2012年 北海道ツーリング 4日目 林道と秘湯三昧

 

 バイク・自転車サイトとその先に和琴半島 

 

 5時に起床した。カラスが夜明けの4時半頃から騒ぎだし、うるさくて寝ていられない。でも他のキャンパーはほとんど起きてこないのは、彼らはまだ若いからだろう。若いと眠りが深いからね。冷麦を茹でて朝食とする。士幌のスーパーで買ったもので、一袋280グラムの半分を今日の朝飯とした。冷麦はさっぱりしていて美味しく、何より安いから大満足だ。

 5時55分から和琴半島を一周する遊歩道にいく。2005年にもまわっているのだが細かいことは忘れてしまった。ただ森が深くて熊がでそうだと思ったことを覚えていたので、熊鈴を首からさげていった。 

 

 湖から湯がわいている和琴半島

 

 散策路はハイキング・コースのように起伏のある道だった。そういえばこうだったと思い出し、やって来たことを後悔する。それでも進んでいくと温泉のわく火山の島だけに、湖のあちこちから煙がふきだしていた。マニアが入る秘湯もあるようだが私はそこまではやらない。またここはミンミンゼミの北限の地だ。火山で地熱が高いため、寒冷な北海道でも生息できるのである。そのミンミンゼミは半島の先端部で2匹が声をあげていた。

 2.4キロの探勝路を歩いて6時50分にキャンプ場にもどった。きつかったし、疲れたからもう行くことはない。今日は周辺の林道を走って連泊するつもりなので、レストハウスで手続きをする。7時30分に出発するが、他のキャンパーはまだ支度中だった。

 今日も晴れている。弟子屈にむかうがツーリング中は夢のような毎日だ。朝おきて林道ツーリングをし、好きなものを食べ、夜はキャンプをして酒をのむ。これを一週間もできるなんてなんて幸せなんだろうと思う。そしてこんなことを毎年繰り返しているのだ。真面目に毎日をすごしているご褒美だが、家庭と職場に感謝しないといけないと思う。

 多和平の手前から霧がわきだした。この辺りは霧の多いところだが、開陽台方向に道道885号線に入ってゆくと晴れてくれた。霧の中は寒いが晴れるとちょうどよい。2005年に走ろうとしたが、入口がわからずに断念した虹別林道にむかう。2005年版のTMには林道入口の目印が記載されていないが、2007年版には「志穂牧場」「ふ化場」とでていてわかりやすい。現地には「西別岳登山口」の看板もあるから、行けばすぐにわかるはずだ。

 

 虹別林道の入口

 

 志穂牧場からふ化場方向にすすむと、ふ化場からダートがはじまり、その先に虹別林道の看板がたっている。それが上の画像だ。ここで写真をとっているとエンジンはアイドリングせずにストールしてしまい、またかよ、とガッカリしてしまった。

 朝一番の林道なので緊張してゆく。もちろん熊を警戒してだ。8時10分にスタートし、全長13.5キロと表示されている虹別林道をいくが、走りやすいし車の通行量も多いことがわかる。すすむと工事現場があり、重機がうごいているからヒグマの心配はなくなった。

 

 西別岳の登山口

 

 走りやすいダートを飛ばしてゆく。TMには、アップダウンを繰り返すストレート・ダート、と書いてあるが連続して小山を上ったり下ったりしていくような独特の地形だ。8時25分に西別岳の登山口に到着する。広い駐車場がありロッヂがたっている。こんなに立派な建物があると思っていなかったから驚いた。駐車場には車が4台とまっていて、4人の中年男女が登山の準備をしている。登山道の案内がでているので見てみると、頂上まで3.2キロとのこと。それなら私にも行けるかなと思うが、その次に熊鈴と熊撃退スプレーを持参とあり、やはりそんなところに行くのはご免だと思う。ここも暑かった。山の上の登山口まで蒸し暑いとは、今年の北海道はほんとうにどうかしている。

 登山口から下ってゆくと道道150号線にでる直前にボンベツ林道の分岐があった。このまま虹別林道をゆく予定だったが、ボンベツ林道は5.6キロとでているので、行きがけの駄賃だとばかりに走り散らしてゆくことにする。しかし甘く見たらしっぺ返しが待っていた。ボンベツ林道は玉ジャリが敷きつめられていてとても走りづらいのだ。そのため早々に断念してUターンする破目になった。玉ジャリ、深ジャリは苦手なのだ。特に深ジャリはトラウマになっていて、今回の旅の後半でそれを克服したいと思っていた。

 

 虹別林道 後半部

 

 あらためて虹別林道をすすむとすぐに舗装路の道道150号線にでた。時刻は8時45分なので、西別岳の登山口から15分、林道の入口からは30分ほどの時間がかかったことになる。虹別林道は道道150号線をまたいで、更に11.5キロ伸びている。ゲートはあるが開いていた。この先はアップ・ダウンがきつくなり、険しく、浮きジャリもある路面だった。

 虹別林道を走りきり、養老牛温泉の北、道道505号線にでた。道道505号線はジャリダートを舗装している工事中だった。この近くにからまつの湯があるはずなのだが、どこにあるのかわからない。道道をわたった先に細い道があるが、すすむとT字路になり、右は行き止まりで、左には廃工場のようなものがあるので、ここではないと判断した。

 地図を見ていると首にタオルを巻いた青年が札幌ナンバーのセダンでやってきて、廃工場の方に入っていった。TMを見てもわからないので養老牛方向にいってみる。しかしからまつの湯は沢沿いにあるはずなのに離れてゆくから、方向がちがうと判断してUターンした。そこでさっきの青年のことを思い出す。青年は風呂に行くから首にタオルを巻いていたのではないか。あの、何もなさそうな廃工場の奥に、からまつの湯はあるのではないか。さっそく行ってみるとすぐにからまつの湯はあったのだった。

 

 からまつの湯

 

 からまつの湯は透きとおった温泉だった。沢沿いに石を積んでつくった素朴な野湯だ。湯につかっていた青年に声をかけて私も入らせてもらう。湯は熱い。青年は30くらいの人だ。都内出身だが現在は中国に勤務しているとのこと。彼は若いころにオンロード・バイクで北海道ツーリングをしたことがあるそうだ。そうでなければこんな秘湯にやってこないよね。昨夜、中標津空港についてレンタカーを借り、深夜の1時まで移動して車中泊したとのこと。私と肌のあう人だった。

 彼は以前にもからまつの湯に来たことがあるそうだ。その時はジャリ道がもっと長かったとのこと。そして私がこれから行くつもりの、川北の湯に入ってきたところだと言うので、ようすを聞いてみた。彼によると国道の入口はわかりやすく、路面は車かオフロード・バイクしか走れないジャリ道とのこと。入口から5キロほどの距離で、林道には1キロごとに案内がでているそうだ。湯は白濁したよい温泉とのことだった。

 私は虹別林道を走ってきたことを話した。13.5キロと11.5キロの合計25キロの林道が摩周湖の南からここまでのびていて、私は林道ツーリングをするために北海道に来たこと。その途中にある秘湯につかっていること。休暇は5日間で前後の土日をつけて9日間の日程であること。彼の旅は3日間だそうで、その間は野天湯ばかりをまわるのだそうだ。

 車の彼が先に出発した。遅れて走りだすと養老牛方向にダートをゆっくりすすむ彼がいたので手を上げてぬいた。しかし次は「牛」と書かれた山、モアン山に行きたいと思っていて、その方向がちがうことに気づいて止まると、また彼にぬかれたのだった。

 

 モアン山 山の左に牛と書かれている

 

 モアン山は逆方向だった。来た道をもどってからまつの湯の先にゆく。すすんでゆくと「牛」と書かれた山が見えてくる。京都の大文字焼きのように、緑の山に牛の字のところだけ草が刈られているのだ。モアン山は開陽台にむかう道道885号線からもよく見える山である。牛の字がよく見えるところまで近づいて写真をとり、また養老牛方向にもどっていった。

 ここまで来たら開陽台に寄らないわけにはいかない。すぐ近くなのだ。今年の開陽台は晴れていて根釧台地がよく見えた。昨年は熊の出没で閉鎖されていたキャンプ場もオープンしていて、テントがひとつたっている。展望台から四方を見下ろして、地球が丸く見える、と書かれたモニュメントといっしょに写真をとった。

 駐車場にもどると北関東ナンバーのハーレーFLHの年配の紳士がいて、バスの運転手と話をしていた。2週間の予定でホテルに泊まって北海道をまわっているそうだが、昔はーー25年位前ーーこんな上品な人はハーレーに乗っていなかったし、宿を利用するライダーが開陽台に来ることもなかった。バイクに乗っているのは金銭的な成功者であってもアウトローばかりだったし、開陽台にやってくるのは金のない野宿ライダーと決まっていた。それが年月がながれ、ライダーは高齢化し、品がよくなり、私も年をとったのだ。

 

 北19号線

 

 直線路が人気の北19号線で写真をとる。BMWのタンデム・ライダーや若者もいたのでにぎやかな画像をとることができた。この真っ直ぐな北19号線をゆく。晴れると暑く、曇ると涼しい。どこまでも伸びる道路。左右に広がる牧草地。どこにも見えない人と車。道東のこの空間にいることがとても心地よかった。

 川北の湯にむかう。北19号線の先の道道975号線から川北の湯につづく笹の沢林道に入っていけるのだが、その入口がわからないから国道244号線にでて、こちら側からの入口をさがす。国道からの入口には大きな看板がでているからすぐにわかった。温泉まで5キロと表示されている。看板の横には荷物を満載した関西ナンバーのセローがとまっているが、ライダーはいない。その人はダート走行を避けて、車に便乗させてもらったのだろうか。

 温泉につづく林道は走りやすいフラット・ダートだ。からまつの湯で会った青年が教えてくれたとおり、1キロごとにあと何キロと案内がでている。最後の1キロだけ荒れていてきびしい路面だったが、オンロード・バイクでもゆけると思う。

 

 川北の湯

 

 川北の湯につくとちょうど車が1台帰っていった。セローのライダーはこの乗用車に乗っていただろうか。駐車場には車が2台とキャンピング・トレーラーが1台とまっている。温泉にいくと老人と青年がいたので、私も仲間に入れてもらった。からまつの湯で会った青年の言っていたとおり、川北の湯は白濁した温泉だ。入ってみると熱い。沢の水をホースで引き込んで湯温を下げるようになっており、老人がそのホースの近くの熱くない場所をゆずってくれた。

 沢の水でうめているが元々熱い温泉なので長くつかっていられない。湯からあがると日差しは強く、日向は暑い。日陰で体を冷ましながら青年と話をすると、彼は札幌の人だが数年前まで東京勤務をしていたそうで、その勤務地や彼が住んでいた地域は、私もよく知っているところだった。

 青年はこの辺りの秘湯に詳しかった。これから行こうと思っている薫別の湯についてたずねてみると、林道は土砂崩れで何年も前から通行止めになっているとのこと。これは耳よりな情報を聞くことができた。行けないとわかっていれば、無駄な時間や労力を使わずにすむからである。

 老人が風呂からあがり、青年もつづいた。山の中にひとりで残るのは嫌なので私も切り上げることにする。青年がレガシーで出発したが、まだ車がのこっているので見にいってみると、車中で年配の夫婦が休んでいた。ここは他の野湯とちがって男女別になっているから、女性も利用しやすいところだ。ボットンだがトイレがあるのも便利である。

 

 滝の沢支線林道の入口 ゲートは開いているが通行止めの表示

 

 通行止めと聞いたが林道の入口が見たいので、薫別の湯につづく滝の沢支線林道にゆく。林道は金山スキー場からはじまる。ゲートは開いていたが通行止めと書いてあった。TMと林道の名前がちがっていて、金山薫別林道となっているが、ここから土砂崩れの現場まで行けるのだろうか。いずれにしても通行禁止だから無理に入らない。マナーが悪いとか、ルールを守れなどと注意されるのは真っ平だし、それに逆切れして怒鳴り返したりするのは、ものすごく格好悪いから。

 昼時となったので行ってみたいレストラン・リストを見た。しかしこの近くの店はリスト・アップされていない。それでも何年も前にTMに書き込んでおいたメモがあった。中標津のレストラン河亭、と。私は常々自分のはらった労力を無駄にしたくないと思っているし、この店がよいと感じたときの自身の嗅覚を信じているから、ここに行くことにした。

 国道244号線から道道774号線に入る。オリジナル・フラッグありとTMに書かれているホクレンで給油をした。23.9K/L。148円。フラッグは残念ながら品切れとのこと。しかし私のTMは2007年版だから、オリジナル・フラッグはもうあつかってないのかもしれない。

 河亭は中標津のメインストリート沿い、町の中心にあった。建物は年季の入った風格のあるものだ。入口には料理のサンプルがならんでいてどれにするか迷うが、私のメモにはステーキ、ビーフシチュー、中標津牛、とあったのでビーフシチューにすることにした。じっさいにはお得なランチがあったので、ビーフシチュー・ランチ1365円だ。

 

  ビーフシチュー・ランチ コーヒーがつく

 

 料理は5分ほどで提供された。この手際のよさはポイントが高い。貧乏性の私は待たされるのが嫌いなのである。ビーフシチューは見るからに美味しそうだ。さっそく食べてみると一口目はかなりうまい。濃い味つけなので、食べすすめてゆくと、くどく感じるがレベルは高かった。

 料理には満足したが、後から入ってきた男ふたりが、私の隣りの席にすわり、タバコを吸いだしたのには閉口した。ここは食堂で喫煙するのが当り前の土地なのかもしれないが、時代は嫌煙、禁煙である。ランチ・タイムくらいは禁煙にすべきである。せっかくのランチが台無しになってしまった。

 河亭をでると暑い。またしても日差しは強く、ジリジリと肌を焼き、汗がでる。距離はあるが足寄峠にある3本の林道を走りにゆこうと思う。時間的にきびしいが、今日走破してしまえば効率がよいと考えたのだ。ただ夕刻になると熊に会う確率が高まるから、遅くなったらやめるつもりだった。

 道道13号線から国道243号線とつないで弟子屈にむかっていくと、多和平の看板があらわれた。林道に行くつもりだったが多和平には寄ってゆきたい。時間がなくなったら林道は明日にすればよいのだ。

 

 多和平

 

 多和平について展望台にのぼっていく。一帯は芝生が張られていて、キャンプ場になっている。景色はよいがトイレは売店の横にしかないし、気持ちよく野営しようとして丘の上までゆくほど、荷物を苦労して運ばなければならないから、私は利用する気になれない。しかし見晴らしはすばらしい。開陽台よりも広く、遠くまでながめることができる。これだけひらけていると、気持ちも清々した。

 急いで足寄峠に行くことにするが、信号待ちでとまるとエンジンから焦げ臭いにおいがする。私のバイクは古いので、エンジン・オイルが減ってしまうのだ。オイル上がりを起こしていて、オイルがガソリンと一緒に燃えてしまっている。これをオイルを食う、と言うのだが、エンジン・オイルが少なくなるとエンジンが過熱して焦げ臭くなってしまうのだ。点検してみると、オイル量はロー・レベルを下回っているから補給しなければならない。こうなることはわかっているから、ワコーズのオイルを持参している。足寄峠にいくのはやめて、和琴にもどりオイルを補充することにした。

 弟子屈をぬけて和琴にむかうと摩周メロンの店があった。農協のやっている直販所だ。ここから土産を送ることにする。2Lのメロン3個を都内に送って6100円だった。

 和琴にもどりオイルの補給をする。オイル缶から直接エンジン・オイルを注ぐことはできないので、500mlのペットボトルを切って注ぎ口をつくり、それを使って補充する。1リットルのオイルを入れるとオイル量はハイ・レベルを回復した。

 作業しているとホンダ・ゴールドウイングのサイドカーがやってきた。このGLのサイドカーは見たことがある。昨年、美深アイランドで会った人だ。あの日は朝から林道ツーリングにゆき、昼すぎに美深アイランドにもどってきて、他のキャンプ場に移動しようとしていた。そのとき隣りにやってきたのがこの人で、話しかけられたのだが、貧乏性で気が急いていた私は、会話にのらないで早々に出発したのだ。

 サイドカー氏は私のことは覚えていないようだ。よほど話しかけようかと思ったが、まだ次の予定をこなす時間はあるし、夜にいくらでも会話できるだろうと考え、会釈だけしておいた。一方で近くにテントを張っているハーレー氏がのんびりと過ごしているのが眼につく。ハーレー氏はまわりのキャンパーの世話を焼いている人みたいだった。

 足寄峠にゆく時間はなくなったので、津別峠と美幌峠にのぼって景色を楽しむことにした。津別峠にのぼっていくと霧がわきだした。これでは風景は見えないなと思ったが、とにかく峠にむかう。道はコーナーの連続する気持ちのよいワインディング・ロードだ。カーブを次々にぬけていくが、自分で乗れているなと思う。毎日林道を走っているとほんとうに乗れてくるのだ。肩からコーナーに入り、コーナリング中はバイクをコントロールしきっている実感があった。

 

 霧の津別峠

 

 津別峠は思ったとおり霧で何も見えなかった。それでも峠を下っていくと霧が晴れ、屈斜路湖がのぞめるポイントがあった。つづいて美幌峠にすすむ。美幌峠への上りもコーナーを楽しんでいく。バイクを寝かし込んでタイヤのサイドを長くつかって走る。美幌峠も霧で何も見えないだろうと思っていたが、津別峠からわずかに離れただけなのに、こちらは晴れていた。屈斜路湖と中島、それに和琴半島がよく見えていた。

 

 美幌峠から屈斜路湖を見下ろす 真ん中が中島 右に和琴半島

 

 美幌峠は中国人が多い。中国人は自己中心的でうるさいから嫌いだ。写真をとってバイクの元にもどると関西ナンバーのジェベル氏がいる。ジェベル氏は私もいきたいと思っていた、別海ふれあいキャンプ場にむかうそうだ。時刻は17時で、100キロの距離があるから、日が暮れてしまうが行くとのこと。私も利用してみたかったが、時間がないので和琴にしたと彼に話した。ジェベル氏は私のDRを見て、650はパワーがあって羨ましいと言う。たしかに250は走っていてきびしいときがあるよね。

 ジェベル氏よりも先に走りだす。最後に屈斜路湖畔林道を走破することにする。夕暮れ時になって熊に会う確率は高まるが、もっと予定をこなしたいと思う貧乏性に負けたのだ。

 

 夕暮れの屈斜路湖畔林道

 

 17時すぎに林道にはいった。国道はまだ明るかったが、林道は森の中をゆくので薄暗くなっている。熊の不安を押し殺してすすんでゆく。入口には林道は14キロと書いてあったような気がしたが、じっさいはもっと長かった。

 林道は走りやすくガンガンと飛ばしていける。50キロから60キロで巡航した。暗くなった森では3度鹿に会った。一度は立派な角をもつ雄とほっそりした雌のペアだった。道に寝そべっているキツネもいた。こいつはお腹がいっぱいだったのかくつろいでいた。熊は気配さえなかった。ただ出会いたくないので、ブラインド・コーナーではクラクションを鳴らしていった。

 暮色が濃くなると焦りがつのる。ストレートがあるとアクセルを一気に開けてしまう。あまりにスピードを出しているので、落ち着かなくては危ないと思い、森が切れて明るくなったところに止まり、写真をとった。それが上の画像だ。 

 TMには22キロとあるがトータルで24キロ走って林道の出口についた。ホッとしてバイクをとめ、メモをつけるがエンジンはアイドリングせずにストールしてしまう。その後も書きものをつづけていると、森の中から、ガサッ、ガサッ、と動物の歩く音がするので、気味が悪くなってその場を立ち去った。

 キャンプ仲間のマサさんのおすすめとなっている川湯のレストラン、オーチャード・グラスで夕食にしようかと考える。ビーフシチューかハンバーグが美味しいと聞いていたので。しかし川湯はお祭りで交通規制がかかり、オーチャード・グラスの前を通ることはできなかった。

 摩周温泉のホクレンで給油をした。25.4K/L。144円。今日もスーパー・フクハラに入り、カツ丼を半額の199円でゲットした。刺身も50%オフの299円だ。それにサッポロ・クラシック。ほんとうは半額の花咲ガニに惹かれたのだが、カニは食べるのが面倒なのでやめておいた。

 テントにもどると隣りとの狭いスペースにW400のライダーがテントを張ってしまっていた。左右のテントとは5メートルほどの距離をとっており、右側には入られないように椅子を置いておいたのだが、左は対策をとっていなかった。しかし他に広いスペースがあるのに、どうして人のすぐ横に設営するのだろうか。その感覚が理解できない。そのWのライダーはテントの中にいるのか物音もしなかった。

 

 半額大好き

 

 テントの横の椅子にすわり刺身で飲みはじめる。蚊がうるさくよってくるから蚊取り線香をつけた。日中に2度露天風呂に入っているから入浴はもういいだろうと思う。夜になったら話しかけようと思っていたGLサイドカー氏はテントの中で本を読んでいるようだ。ハーレー氏は湖畔のジャリにはまった、若者のニンジャ250を引き出すのを手伝っている。ジャリが深いから気をつけろよ、と言いながら。

 刺身だけで腹がいっぱいになってしまった。それでもカツ丼をたべると美味しい。安いから肉は脂身ばかりかと思ったらさにあらず。しっかりした豚肉で味つけもよろしい。最近味わったカツ丼の中でいちばんだった。フクハラ、やるじゃないか。

 食事を終えるとテントに入りメモをつけつつ焼酎をやるが、カツ丼を食べたら酔いがまわらなくなってしまった。いつまでたっても眠くならない。そこで23時になって露天風呂にゆくことにした。

 

 昼の露天風呂

 

 ランプを提げて和琴半島の付け根にある無料の露天風呂に歩いてゆく。真っ暗な道には誰もいない。ひとりくらい風呂につかっているだろうと思ったが、いないので私の貸し切りだ。体を洗ってサッパリしたが、ひとりで漆黒の露天風呂にいるのは不気味で、早々にテントに引き上げた。

                                           382キロ