私のベスト・セレクション

 当サイトは文学をコンテンツとしてとりあげているが、本の好みは千差万別である。人気のあるミステリーや歴史小説から、いまや死語と言われるほど凋落した純文学まで。

 放浪のページはその瀕死の純文学サイトを標榜しているが、人気がなくなったとはいえ純文の世界にも多様な作家とジャンルがあるので、私の嗜好する作品を掲げることは、来訪者の便宜をはかるうえで有効だと思われる。

 なんとなれば、好みが違えばすみやかに退出できるから。(すぐには帰らないで! 少しはのぞいていってください。ただでさえ文学コーナーの来訪者は少ないので)

 私の評価する小説の基準は昔から変わらないが、それは純文学好きな方とおなじだと思う。

 まず第一は内容が魂を揺さぶられるようなものであるということ。悲しい話でも、怒りにふるえるものであっても、辛くとも、愉快なものでもかまわない。いかなるものでもよいのだが、ただ面白いもの、単に楽しいだけのものは論外で、日常生活では感じることのない、感情の奥底にあるものを意識させられる、人間存在の本質にせまるような小説を好む。

 第二は感性である。純文学は芸術であるので、表現が詩的であったり、全体の構成や手法が斬新だったり、また作品を通底する感性が繊細で文学的であるものなどを好む。おおまかにいって、この基準では読み手の美意識に訴えてくるものを評価する。

 内容と感性、形式や美意識を基準とするわけだが、文字にするとまことに抽象的である。具体的には私のベストを見ていただければ一目瞭然であろう。

 1 ジャン・クリストフ         ロマン・ロラン
 2 ベートーベン研究         ロマン・ロラン
 
3位以下順位なし
 
 アンネの日記              アンネ・フランク
 荒野の狼                ヘルマン・ヘッセ
 限りなく透明に近いブルー      村上 龍
 アンナ・カレーニナ           トルストイ
 雪国                   川端 康成
 フラニーとゾーイー           J・D・サリンジャー
 黒い雨                  井伏 鱒二
 野に降る星(一冊えらべばこれか) 丸山 健二
 午後の曳航               三島 由紀夫
 JUSAN(13)             古川 日出男
 台風の眼                日野 啓三
 巨人と玩具               開高 健

 1位と2位は即座にあげることができる。それぞれが私にとって特別な存在だ。ベスト2の『ベートーベン研究』だけは小説ではない。この本は『ロマン・ロラン全集』にだけ収録されているので、一般の書店で一冊の本として売られてはいない。興味のある方は図書館で探してみていただければと思う。内容はベートーベンの楽曲の解釈である。作品がつくられた時期とベートーベンの人生をかさねあわせて、メロディーや構成がいかなる感情をあらわしたものかを考証した、三冊の大部の論文である。ロマン・ロランがライフワークとして取り組んだ評論で、ロラン渾身の書である。
 ほかの本は書店で容易に得られるものばかりだ。

 

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