2007年 晩秋のEOC 野営と宴と松島と 

 

 福島県天神岬キャンプ場

 

 永久ライダーの北野さんが主催するEOC(永久ライダー・オフ・キャンプ)に参加した。現地集合して酒を飲み、翌日解散するだけの集まりなのだが、他ではできない北海道ツーリングの会話が尽きることなくできるし、キャンプ好きのメンバーにも会えるので、どうしても行きたくなってしまうのだ。舞台となったのは、これまでに何度も利用している福島県の天神岬キャンプ場である。ここは福島県の中では温暖な地なのだが、前日から福島市などで降雪があり、急激に冷え込んできたので、覚悟と装備のいる野営となった。

 11月23日。高速はつかわない主義なので、朝の早い時間に出発したが、今年いちばんの冷え込みで寒かった。真冬の新潟方面で雪が降っている日のような冷えかたで、かなり着込んでいったが、走っていると手と足が冷えてくる。とくに栃木県の国道新4号線にはいると車の流れが速いので、寒さはいや増して、足はジンジンとしびれてしまい、よほどブーツカバーをつけようかと思ったほど。宇都宮で3℃だったが、出発したときは0℃近かったのではなかろうか。

 栃木県にはいると雪をかぶった山が見える。日光方面の山だが、後日栃木の友人にたずねると男体山とのこと。山が間近に見えるところに住めば、季節の移り変わりもよくわかるだろう。国道4号線から293号線に右折して喜連川の道の駅で休憩すると、足のしびれはほぐれていく。缶コーヒーで暖まって北上を再開した。

 

 下侍塚古墳

 

 この先に気になる場所があった。昨年のEOCにむかう途中で見かけた古墳である。今回は止まってじっくり見学してみたが、下侍塚古墳という古墳で、周囲にも何基もの古墳が存在し、散策路が作られている。解説を読んでみると、この古墳はかの水戸光圀が発掘調査をしたそうで、出土した副葬品をスケッチして、松の箱につめてまた埋め戻したとのこと。これは日本の考古学のはじまりだろうか。それともそれ以前からこのような調査はおこなわれていたのか。いずれにしてもご老公様はすごい。天晴れなり。

 

 雲厳寺

 

 宿場町の風情ののこる黒羽をぬけて八溝山にむかっていくと、山のふもとに雲厳寺があった。紅葉が盛りなので観光客がたくさん来ている。歴史と由緒のありそうな雲厳寺を見学して八溝山山頂にむかった。

 八溝山の山頂には車で行くことができるが、つづいているのは狭い舗装林道のような道である。薄暗い林のなかをのぼっていくと、やがて景色がひらけていく。林道の入口が2ヶ所あるがいずれも通行止めとなっている。この1本を行くはずだったのだが、それと気づかずに山頂にむかった。

 

 八溝山の山頂から那須連山を遠望 雲と一体となっているが冠雪している

 

 山頂の駐車場には12時に到着した。展望台があるので、登山者が休憩をしている山頂をぬけていってみた。料金は100円である。展望台からは360℃のパノラマがひろがり、雪をかぶっている那須連山もくっきりと見えるが、風が冷たい。手が痛くなるほどで早々に退散した。

 このさき福島県の棚倉町に林道でくだる予定なのだが、入口がわからない。さっき通り過ぎた通行止めの林道だったのだが、別の名前が出ていたし、通れないので転進して、大子町にくだり、国道118号線にはいって矢祭に北上した。

 そろそろ昼食をとりたい。山のなかなので蕎麦屋でもないものかと走っていくが、もともと店が少ない地域だし、これだと感じる店舗もない。空腹なのでいい加減妥協しても決めようと思っていると、ここは鮎で名高い久慈川沿いだ。店頭で鮎を焼いている店があり、客はひとりも入っていないのだが、そこに決めた。

 メニューを見てこれは失敗したなと直感する。観光地とは思えない、肉野菜炒め定食や焼き魚定食などの品書きがでているので。しかもビールジョッキが大量にあって、昼よりも夜の営業のほうが主力の店のようだ。しかし炭火で焼いている鮎だけはどうにかなりそうだったので、鮎定食1300円を注文する。鮎の塩焼きが2匹つくというのでこれにしたのだ。

 

 鮎の塩焼きは1匹では足りない

 

 なまりの強い女将と会話しながら鮎が焼けるのをまつ。すぐに料理は仕上がって、鮎を食べてみるとじつに美味しい。刺身こんにゃくもかなりレベルの高い品だった。これはよかったと喜んで食べていると、年配の夫婦が鮎を食べにやってきた。ご主人は2匹、奥さんは1匹注文する。ふたりは鮎好きで、千葉からここまで鮎を食べにきたそうだが、店によっては焼きすぎのぱさぱさになった塩焼きをだすから、店頭で焼いている鮎の様子を見ながら店をえらび、ここに入ってきたそうだ。

 たしかに魚の焼き加減は大事である。魚体の油分と水分がなくなるまえの、それらが魚のなかで沸騰して火が通ったところが食べごろなので、それにこだわっている私はよくわかる。その点この店の焼き具合はよく、ふだんは食べないワタまでたいらげてしまった。ご主人はまた2匹、奥さんは1匹追加していたが、鮎の塩焼きは最低2本は食べたいものだ。ちなみに鮎の塩焼きは1本350円だった。素朴な味で美味しかったが、名前を紹介するほどの店でもないかな。ここの気温は12℃だった。

 晩秋の日暮れは早いので、少し急ごうと走りだす。周辺に林道もあるのだが、通過することにして国道349号線にはいると、金沢入宝坂林道の入口があった(この林道は最新のツーリングマップル東北版に紹介されているが、数年前の関東版にはでていない)。3.2キロと短い林道なので、行きがけの駄賃に走っていくことにするが、路肩から草や木が伸びているだけでなく、路上にも草がはえていて、廃道のような雰囲気だ。わだちが雨で流されて、かなり荒れている部分もあり、どうしようもないところに出たら引き返そうと考えて、慎重にいく。3.2キロは終わってしまえば大したことはなかったが、逆戻りして国道118号線にでてしまった。

 

 廃道のような金沢入宝坂林道

 

 118号線で塙町へ北上し、国道289号線にはいって太平洋をめざす。遅くなってしまったので焦って飛ばす。勿来で6号線にでると、日暮れと競争しながら天神岬に北上していった。途中にスーパーがなく、天神岬を通りすぎて富岡町のヨークベニマルまでいくと、見たことのある人がいる。面識はないのだが、HP上の画像を見て知っていた、いちさんとボンさんだ。挨拶すると、おふたりは当然私を知らないからびっくりされていた。スーパーの中にはもうひとり見たことのある方がいたが、確信がもてずに声をかけなかったが、ともさんの友人のゆうじ♪さんだった。

 キャンプ場についたのは17時過ぎで、すでに暗くなっていた。ほとんどの方が先着されていて、macさんの巨大テントーー野戦テントのようだーーのパビリオンも設営されており、となりの東屋でmacさんとcarrotさんご夫妻とくっしーさん、いちさんとボンさんは料理をされていて、主催者のキタノさんとやまちゃんは飲んでいた。

 私もまずテントをたてることにすると、ともさんと小坊主さんも設営中だった。小坊主さんとも初対面だが、テントの上にタープをはっていて、このスタイルが病みつきになっていて、と語っておられた。おふたりの隣にテントをたてていると、まぁさんがランタンを貸してくださった。暗いですから、どうぞ、と。ありがたい。

 今夜から明日にかけて冷え込みが予想されるので、マットとシュラフを入念にととのえた。今回は寝袋をふたつ重ねて使用する。マットの下にもシートを敷いて地面からの冷気が伝わらないようにした。つづいて東屋で調理を開始する。炭火台は持参しなかったので、今回も火をつかわない料理だ。ひとつは『たぬき豆腐』。冷やしたぬきそばのそばを豆腐にしたものだが、めんつゆで冷奴を食べるのは美味しいのだ。きゅうりのスライスとカニカマ、ネギや揚げ玉をたっぷりかけて完成だ。もう一品は刺身。カツオとタコとホタテを切り、カツオの上にはネギやミョウガ、大葉の千切りをたっぷりとかければ簡単完成だ。

 宴会場のパビリオンではすでに宴がはじまっている。私も料理をもって加わったが、パビリオンのなかは暖かく、上着がいらないほどだ。昨年のEOCでは焚き火をかこんで宴会をしたのだが、火に近づいても足がジンジンと冷えたことが思い出された。macさんは得意の芋煮を仕上げている。まぁさんはおでんをドーンとだし、ホルモンを焼いていた(これは素晴らしく美味しかった)。

 

 左隅はmacさんの芋煮、まぁさんのおでんと私の刺身

 

 エンドレスの宴会に突入した。まぁさんご夫妻には、ご夫婦ふたりきりででかけられた北海道ツーリングのお話をうかがう。バイクは初心者の奥様の可愛らしいエピソードをお聞きした。また今回はお子さんを連れてスパリゾート・ハワイアンにより、家族サービスをかねているそうだが、スパリゾートに格安で入場する裏技をお聞きする。たまたま私もスパリゾートに連れて行けと家族に言われているので、まぁさんの耳寄り情報を記憶に刻んでおいた。他にもお得にツインリンクス茂木で過ごす方法なども教えていただく。そして素晴らしく美味しいホルモンの売っているお店の場所もお聞きした。まぁさんは私のHPをよく読んでいただいているとのこと。感謝である。

 やまちゃんは元気一杯で、でだしからフルスピードで盛り上がっている。炭火台などのキャンプ道具も手に入れていて、はじめて料理をご馳走になったが、それは肉もやし炒めであった。やまちゃん、シュラフは1000円で買ったものだそうで、そんなのじゃダメだよ、と言うと、毛布も持参とのことだった。

 くっしーさんはスタッフド・チキンをダッジ・オーブンで焼いている。炭火台のなかにダッジを入れ、ダッジの上にも炭をのせていた。チキンのなかにもいろいろと詰めていて、見た目も内容も凝った料理をされていた。

 

 くっしーさんのスタッフド・チキン 豪華絢爛

 

 そのとなりはともさんとゆうじ♪さんがいて、ともさんはピーマンの肉詰め・複雑味つけをつくっていた。これはアウトライダーから仕入れた料理だそうだが、手間がかかり凝った一品だった。その隣が小坊主さんで、小坊主さんもくっしーさんやえぼらぁ〜さんのHPですでに存じあげていた方だった。

 いちさんとボンさんは先輩後輩で、いちさんはLEDランプを制作してキタノさんとmacさんにゆずっていた方だ。今年の北海道ツーリングの折、上士幌航空公園でmacさんご夫妻とキャンプをしたが、macさんがうれしそうにLEDランプを点灯されていたのを思い出す。まぶしいほどの輝きだったが、いちさんは今回新作を持参され、そのかがやきはいちだんと強く、パビリオンに吊るされて宴会場を照らしていた。またボンさんは私のHPをよく見ていてくださっているとのこと。感謝です。明日は奥松島にいく予定なのだが、ボンさんには奥松島では牡蠣を、さらに女川までいけたら鯨を食べることをすすめられたのだった。明日はどのあたりまでいけるのだろうか。

 

 ランタンのかかるパビリオン・宴会場 

 

 ロストさんが遅れて登場して役者はそろった。超人ロストさんは、北海道の美流渡から1日で千葉まで帰還したという信じられないことを語って、みんなを絶句させたのだった。青函フェリー利用で下道をつかってとのこと。ありえない。

 隣にいた北野さんは酔うほどに本調子になっていく。明日はみんなで松川浦に食事に行きましょう、という。小名浜でもよいのでは、という声がでると、あそこは福島ではなくて首都圏ですからダメです、とのこと。首都圏の人がたくさん押しかけて福島本来のものではないということなのだろう。北野さんはやまちゃんをいじり、椅子にすわっていられなくなり、地面に直接座して、上体を揺らせながら熱く、怪しく、おなじことを何度も、エンドレスにかたる、完全なヨッパライダーに変身した。転ぶと危ないので、周囲のものをどかして、もしも倒れそうになったら、いちさんとささえることを確認していたが、そのうちお約束の撃沈。パビリオンのなかは暖かいのだが、後刻強制収用となった。

 

 撃沈 そして強制収用

 

 たまたま以前のEOCでお会いした黒木さんとMakishoさんも別のグループでキャンプをしていて、黒木さんとしばし歓談する。そしてパビリオンにもどり宴は1時30分まで続いたのであった。

                                                              360キロ

 

 

 

 

 11月24日。6時30分に話し声で眼がさめた。誰かがパビリオンで会話をしている。よく聞いてみるとcarrotさんとやまちゃんの声だ。昨夜は1時30分まで飲んだのに元気だなと思っていってみると、北野さんもいた。昨夜早い時間に撃沈した北野さんが起きだして、炭をおこそうとしたパタパタという音でcarrotさんが眼をさまし、やまちゃんは、
「さあ、飲むぞ」と北野さんに起こされたのだそうだ。

 危険だ。この永久ライダーのペースにはまると1日が飲んだだけで終わってしまう。それは時間がもったいないので、その場からはなれ、ひとり静かにインスタントラーメンをつくって食し、ソロ・ツーリングにでかける準備をする。ところで朝は冷え込んだ。シュラフのなかの足が冷たくなってしまうほどで、かなりの低温だと思われた。

 みなさんそろそろ起きてきた。北野さんとやまちゃんは完全な酒盛りモードで、みなさんもそれに引き込まれそうになっている。連泊することだし、じゃあ、ビールでも飲んじゃいましょうか、という顔になっていて、危ない。私は出発するとも告げずにバイクのもとにいき、ボンさんに見守られて走りだしたが、今日帰る方にご挨拶もできなかったのは、誠に心苦しかった。

 奥松島から、できたら女川、さらに牡鹿半島の先端、金華山をのぞめるあたりまで行ってみたい。8時に天神岬を出発して国道6号線を北上していくが、かなり寒い。それでもすすんでいくと冷気はじわりとゆるんできた。気温表示は7℃、8℃がつづいていく。相馬をぬけて4号線にはいり、名取市にかかると混雑がはじまって、大都市仙台は渋滞だった。福島から宮城にかけて100円ショップのダイショーとかっぱ寿司がやけにおおく、ホームセンターはあるがスーパーは少ない。そして追突事故が多いところだった。往きに2件、帰りに1件。

 仙台市街で国道45号線に右折したのは10時45分だった。この先も渋滞ですりぬけが続いていく。塩釜にはいると路肩に雪がのこっていて、昨日か一昨日に降ったものと思われた。ところで10年くらい前だろうか、仙台支社の同僚と塩釜港から釣り船に乗って、金華山沖まで真鱈釣りに出かけたのだ。その時通った45号線の風景に見覚えがあった。真冬の金華山沖まで塩釜港から1時間ほど船を飛ばして、100メーター以上の深さの海底で真鱈をねらったが、スケソーダラしかかからなかったことを思い出す。このころが電動リールの出始めで、電動は便利だが、質実剛健ではないという風潮があった。価格もまだ高くて1台6万円ほどしたから、もちろんケチな私は手動リールだったが、重い100号以上のオモリをつけた仕掛けを、100メーター以上の深さから巻き上げるのはたいへんだった。とくに50センチ以上のスケソーが2本もかかると重さはたいへんなものであったことをおぼえている。そして船上で風をうけると強烈に寒いので、船が走るときには釣り客はキャビンにはいるのだが、外の景色は見えない。そこで帰りは操舵室の後ろのくぼみに横たわって、寒風をよけながら、右手をすぎていく牡鹿半島を見ていた。あのときの牡鹿半島と金華山に再会したいのだ。

 松島の手前から混雑がひどくなった。道も狭くてすりぬけに苦労して松島につくと、さすがに日本三景である。ものすごい人だ。観光客が歩道からあふれそうになっていて、駐車場はどこもいっぱいで、車が右往左往している。風景はともかくこの人ごみの写真をとろうかと思ったが、やめて奥松島へ逃げ込むことにした。

 ボンさんが奥松島にいったなら、焼き牡蠣をたべてみて、と昨夜と今朝教えてくれた。松島のすぐ先の磯崎で焼いていたのだが、もっと奥だろうとすすんでいく。すると周囲にたくさん雪がのこりだして、濡れた路面が氷っているようで注意していった。

 

 田にのこる雪

 

 奥松島にむかっていくが期待していた景色はたいしたことはない。松島とはくらべるべくもないものだ。それでもこの先に景勝地があるのではなかろうかといってみるが、最奥部の月浜、大浜まで行ってみてもふつうの浜があるだけで、焼き牡蠣もみつけられずに引き返す。途中にあった壮観(大高森展望台)にのぼってみると、ここでようやく奥松島という名にふさわしい景色を眼にすることができた。

 

 壮観からの風景

 

 海沿いの道には牡蠣の直売所が点在している。牡蠣を送りたいと思っていたので、松島の手前、磯崎漁協の案内を見て立ち寄ることにした。牡蠣の食堂もやっているとのことでいってみると、漁協の事務所が売店になっていて、およそ直販所らしくないが、牡蠣は格安だ。加熱用の殻つきが20個で1000円、生食用のむき牡蠣は500グラムで1200円である。殻つき牡蠣を40個2000円と生食用1200円を発送したが、送料箱代込みで4650円であった。

 漁協の経営する食堂にまわると、観光客が順番待ちをしていて、いつになったら席につけるのかわからない状態だ。待つのは苦手だし、大混雑の店内でひとりで食事をするのも嫌である。大人数ならこういうところもよいのだろうが、ひとりでは落ち着いた店でゆっくりしたいではないか。漁協の店は諦めて、道路沿いで炭焼きをしている店をのぞいてみるが、ここもひとりで食べるところではないとおもわれ、入らなかった。

 時間は12時40分となったので牡鹿半島と金華山は次の機会にたずねることにして、天神岬にもどることにする。仙台にもどっていくが、けっきょく食事にはいったのはチェーン店の味の時計台で、ここでラーメンと半チャーハンを食べたのは13時30分だった。

 R4からR6へと来た道をもどっていく。みんなが食事にいったと思われる景勝地の松川浦を見ていきたいので、相馬からR113で太平洋にむかう。松川浦漁港にでると松川浦大橋がかかっている。この橋をわたって、海と松川浦にはさまれた、砂州のような大洲松川浦ラインにでた。左は海、右は小島が点在する松川浦である。パーキングがあったのでバイクをとめると、松川浦に夕陽が斜めにかかり、黄色のフィルターがかかったような、晩秋の色であった。

 

 松川浦にて

 

 富岡町のヨークベニマルで食料と酒を手にいれ、またしても暮れてしまった17時過ぎにキャンプ場にもどった。みなさんは夜の宴会の用意をしていて、昼食はやはり松川浦にでかけたとのこと。ともさん以外の全員が朝から飲んでしまい、ともさんが犠牲となって酒を我慢し、北野さんの車を運転していったそうだ。北野さんは松川浦にむかう車中でヨッパライダーになりきり、ともさんにからみつづけ、帰りの途中で撃沈し、今も車のなかで寝ているとのこと。さらに北野さんは松川浦でツマミとビールだけオーダーしたが、食べるものがなくなると、ともさんの料理を横からつまんでいたらしい。ヨッパライダー、恐るべし。

 まず風呂にはいることにした。きのうは飲んでしまって入浴しなかったので、とにかくひと風呂あびたい。500円の料金で隣接する温泉につかりサッパリした。ここは湯もよいし、露天もミストサウナもある、よいところである。

 くっしーさんはまた凝ったダッジオーブン料理をされていた。キャベツと挽き肉を交互にしきつめて、ミルフィーユのようにしたものを焼いていく。斬新なアイデアなのでネタ元をたずねると道楽館とのことだった。私はまた刺身だ。カツオと水タコと、松島産の生食用牡蠣である。奥松島で牡蠣を食べそこなったのだが、スーパーに松島産の牡蠣があったのですかさず求めてきたのだ。くわえてししゃもとふぐの干物である。ししゃもは安いのに大人気ですぐになくなってしまい、あとはまぁさんが置いていってくれたホルモンをいただいた。

 

 牡蠣と刺身

  

 ロストさんは木戸川渓谷の林道ツーリングをされたそうだ。滝を見にいかれたとのこと。私も木戸川の林道は気になっていたのでようすをお聞きすると、フラットで走りやすいとのことだった。

 まぁさんご夫妻と小坊主さん、ボンさんとゆうじ♪さんは帰られた。今日となりで飲むのはともさんだ。ともさんの夏のツーレポ、『南信迷走』にものすごい山のなかのキャンプ場がでてきて、気になっていたのでどこにあるのか聞くと、レポには書かなかったが、あそこはおかしい、絶対でます、とのこと。夜中に、妙な動物のような、そうでないような鳴き声がつづいて、眠れなかったそうだ。それを聞いてここにいくのはやめた。そしてしばし怪談話になる。私の2005年の北海道ツーレポにでてくる、土砂降りの阿寒縦断道路で消えてしまった若い女性の話など(興味のある方のそちらをどうぞ)。

 

 ししゃもとふぐの干物 その先にあるのはくっしーさんのキャベツと挽き肉のはさみ焼き

 

 別のグループで来ていたMakishoさんと黒木さんが飲みにこられたので、北野さんを起こすと、すぐにヨッパライダーとして復活した。逆にやまちゃんは元気がない。どうしたのかと思ったら、朝から飲みつづけているし、北野さんみたいに寝ていないから疲れてしまったとのこと。それはそうだろう。

 また盛りあがっていくと、Nagaさんが刀で登場した。私は初対面だったが人当たりのよい方で、すぐに打ち解けて飲んでいく。Nagaさんが酒を飲むのに使っているのは、スズキ純正の湯呑み茶碗である。スズキ乗りのあいだではよく知られているこの湯呑みは、寿司屋のもののように魚の名前が漢字で書いてあるのだ。鱸(すずき)、と。

 調子よく飲んでいたが、疲れていたのか10時くらいには酔ってしまった。そこでまた静かにパビリオンをでて、テントにはいって寝てしまったが、元気な方はまた1時30分まで飲んでいたそうだ。

                                                             332キロ

 

 

 

 パビリオンを皆で撤収

 

 11月25日。朝の6時50分。突然大音響の音楽がかかった。サンタナのブラック・マジック・ウーマンである。何が起こったのかわからなかったが、すぐ隣の広場で音楽はなりだし、つづいて、テスト、マイクテスト、フッ、フッ、フッ! ハッ、ハッ、ハッ! と大声でしゃべりだす。ここにキャンプ場があるのを知らないのかと思っていると、音楽と放送はとつぜんやんだ。

 しばらくすると、東屋から女性の声が聞こえてくる。朝早くからうるさくて、あんまりにも非常識だから、文句を言ってやった、と語っている。一応音楽を鳴らしている人間の顔を見て、苦情を言っても大丈夫な男だと踏んでから、キャンプ場がそこにあって、寝ている人がいる! とやっつけてやったと言う。すごい女傑だと思っていると、carrotさんでした。

 もう寝ていられなくて起きだしたが、キャンプ場から、その奥のオートキャンプ場、さらには宿泊施設のほうまで音はとどいたのではなかろうか。ウォーキングの大会だそうだが、あまりにも周囲に配慮を欠いた運営だ。みなさんも起きてきて文句を言いながらパビリオンのなかで朝食となった。北野さんにホットサンドをご馳走になるが、北野さんまたビールを飲んでいる。危険だ。また1日が飲んで終わるコースにはいっている。しかしさすがに今日はつきあう人はいない。macさんに芋煮をカレーうどんにチューンした料理をいただいてお腹はいっぱいになった。

 ビールでご機嫌になった北野さんに、今年の北海道ツーレポで気になっていたことを申し上げる。永久ライダーがシティー・ホテルになんか泊まっちゃダメじゃないですか、と。しかも、シティー・ホテルに滞在するのが何気に好きだったりする、と書いてしまっては、イメージが壊れてしまう、と。だって暑かったんですよ、とおっしゃるからガックリしたが、さらに読者代表として、タンデム・シートは指定席なのに、道楽館で女性とタンデムしていましたよね、と核心をつく。しかも昼飯をご馳走になんかなっているのは、いかにもまずいです、と。北野さんビールをグビグビと飲んでおられた。

 9時過ぎにウォーキングの大会はいよいよはじまって、教育長が挨拶をしている。そしてカウント・ダウンしてウォーキングに出発していった。ゆっくりと撤収にかかるが、北野さんはヨッパライダーとなっておなじことを何度も繰り返していた。

 Nagaさんの刀は1987年製とのこと。私のDRよりも古いからうれしくなるが、維持するのはいろいろと苦労されているとのこと。想像がつくが、惚れこんだバイクだからずっと乗られていくのだろう。ところで昨夜Nagaさんは炊事場で撃沈していたのとこと。黒木さんたちのグループに、寝ている人がいますよと教えられて救出され、その後いちさんのテントでシュラフにも入らずに寝ていたとか。かなり冷え込みましたが。大丈夫でしたか? Nagaさんはこの手のさまざまな伝説の持ち主らしい。 

 パビリオンはみなさんで撤収していく。macさんの莫大な装備は往復とも宅急便で送られるとのことで、その負担を考えると誠に申し訳なく、感謝にたえなかった。みなさん順調に撤収していくが、北野さんだけ飲んでいて、準備がすすまない。今度はNagaさんにおなじことを何度も言っている。そこでみんなで北野さんの荷物を強制撤収する。バックに装備を一気に詰め込んで車に運び込み、一瞬で片づけてしまった。

 最後に風呂にはいってからみんなで昼食をとり、帰ろうかと思っていたが、すぐに出たほうが混まないとのことで、出発することにした。北野さんは酒を完全にぬいてから帰路についたのは言うまでもない。

 

 朝の集合写真

 

 天神岬のすぐ近くには、サッカーのナショナル・トレーニング・センターのJビレッジがある。ここに来るたびに見学したいと思っていたので立ち寄ってみた。敷地にはいっていくと巨大な宿泊施設があり、その奥に何面ものサッカー場がある。ここで日本代表もWカップ前に合宿をしていたのだ。ホールやサッカー場の横を散策して満足した。

   

 Jビレッジのホールからサッカー場をのぞむ 素晴らしい施設だ 

 

 6号線を南下していく。このままいくと日立の街にかかるが、ここはいつも渋滞していているので、適当なところで茨城の内陸にはいって、混雑をさけつつ自宅にむかいたい。しかしひとつ問題があった。荷物をなるべく少なくしたかったので、東北の地図は持ってきたのだが、関東の地図は持参しなかったのだ。茨城の土地勘はないから、よほど大きな街の案内表示がないと、内陸にむかっても道がわからなくなってしまう恐れがあるのだった。

 高萩で『花貫渓谷と太子』と案内表示がでていたので、ここから太子までいくこととした。花貫渓谷は紅葉の名所らしく観光客がたくさんいた。たしかくっしーさんのレポートで読んだことがあると思いつつ、山道をぬけていく。車は通行止めになっているようで、紅葉狩りの人たちは歩いていたが、それだけきれいなところなのだろう。

 国道349号線にでると里美で案山子祭りをやっていた。藁でつくった大きな案山子が見えたので急停止をして見学していく。案山子はかなり手が込んでいて、感心させられる出来栄えである。ユニークな催しだと思うが、知名度がないのは残念なほどだ。そのうち人気がでるのかもしれない。

 

 里美町の案山子祭り 立ち寄らずにはいられない

 大きな鬼太郎や、

 

 

 こんなのもあり、

 

 

 これがグランプリだそうだ。

 その後、恐れていたとおり道に迷い、奥久慈を迷走するが、なんとか喜連川から氏家と初日に北上したルートにたどりついて、無事帰還した。

                                             310キロ   総走行距離1188キロ

 

 

 

                    バイク・ツーリング・トップ