横須賀Dブルース 山田深夜 寿郎社 2005年 1500円+税
確立されたハードボイルド・タッチの文体で書かれた骨太のショート・ショート。
はじめはエッセイのつもりで書き出したが、街を舞台にした物語が書きたくなって変えたものだという。街、横須賀の街を舞台に、38才で無職のバイク野郎の作者が、主人公として登場するストーリー。
人生の喜怒哀楽のつぼをおさえた、一口話のような人情物が多い。少々説教臭くもあるが、このあたりのバランスはよい。つまりやりすぎていなくて抑制が効いている。
障害者、アル中、病者、児童虐待など社会的な弱者をテーマにした話が多い。ストーリーにのせて彼らのことを社会に紹介し、理解を深めてもらいたいのだろう。
主人公、作者は無職で金がない閑人だ。困っている人がいると放っておけない。昔はよくいたタイプの遊び人だが、最近このような男はいなくなった。
人間の善なるを信じ、不器用に世渡りをしている人に無骨にエールをおくる書。好みはわかれるだろう、泥臭いから。私は嫌いではない。
本書は相互リンクしていただいている永久ライダー、北野一機氏のすすめで手にした。