流れにまかせて生きる 変化に応じる「観音力」の磨き方 玄侑 宗久 PHP研究所 950円+税

 震災の被害を念頭に書かれた本のようである。

 内容は作者がこれまで考え抜いてきたことなのだろう。どうしようもないことにぶつかったら、その流れにそった生き方をする。人生は思い通りにはならないものだから、やってきた大きな流れにのってゆけばよいのだと説く。どこに行くのかわからない龍にのるように。

 その極意として、副題に、変化に応じる観音力の磨き方、とあるように、観音力を利用するとしている。観音様は人々を強化救済しようとして、三十三種の姿に変化するといわれている。三十三というのは無数に、という意味で、我々も観音様のように変化に応じてゆけばよいというのである。無計画で生きる。状況が変わったら生き方も柔軟に変えてゆく。ガッカリしたら逆に胸をはる。自分の気持ちをいれかえる、と。

 人生は何がおこるかわからない。とんでもないこともやってくる。だから予断を持たずに、無心で、いまに自在に対応しながら生きればよいと説くのである。

 しかし、今に無心でいるには難しいことである。どうすればそうなれるのか。それは、お経をとなえる、または座禅をすれば叶うそうだ。読経と座禅でいまだけを感じて、いまを味わい、自分をけす。私、我をけすのだ。自我をとっぱらうのが宗教で、私をとっぱらえばすべてうまくゆく、と作者は書いている。

 

 

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