半眼訥訥 高村薫 文藝春秋 2000年 1381円+税

 硬い文体で書かれた生真面目なエッセイ集。

 1990年代に執筆されたエッセイを集めたものである。内容は住宅などの身辺雑記、時事問題にたいする感想、植木職人やデパートマンなどの仕事のドキュメント、創作に関すること、ブラームスの音楽会によせたことば、生い立ちなど。内容は多岐にわたり、小説ではうかがいしれない作者の人となりが見えてくる。

 小説とおなじくきわめて真面目に物事とむかいあい、真実をとらえようとして、論理的に思考を展開している。作者は自身で女がわからなくて、女性が書けないと著しているが、正にこの文章は男性が書いたもの、男のような思考だと思うのは、いつも作者の小説を読んで感じるのと同様であった。

 あとがきで作者は自身の執筆スタイルを、愚直、と書いている。正に内容も文体も、そして生き方も、愚直な印象。

 

 

 

 

 

 

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