仏典をよむ 3 大乗の教え(上) 中村元 岩波書店 2001年 1800円+税

 NHKのラジオ仏教講座をまとめた全四巻の第三巻。一、二巻は小乗仏教だったが、本書から大乗仏教である。

 まず「空」の思想と題して、般若心経と金剛般若経について解説する。第三巻に入ると哲学的で複雑な内容になるので、理解がなかなかすすまなくなる。

 つづいて「現実生活の肯定」として「維摩経・ゆいまきょう」について書いている。内容は維摩詰という人物と文殊菩薩が論争する内容だ。ここでも「空」について話し合うが、ときに禅問答のようにもなる。そして菩薩のもとめるものは、対立のない不二の境地であると結論がでて、何と何の対立のない境地なのかとつづいてゆく。

 女人が説法をする「勝鬘経・しょうまんきょう」と「法華経」、「観音経」についても解説される。

 前にも書いたがブッダは何も書き残さなかった。ブッダの言葉を死後弟子たちがまとめたのである。しかし、大乗仏教はブッダの死後に作られた。したがって大乗仏教は戯曲的構想をとりながら、その奥に深い哲学的意義を寓意させ、しかしも一般民衆の好みに合うように作成された宗教的文芸作品であると解説している。それによって大乗仏教の価値が減じるものではないが。

 難解になってきたがとても興味深く、深みのあることばで書かれた本だ。

 

 

 

 

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