2008年 渓流釣り 解禁直後の群馬県・神流川・神流町地区

 

 支流の沢 堰堤が見える あの先にいく

 

 解禁直後の神流川に渓流釣りにでかけた。最近はバイクツーリングとホームページ作りのほうに熱中していて、渓流釣りは2年振りである。ホームページでも紹介した『一昨年の釣行』以来のことで、久しぶりに渓流釣りの熱がもどってきたのを感じていた。
 
 神流川は首都圏の渓流では比較的すいていて、本流のほかに多彩な沢があるので、20年近くかよっている私のホームグラウンドである。近年専門誌によくとりあげられるのは、上流部の上野村漁協管内だが、私は下流部の南甘漁協管内が好みであるから、神流町にでかけた。

 

 旧万場町の中心地 人気の放流ポイント いつもなら釣り人がたくさんいるのだが

 

 神流町は最近合併によって生まれた町だ。その旧万場町の釣り場に着いてみると、釣り人がいない。こんなことははじめてでどうしてしまったのかと思う。とにかく毎年初釣りはここと決めてある、実績のある深瀬のポイントにはいってみると、川の様子が激変していた。深瀬だったはずのポイントは砂利で埋まり、浅い、魚のつかない、ノッペラボーのザラ瀬となっていた。ここだけではなく、上流も下流もおなじである。カーブにあった淵も埋まり、荒瀬も早瀬もなくなり、ただただノッペラボーの、浅い砂利の川になってしまっていた。

 釣り人はひとりだけいた。埋まって浅くなった淵で浮き釣りをやっているから、地元の人か初心者なのだろう。河原を歩いて川全体がこうなってしまっていることを知り、本流での釣りは諦め、支流の沢にはいることにした。

 

 工事のため泥水が流れ込んでいる

 

 車にもどろうとしていると、漁協の人がやってきた。川は去年の台風の大水でこうなってしまったそうだ。災害だからしかたがない、と漁協の人は言う。その砂利で埋まった川を重機で掘って川筋をつけようとしている。流れをクレーンでかきまわすから泥の濁りが入ってひどいことになっていた。これではもう何年もダメですね、と私が言うと漁協の方は黙りこんでいた。ところで川が砂利で埋まってしまったのは今回がはじめてではない。これまでにも何度も砂利が流れこんで、それを重機で掘り、岩を入れて流れを再生しようとしてきたのだ。じつは上流部の上野村には日航機が墜落した御巣鷹の尾根があり、あれ以来急速に道を拡幅して整備したので、山肌が大雨のたびに崩壊するようになり、その土砂が下流に押し寄せてきてしまうようになった。神流川は私が通いだしたころはすばらしい渓相だった。深い淵がたくさんあり、大岩が散らばって、荒瀬や深瀬、段をつくって落ち込む急流などもあったが、それらはすべて砂利で埋まり、川虫もほとんどいない、ノッペラボーの川になってしまった。

 川を掘っては渓流釣りはできなくなるが、それでも工事をしているのは鮎釣りのためだろうか。漁協にとっては鮎釣りのほうがドル箱だろうから。しかしこんな川で鮎は釣れるのだろうか。鮎釣りはしないからわからないが、私ならここには来ないと思うから、毎年たくさんいた渓流釣りの釣り人の姿もないのだろう。

 

 沢で釣れた岩魚

 

 苦労して集めた川虫をエサにしてある支流に入ってみると、ここも流れに土砂が流入していた。川床が上がってしまっていて、そこにあった見上げるような大岩が埋まり、頭しか地上にでていない。上流にのぼっていくとそれでも淵があって、その流れのぶつかる岩の下に仕掛けをながしこんで何度か聞き合わせをしていると、魚がかかった。よせてみると岩魚である。22cmくらいだろうか、放流物の魚であった。ハリスは0.2号。エサはオニチョロである。写真をとるがデジカメを持参してなくて、携帯でとったらピンボケになってしまった。この沢は堰堤を巻いてすすみ、大堰堤までつめてみたが、ほかに当たりはでなかった。

 

 沢沿いに車をとめる

 

 別の沢にはいってみる。ここもやはり川が埋まっていた。沢に上野村の土砂が流れ込んでいるわけはないから、漁協の人の言ったとおり、台風の大水はたいへんなものだったようだ。すっかり様子の変わってしまった沢をのぼっていく。いつもの年であったなら、解禁直後に沢にはいる人などいないのだが、本流が崩壊しているので、沢には釣り人の足跡がたくさんあり、期待はできないなと思う。まったくあたりはなく、フィッシング・プレッシャーも高く、魚も神経質になっているだろうと思い、仕掛けを0.15号に細くした。その繊細な仕掛けで淵を攻めると魚がかかった。ラインが細いので無理はできない。釣れたポイントから引き離して、場荒れしないようにした後は、ラインが切れないように注意してやりとりし、魚が弱るのを待って玉網にいれた。きれいな魚体だが、これも放流物の20センチの山女だった。エサはやはり川虫。名前はわからない。カメムシと呼ばれる川虫だろうか。

 

 ラインのサイズを落としてかけた山女

 

 おなじポイントをまた攻めようとすると、天井糸に繊細なラインがからんでしまった。面倒なのでそのまま釣ると、また魚がかかった。浮かせてみると22センチほどの岩魚だ。これはまいった、ラインのからんだ仕掛けで取れるだろうか、と思いつつよせると、眼の前でラインブレイクしてしまった。それも悪いことに途中からラインが切れたので、岩魚はその糸と針をつけたまま淵の底に消えていった。

 

 

 堰堤を越すために林に踏み込み、山肌をのぼり、岩をへつって上流にすすむ。大岩をこえ、倒木の下をくぐるから、かなりの運動になる。そしていつもは花粉症で苦しんでいるのに、眼がなんともない。まわりには檜と思える杉のようなつぼみをつけた木がたくさんあるというのに。遊んでいると花粉症にもならない現金な体質なのだろうか。

 

 山のなかの民家 薪と土壁

 

 そして渓流釣りは時代をさかのぼる旅ともいわれる。都会から山のなかにはいっていくと、少し前の時代に帰ったような情景があるからである。薪を積み上げた民家があったので画像をとったりした。

 

 土砂崩れのあと 一帯の植林が崩壊していた ただ朽ちるにまかせるのだろうか 

 

 また別の沢に移動する。解禁当初に天然物の魚が釣れる場所である。ただ魚が少ないので、ここで越冬した渓魚を釣りきってしまうと、魚はいなくなってしまう。誰かに先を越される前にいかねばならないところだが、ここも大規模に崩壊していた。土砂崩れが発生していて、土砂と植林された木が沢に落ち込み、天然のダムのようになり、流れを一変させている。そこに大量の石が流れ込み、沢の周囲にある植林の根元を埋めつくしていた。根元を石でおおわれた木はどうなってしまうのだろうか。石をどかすのはたいへんな労力がかかるから、不可能だろうが、このまま放置するのだろうか。朽ちるままに。

 

 上が山女、下は岩魚の塩焼き

 

 帰宅して息子に魚をたべるかと聞くと、山女を、と即答する。私も山女のほうが美味しいと思う。両者とも淡白でほとんど無味無臭だが、山女は独特の香りがあるのである。こうばしい渓流の香り、山の香りだろうか。私は岩魚で日本酒を飲んで、釣りの1日を終えた。

 遊魚券は昨年から1500円に上がったそうだ。

 

 

 

 

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