地上生活者 〈第2部 未成年の森〉 李恢成 講談社 2005年 2500円+税 

 樺太出身の在日の作家が青春時代をすごした札幌にもどり、当時を回想する小説の第2部。本編は高校版だ。

 敗戦直後の青春がえがかれている。昭和一桁世代、私の父の世代だから興味深い。

 生真面目で青臭く、戦後すぐなので共産主義への共感が強い。そして民主主義の記述も多い。真面目で青臭いのはよいが、共産主義への憧れは、あまりに理想主義的で、今読むとロマンチックにさえ感じる。しかし、それも時代のせいなのだろう。

 映画や小説、政治について議論があり、学校自治や受験に関するエピソードがつづく。青春小説だが、作者が在日であるという現実が底流に絶えずながれている。日本は豊かになっていくが、朝鮮戦争はつづき、日本で暮らす同胞も北と南に別れて反目しあうのだ。

 過酷な現実を冷静な筆致で書いていくのはたいへんな力量だ。饒舌な語りで絶えず脇道にそれつつ、ストーリーはすすんでいく。たぶん在日の方には必読の書なのだと思う。現実を知ることがなかった私をふくむ日本人も、読むべき本だ。

 日韓の歴史をぬきにしても、読書人なら手にとるべき水準の高い作品である。

 

 

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