坊ちゃん忍者幕末見聞録 奥泉光 中央公論新社 2001年 1800円+税

 幕末の京都を舞台にしたドタバタ喜劇である。

 庄内藩の貧しい武家の若者が、金持ちの友人のお供をして、幕末の尊皇攘夷派や開国派、新撰組などが入り乱れていた京都に遊学し、様々な事件に巻き込まれていく物語である。

 金持ちの友人は放蕩者で怠け者で、その上卑怯者である。すぐに主人公を裏切るのだ。そしてもうひとり、堅物の頑固者の友達が加わって、新撰組の面々や、長州、薩摩、土佐の志士たちと関わりあっていく。

 主人公の家は忍者の家系で忍術を使うのだが、これがよく考えられた忍術で、よいアクセントになっている。忍者なのに徹頭徹尾カッコよいことはなく、スカッとすることもなく、ただただ面白くストーリーは展開するのだ。

 タイトルにあるように、漱石の坊ちゃん、のような作品を書きたいと思って作り上げた作品だそうだ。坊ちゃんとは似ても似つかない内容だが、楽しく読めるエンターテイメントである。続編の含みもあるので、そのうち発表されるのかもしれない。

 

 

 

 

 

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