たんす屋でござる。−きものリサイクルで復活! 呉服問屋三代目の成功哲学ー 中村健一 (株)商業界 2006年 1429+税

 2006年に出版された本で、たんす屋が99店舗まで拡大し、100店舗目前の勢いのあるときに、経営者によって書かれた本である。

 たんす屋とは、中古着物の店である。呉服問屋の三代目社長が、和服が売れずに次の手を考えていたときに、ひらめいたアイデアを形にした、古着屋という、古くて新しい商売である。

 売り上げが落ちて将来が見えない呉服問屋の若社長が、ブックオフを見て、中古和服をきれいに洗って、格安に販売する、というビジネスを思いついた。それを形にして成功していく過程が語られるのだが、面白いのは三分の一ほど。その後は経営哲学だの、父や祖父の話などになってしまい、退屈である。

 ベンチャー・キャピタルから資金を提供される話や、新規上場する夢も語られるが、2012年末の時点で、この会社は上場に成功していない。勢いを失ったのだろうか。

 和服好きの私はもちろんたんす屋に入ったことはある。あまり安くないなというのが率直な感想だったが、中古品だけでなく、仕立てた新品も販売しているからだと本書を読んで知った。そして私の着物が、たんす屋のオリジナル商品によく似ていると言われたことがある。そんな安物ではないと思って、そうではない、と強く否定したものだ。

 前半は勢いがあって読ませる。その後は本の枚数を整えるために付け足した印象である。

 

 

 

             文学の旅・トップ