シャルロット・ペリアン自伝 シャルロット・ペリアン みすず書房 2009年 4800円+税

 建築家、インテリア・デザイナーとして国際的に活躍したフランス人女性の自伝。

 著者は1903年の生まれである。近代建築の三大巨匠と呼ばれる、ル・コルビュジェの事務所でインテリアを担当してキャリアを重ねた。初期の作品は当時の新素材だった鉄をつかった斬新なもので、今見ても洗練されていて才能を感じさせる。

 ペリアンの人生で興味を惹かれるのは日本とのかかわりである。彼女は戦前、商工省貿易局の輸出工芸指導顧問として日本に招聘され、各地をまわっているのだ。その後第二次大戦に時代は入ってゆき、彼女もその渦に翻弄されていくのが、その彼女から見た日本の歴史を知ることができるのが、日本人が彼女の自伝を手にとる理由であろう。

 彼女は高島屋で個展をひらいているが、日本的なものも作品に取り入れていて興味深い。戦後も日本の建築家や民芸工芸家との交流をつづけている。

 ル・コルビュジェも日本とかかわりがあり、上野にある国立西洋美術館の基本設計を手がけている。

 内容は興味深いが文体はいただけない。フランス人らしい文章で、冗長で、羅列的で、論理的でなく、時間が前後する。同じことの繰り返しもあり、訳も悪い。一行の余白をあけることもなく、突然話の内容が変わるのことが頻繁にあり、どうしてこんな話になったのかと戸惑うことが度々だ。てにをは、がおかしい文章も散見される。主語が移り変わりながら、だらだらと長く続く複雑な原文なのはわかるが、日本語としてどう読んでも成立していない文章も多々ある。特に建築のことをあつかった章にその傾向が強くあるので、訳者が何人もいるのではないかと感じられたほどだ。

 読みづらい本だが内容の詰まっている一冊だ。

 

  

 

 

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