人骨展示館 又吉栄喜 文藝春秋 2002年 1667円+税

 沖縄を舞台にした滑稽譚である。

 これまでシリアスな小説を何度か読んでいた又吉の作品を、おなじような作風だと思って手にとった。しかしページを繰っていくといつもとちがう。軽薄な男女がでてきてドタバタ喜劇を演じる内容だ。そのなかに沖縄の歴史や平和運動の現実などが織り込まれているが、力作ではないので、読む方としても集中力が途切れがちで、退屈な展開もあって、投げ出しそうになるのを我慢して読了した。

 内容に乏しいので、読み終えても空疎な読後感がのこる。

 沖縄を舞台にした小説で、胸に響かなかったのははじめてだが、いつも戦争を書いているよりは、よいのかもしれない。その意味では作者は新たな方向性を模索しているのだろう。

 

 

 

 

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