2016年 トランポでゆく北海道ツーリング 4日目

 

 霧の咲来峠

 

1 ケモマナイ林道

 5時に起床した。晴れているが山には霧がかかっている。今夜から天候はくずれると予報は告げていた。18時以降の降水確率は50パーセントだから、それまでにツーリングを楽しむことにした。

 電話会社にもらったギガどーん兵衛で朝食とする。6時10分に出発したが、サラリーマンらしい勤勉すぎる行動だった。もっとゆったりとすごしたつもりだったが、朝から前のめりに活動してしまっていた。

 昨夜天塩川温泉へと走った国道40号線を北上する。天塩川温泉の入口をすぎた咲来で右折して、道道220号線に入った。ここは前回通ったときに雨に降られ、おまけにオホーツクに出たところで赤信号で停止しようとしたら、ブーツ・カバーがステップにひっかかって足がつけず、立ちゴケしてしまったところだ。カウリングのスクリーンが割れてしまい、手痛い出費となったのだ。

 道道220号線は通行量がほとんどなく、1台だけで走ってゆく。夜間は除雪していませんと看板があるが、こんな辺鄙な場所では当たり前だと思う。でもそれは都市生活者の私の常識で、北海道の道北では表示しなければならないことなのかもしれない。

 北海道らしい牧場の中をゆくような道をすすむ。山間部だがこんなところにもトンビがいて、バイクにおどろいて前方に逃げてゆく。トンビは飛ぶのが遅く70キロほどだから追いついてしまう。その中の1羽がパニックになったのか、頭上からおりてこようとするから、アクセルを開けてシングル・サウンドを響かせると、鳥は身をひるがえして去ってたいった。

 道道220号線から道道12号線とつないで歌登の町に入った。歌登は思ったよりも大きな町でセイコマもある。北海道には飲食店は少ないが、コンビニ、それもセイコマはたくさんある。セイコマは北海道ではなくてはならない社会インフラだ。

 

 ケモマナイ林道の入口 左の草の中に林道看板がある

 

 歌登から道道12号線でオホーツクにむかうが、速度を落として左側を注視してゆく。ケモマナイ林道の入口があるためで、慎重にすすむと首尾よく林道をみつけることができた。林道入口の左の草の中には錆びついた林道看板がたっている。看板の文字は消えかかっているが、ケモマナイ林道と読めるから、ここが入口と確認できた。

 7時14分に深い森林地帯をゆく22キロのケモマナイ林道の走行を開始した。林道は峠をこえて北にむかい、途中から東に転じてオホーツク沿いの問牧にでる。これまではオホーツク側から林道に入っていたので、道道12号線から進入したのははじめてだった。

 林道に入ってゆくと暗い林で路面は濡れているがフレンドリーな雰囲気だ。私は森からつたわってくる感覚を大事にしている。親密ならすすみ、拒んでいるようなら引き返すことにしていて、それはその場で感じたことに従うことにしているのだ。

 

 枝林道との分岐の先、進行方向を見る

 

 走りやすくて安定したダートを9キロすすむと枝林道との分岐にでた。この枝林道はTMにケモマナイ越林道と表示されている道だろうか。ここまで誰にも会わなかった。キツネやリスもいない。ダンプの走行痕とバイクの走った跡があるだけだ。オートバイは昨日か一昨日に反対方向からやってきていた。

 枝道との分岐の先は路面が荒れていた。道道12号線から枝道まではある程度の通行量があるようだが、その先は利用者が少ないためのようだ。落葉と枝が路面に散らばり、流水にけずられてクレパス状になったところがあった。廃道の雰囲気もただよっていたが、バイクなら問題なく走れるレベルだ。枝を踏むとパンクをするかもしれないから用心してよけてゆく。道路がよくないのでこの間の写真はとっていない。峠の上り下りがあり、展望ポイントもあったが、ガスで何も見えなかった。

 

 右奥からやってきた 左が新道 問牧線

 

 13キロすすむと新しい道との分岐にでた。この林道は以前はなかったもので、林業専用道問牧山林線とある。林業用とのことだが木の切り出しにつかうのだろうか。しかしこれだけ大きな工事をしていればクマもキツネもいないわけである。

 ケモマナイ林道は9キロの枝林道と13キロの新道との間が荒れていた。新道との分岐の先は路面はよくなり快調に走行する。白樺の森をゆく。林は暗くて道路は濡れているがよいところだと思う。気持ちも清々する。あらためて私は深山が好きなのだなと考える。それは私のDNAにきざみこまれているからなのだろう。

 魚つきの森、という名前の植林された広場にでると、林道の出口はちかい。魚つきの森とは、山に木を植えれば森が豊かになり、それが海にも流れ込んで、魚も増えるという発想の植林活動である。

 魚つきの森のすぐ先がТ字路で、ここがケモマナイ林道の出口だ。ここにも草の中に錆びついた看板がたっている。ケモマナイ林道の文字はここでも読みとれて、これが目印だ。

 Т字を右に曲りダートを少しすすむと集落にでて、すぐにオホーツク沿いの国道238号線である。国道にでたところに宗谷バスの問牧バス停があり、ここがオホーツク側から林道に入る目印だ。ただしこちら側から入ってゆくと分岐がわかりづらいのでご注意を。

 バス停にバイクをとめて休憩する。オホーツクにでると晴れていて時刻は8時10分だったから、ケモマナイ林道の走破にかかったのは56分だった。林道を走るのはたのしい。すべりやすい路面でタイヤを空転させたり、スライドさせたりしながらバイクをコントロールするのはとても愉快なのだ。アクセルの開閉と、体重移動でオートバイを御するのは、研ぎ澄まされた感覚が味わえるし、満足感がえられる。しかもそれが低速でできるのだから危険もほとんどない。他で見られない景色も目にすることができるから、オフロードを走らないのはもったいないと思う。

 国道238号線を北上することにする。以前泊まったウスタイベ・キャンプ場や入浴したことのある枝幸温泉ニュー幸林も見たかったが、問牧の南にあるので断念した。

 ガスがでて肌寒い。風も強いが海岸に釣人がたくさんいる。ひとりで何本もの竿をだし、テントをたてている人も多いから、何日もここでねばるのだろうか。テントは風にそなえた特殊な形状のもので、見たことのないタイプのものだった。帰ってから調べてみるとアイス・フィシュ・シェルターという製品で、氷上のわかさぎ釣りなどに使うようだ。釣っているのは鮭だろうと思うが、興味があるので見物しにいった。

 

 オホーツクの鮭釣り

 

 ひとつの竿たてに2本のリール竿をたて、ひとりで20本以上のロッドをならべて釣るのがここのスタイルだ。エサはタコのソフトルアーにイカの短冊を赤く染めたものをつけている。赤タンと呼ばれるものだ。釣人に聞いてみるとやはり鮭釣りとのこと。今が時期だが今年は遅れているそうだ。そして今日は台風の影響で海が荒れているので釣れていないとのこと。ポイントは波打ち際の少し先で、にんなに近くと思うところだ。しかし鮭がかかったら心おどることだろう。林道走行もよいが鮭釣りもダイナミックで男心をそそるよね。

 寒いのでセーターを着てはしりだす。上着はブルゾンだが革ジャンでもよいくらいだ。革ジャンも持参しているのだが、いらないだろうと甘い判断をしてしまった。ここから宗谷岬にむけてずっと釣人がならんでいた。車は旭川ナンバーがほとんどだった。

 

 エヌサカ線

 

 

 クッチャロ湖の東にエヌサカ線があるが、その海岸線に9、5キロのダートがあると前述のFukishimanさんのツーレポで知った。そこにむかうべくエヌサカ線にはいるとここは牧草地をゆく、北海道らしい何もないところで、風景に魅了されてダートにゆくのはやめてしまった。ここは利尻富士を見ながら走る太平洋沿いの道道106号線のようなところだった。

 以前キャンプしたことのあるさるふつ公園を通過する。この先は宗谷丘陵のひろがる原野を左に見ながらすすむ。宗谷丘陵にも林道があるから立ち寄ってゆきたいが、時間の関係で断念した。今日のご馳走はケモマナイ林道と利尻富士の見える道道106号線なので、まずこれを食べてしまわなければいけないから。

 

 

 

 

 

 

 

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