8月22日 黒部ダムの絶景

 翌日の朝食は山女とイナゴの甘露煮がメインだった。久しぶりにイナゴを見たが箸はつけられない。H氏だけが食していた。きょうは大町有料道路をのぼり、扇沢から関西電力のトロリー・バスにのって黒部ダムにいくことになった。宿から扇沢までひと走りである。なぜか私が先頭になった。


出発のまえに

 ついてくるのはTDM850にカタナ、Z750GPで私だけ250のシルクロードである。ヘアピン・コーナーのつづく登りになったところで、スパートしてみた。シルクのエンジンを限界までまわして、加速し、コーナーに飛びこむ。そしてまたフル加速。みんな楽々とついてくる。そりゃあそうだ。パワーがちがいすぎる。しばらく先頭をひいていたが、左によけて先にいけと合図すると、3台が一気に加速し、見えなくなってしまった。

 ひとりで走っていれば十分な動力性能のシルクロードだが、大型といっしょだとストレスがたまる。みんなが待っている扇沢に遅れてつくと、不満の言葉が口をついた。

 あれだけ走れば十分なんじゃないの、とI氏はいうが、返事をしない私だった。

 チケットを買って満員のバスに揺られ、16分トンネルをいくと黒部第4ダム。通称黒部ダムに到着した。高みからダムを見おろすと、絶景である。巨大なダムと、それに堰きとめられた雄大なダム湖、そして立山連峰の山々。ダムの上部からは水が噴水のようにふきだし、ダムの基底部にふりそそいでいる。豪快だった。

 しばし風景に打たれたあとで、周辺を散策した。ダムの資料館にはいって、黒部ダムの建設がいかに困難だったかを知った。つぎつぎに起こる解決不能と思われる難問を、人智をつくして克服し、このダムが築かれたのだ。外にでると、いっしょにいたH氏が、こんなものを作ったら、人間は何でもできるって慢心しちゃうよな、と呟いた。

 帰りのトロリー・バスを待つあいだ、ダムのレストランで食事をした。ここは観光地でも近年まれにみるほど不味かった。関西電力は客を馬鹿にしている。慢心しきっている。トロリー・バスの往復運賃は2120円。

 扇沢から大町までくだり、長野まで皆といっしょに走った。長野につくとまず新潟のH氏が左折して北上していき、つぎにI氏とN氏が中央道へとはいっていった。たがいに他日の再開を約しつつ、ホーンを鳴らしあった。

 私はひとり南下していく。渋滞する軽井沢をぬけ、高崎を通過して、埼玉県にはいる。埼玉にはいると恒常的に渋滞している。安全運転で走行し、無事自宅に帰りついた。

 
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