札幌の仇を池袋でうつ

 

 2004年に北海道をPキャンで旅した際、札幌の有名店『すみれ』でラーメンを食べたいと思った。札幌に著名店は多いが、すみれの知名度はほかの店を凌駕している。北海道でしか食べられないのだから、是非味を見てみたいと思ったのだ。

 19時に小樽をでて札樽道で札幌につき、住所と大雑把な地図をたよりにすみれにむかった。ところが北海道の地番表示は独特で、駅や国道を基準にして、北一条とか西十二条など、東西南北や地名で縦横の一点をしめすもの。慣れればすぐそこへ行けるのだろうが、ふだん使っている首都圏の番地表示、すなわち日本の標準的な表示法とシステムがちがうため、地図の視覚的な認識と、番地表示のメカニズムが一致せず、混乱してしまった。じつは混乱は2001年のバイクのときにつづいて二度目だ。

 それでも旧北海道庁の前を通り、大通り公園をぬけて中島公園もすぎ、ごく近くまで行ったのだが、一方通行もあって思うように進めず、グルグルとおなじところを走りまわって、どうしてもたどりつけなかった。閉店時間の21時が迫って諦めてしまった。

 バイクや車で旅する者として、行こうとしてたどりつけなかったというのは非常に屈辱的であり、かつてなかったことである。食べたかったラーメンに未練も残り、機会があれば必ず征服してやろうと心を固めていた。次に札幌にいったら必ず討ち果たしてやろうと(大袈裟だ)。

 そんな時会社の後輩が、池袋で美味いラーメンを食べてきたという。聞いてみるとこれが札幌の『すみれ』で、東武百貨店に出店しているというのだ。これは見すごすわけにはまいらぬと、さっそく次の日に駆けつけた。

 夏の北海道物産展にでも出店しているのかと思ったらさにあらず、12階のレストラン街に、『諸国ラーメン探訪区』の常設テナントとして出店していた。ここは全国の有名ラーメン店が順次お店をだしているスペースで、今回はすみれが選ばれたのだった。

 さっそく一年越しのラーメンを注文した。たのんだのは味噌ラーメン900円。ほかのメニューは正油と塩が800円。ちなみに札幌では味噌ラーメン750円なので、出店料などのコストが上乗せされている。ほとんどの客は味噌を注文していた。

 相席になったテーブルにラーメンが運ばれて、食べてみると美味しい。ラードがたっぷりと使われていて、非常に熱く、濃厚な味。めんは何が練りこまれているのかわからないが、透明感のあるもちもちめんだ。なぜか細かくきざんであるチャーシューも、メンマも美味。全体に甘い感じがするうま味がでているのもよい。

 行列ができるのもうなずけるが、私は二度目は行かない。味は特上の部類にはいるが、地元価格の750円で考えても高い感じがする。ほかにもっと安くて美味い店があるのではなかろうか。少なくとも都内にはある。そして油好き私にもラードがきつすぎる。

 いずれにしても札幌の仇はうった。しかし都内で北海道のラーメンが食べられるのである。幸せだ。

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