猫風船 松山巌 みすず書房 2007年 2400円+税
軽い読み口の掌編小説集。
作者のこれまでの作風とは違い、軽妙なタッチの小説集である。そこが意外であり、不満でもあるが、これは作者の新しい挑戦なのだろう。
難しい思考や、屈託した気持ちは微塵もない。都会の作者の住居付近と思しき土地でおこる物語が多い。SF風のもの、高齢化社会をテーマにしたもの、妄想を発展させたようなもの、夢から着想をえたような作品がならぶ。
好みとしては作者の重厚な私小説風のエッセイが好きなのだが、ここから作風を変えてしまうのだろうか。軽い小説のほうが万人受けして、商売にはなるのだろうが。今後が注目される。