北帰行  渡部由輝  山と渓谷社  1973年  750円  

 1960年代に知床に魅せられた著者が通いつめた記録集。現代のたびシリーズというものの一冊。ちなみにこのシリーズにはバイク・ツーリングで高名な加曾利隆のサハラ砂漠を旅した『極限の旅』がはいっている。
 手つかずの自然がのこっているイメージがある知床だが、戦前からの開発の名残りや伐採のひどさなどが語られる。
 原生林のようすが印象的。観光写真では穏やかに見える知床の山も、ハイ松が生い茂り、歩くのに大変な苦労が必要だった点など新鮮である。しかし現在は立ち入り禁止であり、どうなっているのかは不明だ。そのほかに川下りによる水質調査など、紀行文にしてはアカデミックな内容もある。
 冬の知床の山中でのビバークも楽々とこなす登山能力もすばらしい。
 たぶん、絶版であろう。古本屋でたまたま見つけた本である。

 

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