生還 羽根田治 山と渓谷社 2000年
山岳遭難から生還した人にインタビューし、状況を検証して、彼らが生還できた理由をさぐった書。著者は山岳専門家であり、とくに登山家としての視点から、軽率な行為、不注意からおこる遭難に手厳しい。しかし素人にもわかりやすい文章と説明で、内容的に嫌味はなく納得させられる。
夏山で道に迷って山から脱出できなくなった例から、冬山で吹雪に襲われて雪道をほって何日も耐え忍んだ例まで事例は豊富で、ハイキングのつもりではいった山でも、一歩間違えれば遭難がおこりえることが詳述されている。一方で安易に救助を求めることへの批判も忘れない。
遭難は滑落や転落などときに悲惨な負傷をともなう。重傷を負いながら生還を果たした人たちの精神力、生命への執着は日常忘れていることに気づかせてもくれる。
彼らが生還できたのは、むやみに動きまわらず、おなじ場所で救助を待ったこと。救助を信じていたこと。冷静さを保ったことなどがあげられる。もしも自分がおなじ状況におかれたら、それができるか自信はない。