スコットランドの黒い王様  ジャイルズ・フォーデン  1999年  新潮社クレストブック  2700円

 スコットランドの最後の王を自称していたウガンダのアミン大統領をモデルに、構想、取材、執筆に8年をかけた力作。ドキュメントかと思えるできばえ。これが小説であることが驚きだが、はじめは作者の体験記なのだと思った。
 戦争、伝染病、拷問、殺人、それも虐殺など、日本人には縁遠いエピソードが語られていく。これが独裁者、またはアフリカ的不条理と言うものだろうか。
 作品には巧妙に線が引かれ、ストーリーは引き締まり、作者の並々ならぬ力量がわかる。ただし売れないジャンルの本だろう。しかも価格が高すぎる。海外の優れた作品を紹介したいという新潮社の志の高さはわかるが、読者がついていけるだろうか。
 非常に興味深く、質の高い小説。ただし独裁者の毒に当たり、胸が悪くなるかもしれない。















トップ・ページへ          文学の旅・トップ            BACK