骨は珊瑚、眼は真珠 池澤夏樹 文藝春秋 1995年 1359円+税
明晰でアカデミックな内容をすばらしい日本語で書いた短編集。
9編の短編がおさめられている。読んでいてじつに心地よい文体だ。美しく、ながれるようで、洒落ていて、洗練されている。思考や発想、想像力の展開も刺激的で豊かだ。ならんだ小説の作品世界は多岐にわたる。沖縄の伝統文化をモチーフにしてもの、絶滅が危惧される北海道のシマフクロウの話、SFや怪異譚。そしてそのなかに、天文学の大学助教授が学生に語りかける形式の作品がある。助教授は科学や学問の重要さ以上に、人生で大事なことがあると説く。じつに洒落た、仕掛けの利いた、読んでいて気持ちのよくなる小説だ。このように凝った構成で、たくらみに満ちていて、じーんとくる作品にはなかなか出会えない。
作者の他の作品も読んでみたい。力のこもった長編を。