巡礼者たち  エリザベス・ギルバート  新潮クレストブック  1999年  2000円税別

 短編小説でしか書けないこと、と裏にコピーがあり手に取った。米国新人文学賞ダブル受賞とのこと。短編は日本では人気がないのが残念だが、私も久しぶりだ。短編は短いだけあって、張り詰めているため、読むほうも集中力がいる。
 一番はじめのものがタイトルとなった巡礼者たち。カウボーイの少年とカウボーイをやっている女性の話。ことばを極力すくなくしたハードボイルド・タッチの文体、そして感情表現もない。物語は唐突に終わって、説明がすくない効果で、読者に細部やその後を想像させて、余韻をのこす手法。古典的なテクニックだ。
 女性のかいた短編集だが、男性の手のように感じる。ほかにも米国のあちこちにいるふつうの人々の日常を切り取っている。一口話めいたものもあるが、短編を書こうとしている人には参考になるかもしれない。
 しかし次回作は読みたいと思わない。心に残ったものはないから。技巧を凝らした日本人作家の短編のほうが、はるかに刺激的だ。








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