売文生活 日垣隆 ちくま新書 2005年 780円+税
明治時代から現代までの作家の原稿料と印税を話題にした読み物。
作者は失業を機に投稿をはじめ、売文生活にはいったそうだ。それ故に本書は資料的、研究的な視点はなく、ただただ興味本位な覗き見的内容に終止している。作家の原稿料がいくらなのかという、読者の下世話な好奇心にこたえる読み物である。
作者は自作の文章の質は問題としておらず、より多くの文章を生産することを是としていると述べている。娯楽本の著者としてはそれが当然にことなのだろう。ならば読み手としても、作者の姿勢に敬意を払って、飛ばしとばして、斜めに読み飛ばさせてもらった。
文学的な基礎知識がある人には目新しい内容はない。どこかで一度は読んだり聞いたりしたことばかりだ。漱石が朝日新聞からいくらもらっていたのか、樋口一葉がどれほど貧しかったのかなどを書いている。その他には雑誌や本からの引用で紙幅を埋めている。
そして崇高な使命感からドキュメンタリー作家となり、弱者の現実や社会の矛盾を訴えたが、厳しい現実を直視した本は人気がないから売れずに、貧しかった松下竜一を、ただの貧乏作家としてあつかっている。これには松下センセもご立腹だろうし、センセの読者の私も誠に不快だ。
ひまつぶしに読む本。