眠れぬイヴのために  ジェフリー・ディーバー  ハヤカワ文庫  上・下とも600円

 初期に書かれたスリラー。ディーバーらしくジェットコースターに乗っているかのようなストーリー。老練さ,洗練さはまだなくゴツゴツとした読み味。しかし十分に楽しめるエンターテイメント。
 精神分裂病の殺人犯が、収容されている精神病院を脱走し、裁判で証言した女性のもとに行こうとする。追跡が始まる。警察はもとより、元警察官で警察犬をあやつる賞金稼ぎ、女性の夫で元軍人、そして病院の医師が加わり、それぞれの人生や思惑をじつに詳細に織り込みつつすすむ。登場人物ごとにめまぐるしく場面がきりかえられ、それがわずらわしいほど多いのも事実。
 ストーリーに牽引力があり読ませる。ラストに意外な展開があり、力量を感じさせる。その後のディーバーの成功を予告しているかのようだ。
 















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