天使のナイフ 薬丸岳 講談社 2005年 1600円+税

 少年犯罪をテーマとした、読みごたえのある推理小説。

 めずらしく推理小説を読んだ。エンターテイメント好きな先輩に貸していただいたのだ。ただ面白いだけの小説は好まないと書いておきながら、たのしく、夢中になって読了した。本書は2005年度の江戸川乱歩賞受賞作品である。

 物語は少年犯罪を中心にすえて、重層的に構成されている。登場人物のほとんどがこの問題にかかわっており、うまく伏線も引いてあり、小道具も効果的に配されている。しかし、ときにこんなことはないだろうというご都合主義的な展開、設定もあるが、エンターテイメントなのだから細かいことをいっても詮無く、面白ければよいのだと思ったりもした。

 読みだしてすぐに結末を予想したが、そんなに単純な筋立てではなかった。二転三転するスリリングなストーリーが待っている。ときに語り手の視点が急に変わって戸惑ったりもするが、筆力はある。デビュー作だが一定のレベルに達しているエンターテイメント。作者の今後に期待したい。

 

 

 

 

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