灰色の輝ける贈り物 アリステア・マクラウド 新潮クレストブック 1900円+税

 心にしみる短編集。

 新潮クレストブックは水準の高い作品で構成されているが、本書も期待にたがわない名品である。

 作者はカナダの名手だというが寡作の人で、31年間で短編16作とのこと。そのうちの8編がおさめられている。残りの8作をあつめた本も出版されているようだ。

 カナダの片田舎ケープ・ブレトン島を舞台に、炭鉱夫の家庭や漁師の一家、またはそれらの家をでて都会に去った子供や孫との関わりあいがえがかれている。テーマは古典的な人生の悲哀である。昔から何度も書かれてきた普遍的なテーマを、ストーリーをひねったり、ウイットをきかせたりと凝った構成にすることなく、正統派の手法で、堅牢に書きあげている作品集だ。

 どの作品も実に丁寧に書かれており、訳もよい。作者はこの島に生まれて炭鉱夫や漁師、木こりなどの仕事をしながら苦学して大学にすすみ、大学教師になったとのこと。作者の真摯な生き方、誠実さ、相手を思いやる心が、登場人物たちに投影されている。

 書かれた年代順にならべられているので、後半になるほど作品は深みを増す。そして読み終えるとしばらく動けない読後感である。

 そっと本をおいて眼をとじた。

 

 

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