ホームレス中学生 田村裕 ワニブックス 2007年 1300円+税
ベストセラーになっている話題の本である。
人気の芸人ーーらしいが私は見たことがないーーの苦しい生い立ちを語った内容だ。私としてはまず手をださないジャンルの本なのだが、たまたま知人が持っていたので借りて読んでみた。
中学生だったときに主人公の家庭は行き詰まってしまった。自宅を差し押さえられ、住む場所を失った家族を前にして、主人公の父は、家庭の解散を宣言して立ち去ってしまう。大学生の兄と高校生の姉とともに置き去りにされた主人公は、兄姉の足手まといになることを恐れ、友達の家に行くと嘘をついたことにより、公園でのホームレス生活がはじまるのだ。
書いてあることは一部脚色してあるようにも感じられるが、本当のようだ。公園での生活から、周囲の人に助けられて、アパートを借りて生活保護を受け、兄弟3人で暮らせるようになっていく過程と、中学、高校とすすみ、芸人となっていく主人公のその後も追っていく。ところで主人公の母は主人公が小学生のときに亡くなっている。それをあつかっている部分は子供の心理がよくわかるもので、ほかでは読めない貴重なものだろう。
ときにこれは本当か?、作った話なのではないか、と思えたり、このエピソードは不要だと感じるものもある。そして文章は稚拙だ。表現力もない。事実だけが箇条書きのようにならんでいて、たぶんそれを出版社の人間が整えたのだろう。文体は一行ずつ改行されていくもので、ときに行間を大きくとってあり、詩のような空間処理のされた散文となっている。1冊の本としての体裁をととのえるのに、こうしてページを稼いだのだろう。したがってすぐに読めてしまう本である。