緋文字 ホーソン 岩波文庫 価格不明

 古典としての役割も終えた作品。

 現代日本とはまったく価値観のちがう世界をえがいた、事実にもとづく小説である。

 17世紀の殖民が開始されたばかりのころのアメリカ、ボストンが舞台である。新大陸にわたってきた清教徒たちは、非常にきびしい倫理観をもっていた。

 本書でテーマとなるのは姦通罪であり、不倫と称される行為についての物語である。長く海外に赴任している夫を持つ婦人が妊娠したことにより、姦通罪が露見し彼女は罪に問われ、その罰として恥じのしるしの『A』という赤い文字、緋文字を一生胸につけて生きなければならなくなるのである。人間性を踏みにじるような処罰だが、姦通罪はそれだけ許しがたい犯罪だったのだろう。

 胸に緋文字をつけた主人公と長年不在だった彼女の夫、そして不倫相手とのあいだで小説は展開する。宗教的な罪悪感や道徳観にしめつけられて、非常に胸苦しいドラマである。

 原題は『ザ・スカーレット・レター』だ。スカーレット色の文字、緋文字。

 古典に触れたい人が教養として読めばよい本。