コロンブスが持ち帰った病気 ロバート・S・デソウィッツ 翔泳社 1999年 2300円
海を越えるウィルス,細菌、寄生虫、と副題がついている。コロンブスがヨーロッパに持ち帰ったのは、米国大陸にあった梅毒である。梅毒は欧州大陸に広がり、悲惨な運命を人々にもたらした。本書は梅毒だけでなく、熱帯病と呼ばれる感染病全般の世界への伝播と、その絶滅にはいたらないが、人類の闘いをおった歴史書である。
よく知られていることだが、コロンブスの新大陸発見によって、ふたつの地域が出会い、たがいの免疫を分けあった。文明の衝突とも呼ばれるふたつの人間集団の出会いは、単に欧州に梅毒がひろがっただけでなく、米大陸では天然痘や麻疹(はしか)が出現し、原住民の多くが死に、欧州には梅毒とペストが伝わって人々を死に追いやった。
また奴隷貿易によりアフリカから米大陸に黄熱病が伝わったのである。本書は特に黄熱の歴史に大部をさいている。奴隷とともに奴隷船の中で命をつないで米国大陸にやってきた蚊が、白人を殺しはじめた点から、ロックフェラー財団が黄熱との闘いを開始し、人類に恩恵をもたらしたことまで。またこの研究所に在籍していた野口英世の記述もあり、野口がアフリカのガーナで死ぬくだりもある。
フィラリアの記述もあり、『フィラリア』と関連して読めばさらに興味は増すであろう。
非常に興味深い歴史書。