2016年トランポでゆく北海道ツーリング8日目

 

 セパにて

 

2 札幌の夜  

 道央道に入ってゆくが、ここでも千歳方向にはゆけないと案内がでているから、駐車スペースに車をとめて、どういうことなのか情報を整理することにした。狩勝峠と日勝峠が通行できないから、道央道まで千歳にゆけないとなると、札幌にゆくには旭川から道東に来るときにつかった、美幌、遠軽、丸瀬布、と北に大きく迂回するしかない。そんなはずはないから、道央道は占冠あたりまで通れて、その先で千歳にゆけないのだろうと判断した。帯広、占冠間の山岳地をこえれば札幌にゆけるのだから。

 車をスタートさせて高速入口のゲートを通過しようとすると、占冠方向通行不可とあるではないか。しかしすでにETCゲートを通過中だから、そのまま道央道にはいり、すぐ横にあった注射スペースにハイエースをとめた。

 占冠方向にゆけないのなら、北に大きく迂回するほかないが、他にルートはないのか係員にたずねようとすると、ちょうど職員の方がきた。道央道のことを聞こうとすると、もうすぐ通行止めは解除される予定とのこと。彼は通行が再開されたらスタートしてくださいと言って足早に去っていった。よく見るとICの手前には駐車スペースがあり、そこに20台くらいの車がとまっていて、道路が開通するのをまっている。ICに入ってしまったのは私だけで、皆さん手前で待機していたのだ。もしくは、気の短い人間は迂回路に突き進んでいったのかもしれない。

 2・3分で通行止めは解除された。とまっていた車はいっせいに千歳方向にすすんでゆくので、私もそれにしたがった。昨夜からのはげしい雨は中札内までだったから、よいタイミングで帯広に来たようだ。ラッキーだった。

 

 雨上がりの道央道

 

 十勝川はものすごい暴れ川となっていた。じんぎすかん白樺近くの、橋のながされてしまった中札内川は増水した泥色のながれだったが、それほどでもなかったから、十勝川の荒れかたはすさまじかった。

 十勝清水まで70キロ制限だったが、山間部にはいると50キロ規制となった。道路は1車線なので、先頭が50キロで走るとそれについてゆくほかない。いつもなら速くしろよと思うところだが、通行止めが解除されたばかりだから、高速を走れるだけでも有難く、不満はなかった。

 法面がくずれていて、ブルー・シートをかけて土留めの仮工事をしたところが多数あった。路肩が流失してしまった個所もあり、狩勝峠と日勝峠が通行できないから、なんとか道央道を運用しているのだなと感じられた。

 占冠で晴れた。スマホ・ナビにしたがって夕張で高速をおりる。このときは芽室と占冠間の料金が無料になると思っていた。出口で通常料金が表示されても、請求時に修正されると掲示されていたから。しかし後日明細がくると通常料金になっていた。どういうことなのか確認すると、台風の道路災害で迂回路として無料になるのは、芽室ー占冠間でのりおりした場合だけ、という但し書きがあり、私のように占冠でおりずに隣りの夕張までゆくと、割引は受けられないのだった。これを知って騙されたような気分になった。私は無料になる旨のHPを見たが、そのページの下に小さく但し書きとして、このような適用条件がついているところまで目をとおさなかった。ここに行政の作為を感じるのは私だけだろうか。

 

 増水した夕張川

 

 国道274号線で川端にむかう。途中に滝上公園があり、以前にここで大増水した夕張川を見ているので、休憩をかねて立ち寄ることにする。公園をあるいて橋から川をながめると、濁流がしぶきをあげてあばれまわっていた。

 今日は道の駅しらぬか恋問から中札内まで1台のバイクとも会わなかった。中札内から帯広までに4台、高速で2台、目にしただけだ。ライダーはひどい雨のために走ることを諦めて、どこかで停滞しているのだろう。

 来るときにフェリーでコンサートをやっていた、中年デュオのエスペランサのCDをここで聴いてみた。泥臭いがよい味がでている。川端をすぎると道が悪くなった。ギャップで車がはねるので、バイクが気になって60キロで走行する。札幌まで30キロまで近づくと道の駅マオイの丘公園があった。温泉もあったので、札幌のタワー・パーキングが思うようでなかったら、ここにもどってこようと考えた。

 マオイの丘のある長沼町付近は米がみのっていた。小樽に上陸して旭川に北上していった月形あたりも稲作地帯だったことを思い出す。札幌のまわりは米どころなのだ。

 スマホ・ナビの言うとおりに札幌市街にはいり、すすき野にすすんでスムーズに目的のタワー・パーキングにつくことができた。ここでの第一の目標はトイレのある1階に車をとめることである。ゲートを入ってゆくと1階のいちばん奥に空スペースがあり、思惑どおりに駐車することができた。

 入口からも出口からも遠い場所で、車の中で仮眠をとるには好都合な位置だ。さっそくフロアに寝かせておいたラダーをバイクの横にたてて、床にマットとシュラフをひろげる。飲んで帰ってたらすぐに横になれるようにしておいた。

 1階ホールにあるトイレにはいり、大4小5の設備がある、広くて清潔なスペースを確認した。これならここに泊まれる。このパーキングは18時までに入庫すると0時までの料金が900円になる。ただしそれには手続きが必要なので、受付でそれを済ませた。これはパーキングのHPに記載されていて、私はそれを見逃さなかった。その私が道央道の但し書きに気づかなかったのだから、やはり行政の作為があったのではなかろうか。受付で手続きをする際に料金の確認もした。0時から1時までが300円で、その後は1時間につき100円とのことだった。

 

 たかさごや

 

 タワー・パーキングをでてすすき野交差点へあるく。ビルの壁面にあるニッカの大看板を見ると、すすき野に来たなと思った。行きたいと思っている店はあるが、気に入った居酒屋があればそこでもよいと考えていたので、この付近の店を物色しながら歩いてみることにする。まず古くて昭和の雰囲気のある炉端焼きの『たかさご』が目についた。店内をのぞくとそんなに混んでいない。ここをキープして先へいった。

 ラーメン横丁があったので立ち寄ってみたが雰囲気が以前とちがう。おかしいなと思ったら、ここは新ラーメン横丁だった。この地下に飲食店が何件かあり、その中に上品な割烹料理店があった。客はカウンターに紳士がひとりだけ。和服のママさんが相手をしている。こもこキープしておいた。

 本物のラーメン横丁もあった。のぞいてみるとラーメン屋は空いている。脱サラして海鮮居酒屋をやっていると書いてある店がある。サラリーマンの私としてはこんな店主を応援したくなるものだ。

 

 北の味 のつけ

 

 すすき野交差点から少しはなれたビルの1階に海鮮居酒屋があった。北の味のつけ、という店だ。野付半島には昨日いったが、霧と雨にあって引き返してきたばかりである。野付は走れなかったから、のつけで食べてやろうかと考えた。店の入口には北海しまえびやカキの写真があしらわれている。店内ではカウンターの客が店主とたのしそうに話しながら飲んでいるのが見えた。

 札幌でゆきたかったのは「モツの朝だち」というネーミングのうまいもつ焼き店だ。行ってみると超満員でとても入れそうにないので、ここは諦めた。さてどこにゆこうか。目をつけたのは昭和レトロな「たかさごや」か上品な割烹店、脱サラ店主の店と「のつけ」である。迷ったが客がたのしそうにしていた、のつけにゆくことにした。

 のつけにもどると、楽しそうに飲んでいた男性客はまだカウンターにいた。その方のならびに腰をおろしてまず生ビールをたのむ。大将に刺身は何がよいかとたずねると、今日のお刺身という1200円のメニューがあり、それがお得でおすすめとのことで、それをおねがいした。

 

 今日のお刺身とつきだし2品

 

 今日のお刺身はとてもきれいな盛りつけでやってきた。ネタはソイ、タコ、サーモン、マグロにツブ貝だ。ソイは湯引きしてあり皮も添えられている。これで1200円は安いとおもう。となりの方もでてきた刺身を見ておなじものをたのんでいた。

 カウンターの男性はOさんという方で大将の知り合いだった。どうりでたのしそうなわけである。年上のOさんと話しながら時間をすごした。刺身をツマミにして生ビールからコンブ焼酎の利尻、地酒の国希とのみすすむ。国希はチェイサーつきだった。Oさんは日本酒専門のようだ。

 

 ぎょうじゃにんにくのおひたし

 

 ぎょうじゃにんにくの名前はよく聞くが、食べたことがないのでおひたしをお願いした。注文の品は卵黄をのせて供された。Oさんはそれを見てまた自分でもオーダーしていた。

 ぎょうじゃにんにくはまず何もつけずに食べてみるといける。しょう油を少しつけるのがベストだった。卵黄をくずすとどうしても玉子の味が強くなってしまうから、私は卵はいらない。それでもこれはこれでよい肴ではあるのだが。

 刺身のソイが気になるので、ソイは皮といっしょにたべるのですか?、と大将にきいてみた。すると、いっしょというわけではない、皮もうまいから添えてある、とのこと。Oさんとは釣りの話をした。宗谷地方では国道沿いの海岸で、ずっと竿をならべて鮭釣りをしていたと話すと、あれもパッと行ってすぐに釣れるようなものではないことや、好きな人は鍋を用意していて、鮭がかかったらその場で石狩鍋にして食べることなどを教えてくれた。Oさんは船にのって沖釣りをしていたそうで、カジカやソイを釣ったとのこと。よく積丹半島に釣行したそうだ。

 大将は野付や根室にくわしいそうなので、なぜ根室半島は南ばかりに人家があり、北側は牧場くらいしかないのか聞いてみた。すると北側は冬になると流氷が押しよせてきて、船の出入りができなくなってしまうとのこと。それで港は南にあったから、必然的に南側に街ができ、民家があつまっているのだそうだ。

 ここでもバイク・ツーリングに来ていることを話したが、野付半島は霧と雨で走れなかったので、代わりにここの、のつけで飲むことにしたと言うと、Oさんは、それ正解! とおっしゃってくださった。

 大将は若いころに自転車で日本一周をしたそうだ。自転車はどんなものなのかたずねると、サイド・バックを前後左右に4個つけたキャンピング車とのことだが、細かいことはわからない。自転車にこだわりはないようだが、45日で走りきったというのはすごいと思う。Oさんは帰られた。大将の日本一周の話を聞いて腰をあげることにする。料金は3450円だった。

 

 たかさごやのつきだし

 

 もう1件ゆくことにする。バーかもしくは昭和レトロな「たかさごや」にしようと思ってあるき、バーがなかったので「たかさごや」にはいった。ホッピーはないのでレモンハイ400円にする。つきだしはアサリを焼いたものと落花生を煮たものだ。南京豆は初物だそうだ。茹でたものははじめて食べたが薄味で味がしなかった。しょう油でもつけるのだろうか。

 生カキをたのむと終わってしまったとのこと。そこで宗八カレイにすることにしたが、大きいとたべられない。女の子にどのくらいなのか聞くと、彼女は自分のてのひらを示して、このくらいと言う。そのくらいがちょうどよいので、この800円を注文した。

 

 宗八カレイ

 

 カレイは主人が鉄串をうち、尺塩をふって焼く。炉端は目の前で調理のようすが見られるのがよい。カレイは10分ほどでやってきた。表面は焦げるほど強く焼いているが、中はよい加減になっている。私は魚を焦がさないように時間をかけて弱火で焼くが、プロは強火で一気に仕上げるのだなと感心した。

 レモンハイは飲んでしまったので、いちばん安い日本酒の金滴330円をお燗でたのむ。宗八カレイは日本酒、それも燗酒だよねと思ったのだ。金滴は安いだけあってツーンとくるものだったが、こいつでカレイをたべるといけた。

 目の悪い客が入ってきた。この人は常連さんで主人にみやげをわたしている。主人はそれを受け取り、その人に席の案内をする。もうちょっと右、もうすこし、そこ、と。主人がカレイ、サンマの塩焼き、イワシの刺身ができると言うと、その人はサンマをえらんだ。

 主人は3本あるサンマをだして肩と腹をおし、いちばんよい肴をえらんで鉄串をうち、尺塩をふって焼きだす。ここはよい店だ。主人の客あしらいに品がある。お会計は2140円。お通しがちょっと高いがまた来たい居酒屋だった。

 22時にパーキングにとめた車にもどった。パーキングの出口には係りの人が不正防止のために立っている。その監視員の目が気になったが、車に入るとすぐに眠ってしまった。

                                         車の走行距離  350キロ

 

 

 

 

 

 

 

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