古本・貸本・気になる本 出久根達郎 河出書房新社 2004年 1600円+税

 古本屋の主人から作家になった、ありそうでなかった経歴の作者による本にかかわる雑学的なエッセイ集。

 好きな作家である。『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞するまえからエッセイを読んでいた。小説はあたりはずれがあるが、エッセイではずれはない。文章が短いためであるが、作者が蓄積してきた古本屋としての、または本好きの読書人としての知識量の広範さ、豊富さに感嘆しつつ読み終えた。

 本が売れなくなった話から、貸本屋の思い出、風邪のときの読書傾向、小説の登場人物を数える話、俳句や詩、また北海道の古本屋事情も登場する。

 本好き、読書家、古本屋好きにはこたえられない書。肩肘はらずに読めるのもよい。

 そして表紙には仕入れてきた古書の束がうつっている。川端康成の伊豆の旅、楢山節考、新古今和歌集、文壇放浪記、などの文庫があり、その中に2冊だけ上下が逆になっている本がある。五味康祐の音楽巡礼、二葉亭四迷の平凡である。また束には36冊の本があり、タイトルをみてその選択にいろいろと好みや傾向を読み取ろうとして、楽しい時間をすごすこともできた。この装丁を見ているだけでも笑みがこぼれてしまう。

 本好きにおすすめのエッセイ。

 

 

 

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