円空 微笑の旅路 三宅雅子 叢文社 2001年 1600円+税

 生涯に12万体の仏像を彫ることを発願し、それを達した江戸時代の遊行僧、円空の人生を追った書である。

 円空は美濃国に父のないことして生まれ、母とも死に別れて13才で寺に入った。その寺を23才で出て、伊吹山に入り、修験の道に飛び込んだのだ。そして山で9年を過ごした円空は諸国を放浪するようになり、夥しい数の仏像を彫ったのだ。

 円空の仏像は微笑しているものが代表的なのだが、それは晩年の作に過ぎないのだそうだ。そこに至るまでの作風の変化と円空の足跡が語られていく。

 円空は岐阜や愛知、富山などに長く滞在したが、東北から北海道まで足を伸ばしている。洞爺湖にも円空仏が残っているのである。

 円空は偉い坊さんではなかった。遊行僧、聖、乞食坊主、などと書かれてきたように、加持祈祷や雨乞いなどもする、修験者のような側面も持っていた。そんな円空にとって仏像を彫ることは修行のひとつだったのである。

 今、円空仏の人気が高まっている。自由奔放な作風で、土着性があり、人間臭い姿で、平明で親しみやすく、それでいて恐ろしい像もあって、魅力にあふれている。私も飛騨高山の千光寺にある円空仏を見にいったが(興味のある方は『2007奥飛騨ツーリング』をどうぞ)、とても惹かれている。

 円空は61で死期が近づいたのを悟り、五穀をたち、後に十穀をたって体の身を削り、土中に入って即身仏となったそうだ。ミイラとなったはずの体は伝えられておらず、墓だけが残っている。しかし、各地には多数の円空仏がのこり、今なお人々を魅了し続けているのだ。

 円空のことを知りたい人の入門書。

 

 

 

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