シリウスの道 藤原伊織 文藝春秋 2005年 1714円+税

 文句なく楽しめるエンターテイメント。

 著者の作品ははじめて読んだ。実力派とのことだがその評判に恥じぬ仕上がりである。

 小説の舞台となるのは広告代理店で、そこに勤務する人物が主人公だ。広告代理店同士が広告の仕事をとりあう過程をベースにして、さまざまな要素をからめてストーリーは展開する。つぎつぎにおこるエピソードと主人公の過去、そして登場人物たちに無駄がなく、すべてが関連していて、じつによく練られたプロットだ。

 スピード感があり、ジェットコースターに乗っているようなスリルもあって、しかも広告代理店の仕事の内実を知る経済小説としても読める。はじめから読者をつかんでラストまで一気に読ませる力量もすごい。登場人物も魅力的だが、骨っぽい男が多い。これは作者のカラーなのだろう。

 ラストも安直ではなく、現実を直視して、あくまで骨っぽく終わる。おすすめの書だが、男向きの作品だろう。作者のファンも男中心なのではないか。別の作品も読んでみたいと思った。

 

 

 

 

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