満願 米澤穂信(よねざわ ほのぶ) 新潮社 2014年 1600円+税

書評で興味をもった未知の作家の作品を読んだのだが、細部まで計算して作り上げられたストーリーに感服した。

6編の短編小説で構成された作品だ。核心を秘めて物語をすすめ、読者をひっぱってゆく手法をとっている。これは作者がミステリー出身だからなのかもしれないが、とても効果的である。

警察物、温泉旅館、男女、新興国の開発事業、都市伝説、犯罪物とジャンルは多岐にわたる。これだけ幅広い分野を書けるということは、作者はたくさんの引き出しをもっているのだろう。それぞれの作品の細部に破綻はみられないから、力量も十分だ。

ミステリー出身だが、文章が稚拙なことはなく、内容も人間の暗い内面を内包していて、読み応えがある。したがってテーマは重苦しく、読後感はよくない。それでも読む価値のある作品だ。

作者の別の小説も読んでみたいと思った。

書名は作品の最後におさめられた短編のタイトルからとられている。 

 

 

 

 

 

 

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