。

 道の駅には車中泊の車がたくさんあつまっていた。私も場所をえらんでハイエースをとめ、車内の整理をして寝床をととのえる。テーブルをだしてローチェアにすわり、サッポロクラシックをあけた。今夜もハイエースのフロアで晩酌だ。となりには四半世紀の相棒DRがいる。そのエンジンをなでて、今年の北海道ツーリングも終わったな、と話す。

 トイレに行ったときに道の駅を見てまわると、スクーターの若者たちが路上にシュラフをならべて眠っていた。若人の旅はこうだよね。

 バイクの走行距離122、7キロ ダート21、5キロ 車の走行距離341キロ

 

 

 

 

  

 

 

 

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