2016年 トランポでゆく北海道ツーリング 1日目・2日目

 

 関越道 塩沢石内PA

 

1日目 旅立ち

 金曜日の夜。仕事から帰ってバイクと荷物をハイエースに積み込んだ。4年ぶりの北海道ツーリングのスタートである。旅のはじまりは気が急いてしまうものだが、年をとったせいかゆっくり確実にと思い、慎重に作業をした。

 汗をかいたのでシャワーを浴びて19時半に出発した。フェリーは明日の朝10時の新潟便だから時間はある。高速代を節約するために一般道を北上していった。道路の継ぎ目やギャップがあると、バイクが揺れてタイダウン・ベルトがきしむギシギシという音がする。バイクのガソリン・タンクからガスが揮発する臭いもした。

 国道を北上し、埼玉県から群馬県に入る県境の橋をわたってゆくと、ついにトランポで北海道にむかうときが来たなと思う。いつかバイクを車に積んでツーリングにゆきたいと考えていたから、それが実現したのだ。しかしトランポの旅にはいろいろと準備しなければならないことがあった。

 問題になったのはバイクをトランポに積みおろしすることだ。それに使用するラダーをえらぶこと、じっさいの積みおろし、バイクの固定方法などで、試行錯誤を繰り返して、自分のやりかたを作り上げることが必要だった。(詳しくはブログの『ラダー・レールの導入・ハイエースのトランポ化』をどうぞ。)

 セブンイレブンで夜食のサンドイッチと明日の朝食のおにぎりを買って、前橋ICから関越道に入った。高速にはいると雨がポツポツと落ちてくる。カッパはいらない降りだが、バイクならナーバスになったと思う。止んでくれ、と空に言ったり、雨降りはこの辺りだけかもしれないと考えて、スピード・アップもしたはずだ。

 トランポは雨天でも快適だ。音楽を聴きながら、エアコンのきいた車内で片手でハンドルをにぎっている。雨を避けたくてトランポでゆくことにしたのだが、その効果が初日からでたのだった。

 気温は23℃、24℃と表示されている。水上、雨、ともでていた。雨具をつけるほどではない雨降りの中を走るが、しだいに疲れてきた。それでも今夜のうちに関越トンネルをぬけて新潟に入りたいと思っていた。

 

 

 車内の様子

 

 関越トンネルをぬけた先で車中泊をしたいと考えてすすむと、塩沢石内PAがあり、ここで泊まることにした。PAに入ってPキャンーーパーク・キャンプの略で車中泊のことーーの準備をする。車のフロアに寝かせておいたラダーをバイクの右に縦におき、ラダーをどかしたスペースにマットとシュラフをひろげた。時刻は23時だった。 

 バイクを点検すると、折りたたんだセカンド・シートに直角に押しつけておいたタイヤがずれてしまっている。これは明日対策をとることにして車内の整理をする。ラダーの上に大量の荷物を積んでいたから、それらを運転席と助手席にうつした。

 作業をおえてマットの上で焼酎の水割りを飲みだすが、暑い。夏の車中泊ではエンジンの熱が車内につたわり、たまらなく暑くなるのだ。右のスライド・ドアの窓に網戸が設置してあり、それを開けておいたのだが、それだけでは熱気がぬけないので、運転席と助手席の窓にも、取り外し式の網戸をつけた。

 風が通るようになると暑気は気にならなくなった。クラブハウス・サンドをつまみつつ焼酎を飲んでいると、いつの間にか眠ってしまっていた。

                                       車の走行距離 190キロ

  

2日目 

 

新潟へ

 夜中に寒くて目がさめた。エンジンは冷えて、車内には涼しい外気が流れ込んでいる。ここはやはり新潟の山間の地だ。都内とは気候がちがう。網戸をしめて毛布をかぶり、また横になった。

 5時に起床した。朝食は昨日買っておいたおにぎりにカップめんにしようかと思ったが、いちばん食べたくない持参の餅を片づけてしまうことにする。餅は正月用のものがのこっていたものだ。正月の餅が9月まであるのも問題だが、真空パックに入っているとはいえ、まったく傷まないのもなんだか怖い。おにぎりとヨモギ餅ふたつを朝食としたが朝からたべすぎてしまった。

 昨夜気づいていたバイクの固定のズレを修正した。Fタイヤはセカンド・シートの背に直角に押しつけておいたのだが、ステアリングが右に切れて、直角ではなくなってしまっている。これでは固定があまくなってしまうので、Fタイヤにタイダウン・ベルトをかけてうごかないようにした。じつはフェリーの揺れでバイクの固定がゆるむのではないかと心配していたのだが、これで手ごたえがえられた。

 霧のでている塩沢石内PAを6時過ぎに出発した。右は低い山がつづき、白い靄がかかるなかに、南魚沼郡独特の背の高いとんがり屋根の民家がたっている。幻想的で郷愁をさそう風景だ。左手には魚野川がながれ釣人がいる。早朝から国道をハイペースではしるロード・バイクの青年も見えた。

 山をくだって平野にでると田んぼが延々とつづくようになる。どこまでも、どこまでも田で、新潟は米の国だ。私も毎日魚沼のコシヒカリをたべているが、ここのお米はとても美味しい。

 左足がうずく。先日バイクをハイエースから下ろす際に、単車をラダーから落としてしまい、その時に左足と腰をいためたのだ。その怪我で左足の甲からつま先にかけてしびれていて、足首もまがらず、シフトアップもしづらい状況だった。

 黒崎PAで休憩をとった。スマホのヤフー・ナビとカーナビの両方にフェリー・ターミナルまでの案内をセットする。スマホのヤフー・ナビのおすすめルートは、安くて早いコースの選択で失敗したことがないので、信頼していた。

 新潟西ICで高速をおりた。料金は3440円だ。ターミナルにむかう前にガスを満タンにしておく。小樽には早朝につくので、燃料を気にすることなく、朝から思い切り走れるようにするためである。燃費は10,4K/L。ハイエースとしてはよいほうだ。単価は115円。つづいてフェリー内での食料を買うためにセブンイレブンに入った。

 

 

 

 ターミナルにつくと車はすでに10台ほどならんでいた。その列に私も加わる。受付はネット上で完結しているので必要ないが、ターミナルを見にいってみた。4年ぶりのターミナルに人はまばらだ。他の利用者もウェブ上で手続きはおわっているのだろう。レストランが営業していたのでメニューを見ると、高くてよろしくない内容だ。これならばコンビニかマック、牛丼屋のほうがずっとよいと思う。

 バイクも見にいった。目につくのは中型スクーターとトライアンフ・タイガーやBMW・GSなどの大型オフローダーだ。セローなどもいるがこの人たちはオフロードを走らないんだよね。林道走行はすばらしい体験ができるからおすすめなのだが。

 

 

 バイクの中にホンダCB750FCにのる65才くらいの方がいた。FCはきれいに手入れされていて、大事に長く乗り続けているのがつたわってくる。ライディング・ジャケットが色褪せていて、ヘルメットとブーツも使い込んだものだ。私も同じバイクに長く乗っているから、こういう方にシンパシーを感じてしまう。FC氏に許可をもらって写真をとらせてもらった。FCは首都圏ナンバーだ。無口で頑固で無器用な人なのかなと思ったが、私もそんなところかもしれない。

 車も見物したが、キャンピングカーやハイエース、キャラバンで旅する人はいても、私のようにバイクを積んでいる者はいなかった。

フェリーにて 

 9時30分にバイクの乗船が開始され、車は9時47分からスタートした。バイクならスロープを慎重にはしるのだが、車ではなんの緊張もおぼえない。無造作に走行して船倉に入り、指定された位置に停止した。車両甲板の気温があまり上がるとは思えないが、もしもそうなったときにバイクのガソリン・タンクのガスに影響がでないように、スライド・ドアの窓につけてある網戸をあけておく。いつもは後部のサイド・ガラスに目隠しをはっているが、船員に車内がよく見えるようにはずしておいた。最後にタイダウン・ベルトの固定を再確認して階上の船室にむかった。

 受付でS寝台の場所を指定してもらう。じつはB寝台のつもりでまちがえてS寝台を予約したのだ。そのことにこの時は気づかなかった。4年間フェリーに乗らないうちに船室がよくなったのだと勘違いしていた。S寝台は広くてプライバシーがたもてて快適だが、暗いのが難だ。読み書きができないのは誠に不便だと思う。

 バイクでフェリーにのるとまず風呂に入るのだが、車ではその気にならない。自動車では体はよごれないし、気持ちに余裕があるから入浴はいつだってよいだろうと思えるのだ。トランポだと服装からしてちがう。二輪ではライディング・ジャケットにGパン、ブーツといったところだが、四輪ではТシャツに短パン、ドライビング・サンダルという軽装だった。

 S寝台をでてТVのついている軽食コーナーでタブレットを起動し、ブログやツイッターに書き込んだり、返信したりする。まわりでは飲み始めているグループがいた。焼酎のボトルやツマミを持ち込んでの船上宴会だ。仲間同士で飲み会をするのは楽しいだろう。

 自由寝台でも友人同士やたまたまいっしょになった人たちが酒盛りをはじめていた。旅の高揚感のせいか、そのピッチがやけに早い。そんなにと思うほどだ。私は昼は飲まない主義だ。今日も夕方に飲みだして早く眠り、明日の早朝の小樽上陸にそなえるつもりだった。

 11時からビンゴ大会があると放送がはいった。これまで参加したことはないが、今回は行ってみる気持ちになった。ビンゴ運はないのだが、どんなものなのか見てみたい気分になったのだ。

 会場にゆくと4・50人ほどの乗客があつまっていた。昼から飲まない人たちだ。賞品は1等が船内商品券2000円で1本。2等は船内で販売しているホールケーキ2本。他にフェリーのペーパークラフトにアメが入っているもの。船のペーパークラフトだけとクリアファイルなどだ。

 ビンゴがはじまって用紙に穴があいてゆくが、やはり私にはビンゴの神様はついていない。最後までビンゴにならずに終わり、参加賞のアメを3個もらった。本来は1個なのだそうだが、夏休み用に準備してものが余っているので3個になったそうだ。

 

 

 S寝台

 

 ビンゴが終わったところで昼食とした。カップめんに五目鶏めしのおにぎりと五目いなりである。給湯室でカップめんに湯をそそぎS寝台でたべた。S寝台は広いので飲食しやすいが、B寝台は2段ベットなのできびしい。B寝台では胡坐をかいてたべるか、軽食コーナーのテーブル席を利用することになるだろう。

 昼食をおえると12時だった。ここで風呂にゆくと4人入っていたが、すぐに出ていったので私だけになった。広い湯船もサウナも貸し切りである。サウナはミスト・サウナなので低温でじっくりと汗をかき、湯の中では、痛めた左足をよくほぐしておいた。左足は膝下前の筋肉と足首、甲がしびれている。徐々によくなっているが、長引く怪我だった。

 風呂から自室にもどろうとすると、自由寝台で飲んでいた人たちはかなり出来上がっていた。10時前から飲み会をしているのだから無理もない。大声で話しあい、大爆笑し、酒をくみかわしている。これではそろそろつぶれてしまいそうだった。

 売店を見にゆくと苫小牧名物のマルトマ食堂のホッキカレーのレトルトを売っている。880円だ。これをふたつ土産に買っておいた。この頃まで船の揺れを気にしていた。バイクが倒れないだろうかと心配していたのだ。しかし外洋にでても波はおだやかだから、神経を使うのはやめることにした。

 映画の上映があるのでゆくことにする。映画もこれまで一度も見たことがなかった。前回までは北海道の情報や地図を夢中でしらべていたのだ。それが年のせいかガツガツとしたところがなくなっているのを感じた。

 映画にゆこうとすると自由寝台で酒盛りをしていた人たちは、枕をならべて撃沈していた。そんな彼らをみて、微笑して上映室にゆく。映画はマジック・イン・ムーンライトというラブ・コメディーで、自分ではまずえらばないジャンルのものだが、テンポよく展開するので楽しく鑑賞した。ただ寒かった。だんだんと冷房の効きが深くなってきて短パンではきびしい。そこで映画の後で用意しておいた長ズボンにはきかえ、Тシャツの上にも長袖シャツを羽織ることにした。フェリーでは冷え対策も必要である。

 映画の後は船上コンサートがあり、これも聴きにゆくことにする。出演していたのは川崎で活動しているエスペランサというグループで、3人のバンドなのだそうだが、この日は男女ふたりの構成だった。ふちりとも50前後で男性は柳ジョージのような声。女性もだみ声で味がある。泥臭くて、年をとっているから哀愁もにじみ、気に入ってしまった。コンサートが終わるとCDを1000円で売るとのことなので、応援とチップの意味をこめて購入した。彼らはかわさきFMに毎週出演しているそうだ。

 次の映画も見にいったが神経質な内容なのでやめてしまった。また風呂にいってミスト・サウナで汗をながす。風呂からあがると売店でサッポロ・クラシックを330円で買い、ТVのついている軽食コーナーのテーブルで飲んだ。

 タブレットでブログのコメントに返信したりしてすごす。船は秋田県入道崎沖を航行しているそうだ。やがてネットは圏外になってしまった。他人のえらんだТV番組を見る気にはなれないので、S寝台に引き上げて本格的に飲むことにする。ベットに横になって焼酎をやっていると早い時間に眠ってしまった。

                                                       車の走行距離  134キロ

 

 

  

 

 

 

 

 

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