2016年トランポでゆく北海道ツーリング5日目
花咲ガニ
2 蟹とキャンプ場に失望
14時20分に花咲港にある大八食堂に到着したが、大雨でも営業していた。店内に客はいず、女将さんと娘さんのふたりがテーブル席に所作なげにすわっている。小上りにはここの主人なのか年配の男性が寝込んでいて、酒をのんで寝ているのかなと思った。
花咲ガニは店頭にならべてありその中からえらぶ。ひとりだからこのくらい、と女将さんが言うが、もっと大きなものをと別のカニにした。このカニは700グラムあり3450円とのこと。以前に食べたときにはもっと安かったから高いなと思ったが、ここでしか口にできないし、楽しみにしてきたのでこれに決めた。後で調べてみると2011年には600グラムのカニを1800円で買っていたのでキロ3000円だが、キロ5000円に値上がりしていたことになる。
女将さんはカニを切ってくれると言う。その前に写真をとります?、と聞かれたので、もちろん、と答えてデジカメとスマホで撮影した。前に来たときにはカットしてくれなかったと言うと、先代の晩年はカニを切る力がなくなっていた、と女将さん。たしかに年をとっておとろえていた。女将さんは見事なハサミさばきとパワーで一気にカニをバラバラにしてくれた。
さてお楽しみの今日のご馳走をたべてみると、前よりも美味しくない。ジューシーさと甘さが足りない感じなのだ。こんなものだろうか。なにかがちがうなと思いつつたべる。何度も口にしたから慣れてしまったのか。それとも小上りで寝ていた主人が、知人がやってきたので起きだして、すぐとなりの席で世間話をはじめたのが気になるのか。さらにタバコまで吸いだしたのが我慢ならないのか。
娘さんが鉄砲汁をサービスしてくれた。これは薄口でネギがたくさん散らしてあって美味しい。以前はサンマの刺身もサービスだったが、今年はサンマが不漁のためなくなっていた。
女将さんがお菓子をサービスしてくれた。主人は知人と漁の話をしている。それで朝が早いから店で寝ていたのか。タバコはご愛嬌なのか。カニの味は雨で商品の回転が悪かったのだろうか。
東北の震災のときにはここにも津波がきたそうだ。店は1メートルも海水につかったとのこと。建物がいたんでしまい、柱が斜めになったままで地震の翌年まで営業したが、店舗を建てなおしたそうだ。先代は6年前に亡くなったとのこと。カニは値上がりしていてキロ5000円だが、6000円まであげたそうだ。カニ屋泣かせの高値だと言っていた。
店の横が駐車場で、そこから店の裏にあるカニの生簀がみえる。大八食堂はNHK・BSの火野正平が自転車で旅する「こころ旅」という番組に登場していた。そのせいなのか、私のブログのアクセス・ランキングでも大八食堂の記事は上位となっている。ご興味のある方はブログの記事『花咲港の大八食堂』もどうぞ。
15時35分に大八食堂をでた。カニをたべるのは時間がかかるが、ずいぶんゆっくりしていたことになる。花咲港の通りを自衛隊の装甲車が当たり前のように走ってゆく。おどろくが、訓練なのかただの移動なのか。
花咲港で漁船と記念撮影
漁船がたくさん停泊しているので港に寄り道した。船のとなりに車をとめて写真をとっていると、漁師は何をしているのだという顔でこちらを見ていた。
別海町ふれあいキャンプ場にむかうことにする。ここは何年も前から利用したかった野営場だ。評判がよかったし、清潔そうな芝生のサイトが印象的で、キャンプガイドによると、オート・キャンプのように仕えるとのことで気になっていた。また町に近く、キャンプガイドの地図によると、歩いてゆけるところに居酒屋がある。キャンプ場に車をおいて飲みに行けるかもしれないとも考えたのだ。
キャンプ場にゆくだけになったのでのんびりとむかうことにする。原野や牧場で気に入った風景があると車をとめて写真をとっていった。途中でエゾリスが路肩にでてきた。急ブレーキを踏んだが、リスは車道には出てこず、繁みにもどっていった。
別海ふれあいキャンプ場
スマホ・ナビの案内で町はずれにある別海町ふれあいキャンプ場に到着した。受付に行くと管理人の男性がいて車中泊の料金は700円だと言う。車中泊の料金設定はなく、入場料が300円で、テント一張りの料金をふくむ駐車料金が400円、合計700円とのこと。テントを張らない車中泊なら入場料だけでいいだろうとよく言われると管理人は話すが、そんな細かいことはどうでもよい。私の知りたいことは町にある居酒屋のことなのでそれをたずねると、町までは歩けないということと、町のことはまったくわからない、という返事がかえってきた。札幌から来たばかりだから、町のことはわからないんですよ、と人の話をさえぎるように強い口調で言う。苛立ったように。これが管理人に違和感をいだいた最初の瞬間だった。
明日はバイクで出かけて連泊するつもりだが、結果的にそうならないかもしれない、と言うと、管理棟の裏にある無料駐車場に車をとめておけば、チェック・アウトの時間に関係ないとのこと。念のためチェック・アウトの時間を確認すると11時だが、1時間くらいはオーバーしてもうるさいことは言わないとのことだった。
このキャンプ場は細かいルールがいろいろある。いちばん問題なのは、キャンプ場の入口が夜の8時から朝の7時まで閉鎖されることだ。ゲートはバイクも出入りできないように封鎖されており、早朝から活動したい私としては大いに不満だ。キャンプ場がポケモンGOのジムになっているので、外部の人間が早朝から出入りするのを防ぐためとのことだが、利用者の利便性を考慮していない措置だ。
管理人は町の地図をくれた。彼は多弁だが要領をえない語り口の人で、たくさんあるルールを明確に説明することができない。そしとて会話をしていると、ひっかかりを感じるタイプの男だった。
効楽苑
キャンプ場に隣接する効楽苑という温泉にゆく。歩けば5分ほどだが、面倒なので車でいった。効楽苑の入口には、自衛隊員様、ごゆっくりおくつろぎ下さい、と書かれているから自衛隊員はよいお客のようだ。
入浴料は500円。お湯はモール泉という泉質で茶褐色をしている。モール泉とは石炭になる前の、炭化のすすんでいない植物がまざっている温泉だそうだ。お湯はぬるめで内湯のほかに露天風呂とサウナがありとても気に入った。そして体のガッシリとした人が多いのは、彼らが自衛隊員だからだろう。
18時すぎにキャンプ場にもどった。管理人は徒歩ではゆけないと言ったが、20分歩いて町に飲みにゆく気でラダーをバイクの横にたて、ベットをととのえる。しかし念のためキャンプ場でもらった地図を見てみると、居酒屋がないではないか。その地図には焼肉屋があるだけだ。これまでチェックしていたのはキャンプ場ガイドに付属している別海町の市街図で、去年の版だ。店は閉めてしまったのだろうか。20分歩いて飲み屋がないのでは洒落にならないので、酒場があるのか車で偵察しにゆくことにした。
ラダーを固定していないので、車が動きだすとガタガタと音をたてて動いている。このまま走るとバイクに傷がついてしまうので、ラダーが暴れないように20キロのノロノロ走行ですすむ。後ろからきた車は合図をだして先にゆかせた。
ホクレンとセブンイレブンがある国道の交差点をめざす。この交差点を左折してゆくとセイコマとコープ、そしてキャンプ場でもらった地図にあった焼肉店を確認した。他にも店があるのではないかと探索すると、スーパー・フクハラにつづく通りに新しくて高級感のある居酒屋をみつけた。新築の店なので、キャンプ場ガイドの地図にもキャンプ場でもらった市街図にものっていなかったようだ。
居酒屋のならびに中華食堂もある。ここも飲み屋のようにつかえるとみたが、またキャンプ場にもどって歩いてくるのが億劫になってしまった。フクハラで食材を買って野営場に帰ることにする。米牛肩ロース・ステーキを393円という安値でゲットし、サッポロ・クラシックと明日の朝食用の五目いなりを半額の124円、インスタントのなめこ汁を103円で購入した。
リヤ・ゲートの下で焼肉
ラダーにライディング・ジャケットをかませて暴れないようにし、40キロで走ってキャンプ場にもどった。車内で肉を焼こうかと思ったが、煙が充満してしまうので外でやりたい。しかしここは蚊が異常に多くて社外ですごすのは嫌なのだが、ちょうど激しい雨が降りだして、今なら蚊は飛ぶことができない。そこでハイエースのリヤ・ゲートを開け、それを屋根代わりにして、この下で焼肉をすることにした。
大型の椅子をだしてテーブルをセットした。200グラムはありそうな牛肩ロース・ステーキに塩コショウをして、スリットの入った鋳物の鉄板で焼いてゆく。焼き色がついたら肉をカットしてさらに炙り、焼肉のタレでたべた。サッポロ・クラシックといっしょにやるといける。雨の中だがリヤ・ゲートの下にすわつてする食事も乙なものだ。足を組んで大雨のキャンプ場をながめつつビールをのむ。ふりかえれば相棒のDRが車内にいる。非日常のトランポ・ツーリングの風景だ。
肉をたべおえると食器を炊事場であらった。雨なので靴はバイク用のショート・ブーツである。その後は車内でロー・チェアにすわって焼酎を水割りでのむ。キャンプ用の椅子を大型とロー・チェアとふたつも持ってこれるのもトランポの利点だ。ツマミは家から持参した豆で、車内では素足ですごした。
ライダーやサイクリストたちは雨の日用の大型天幕の下で宴会をしている。にぎやかな声が聞こえてきて楽しそうだが、蚊がすごいだろう。
明日は晴れだが明後日はわからない。別海付近は台風の影響は少ないが、この後にゆく新得町や十勝岳周辺は被害が大きい。予定では別海ですごすのは明日までだが、1日増やしてもよいかもしれない。それは明日決めることにした。
マットの上で横になり、酒を飲んでいるとすぐに眠くなってくる。深酒しなくてすむから体調もよく、翌日も朝早くから行動できるのだが、ここは7時にならないと外にでられない。
飲んでいるとやはりいつの間にか眠ってしまっていた。
車の走行距離 429キロ