道祖土家(さいどけ)の猿嫁 坂東眞砂子 講談社 2000年 1800円+税

 明治時代に高知の山間の大地主の家に嫁いだ女性の一代記。

 明治にはいってはじめての普通選挙がおこなわれる前から小説ははじまる。嫁いできた主人公を中心に一家と村の変遷が語られていく。伝説と祭りと踊り、卑猥な歌や夜這い、カッパと白い猿など、村の習俗がうまく配されている。

 民話的、土俗的な印象である。どこかの実在の村をモデルにしたものかと思ったら、作者の父方の実家であるとのこと。したがって物語全体に作者の愛情を感じる筆致となっている。

 主人公とともに時代は大正、昭和へ。社会的には日露戦争、第二次大戦が大きな山場をつくる。時に物語は主人公の手をはなれ、息子や孫を中心にしたりする、大規模な小説である。

 やや、山場をつくりすぎていて、結末が安易な印象を受けたが、これは好みの問題だろう。一般的には山あり谷ありのほうが好まれるのだろうから。

 長い物語を安定した筆力で書き切っている。安心して読める実力派である。

 

 

 

 

 

 

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