2016年 トランポでゆく北海道ツーリング 4日目

 

 宗谷岬

2 宗谷・利尻富士 

 10時に宗谷岬についた。寒い。サイクリストが重ね着をしている。自転車で走りだせはまた暑くなるのだろうが、止まっていると体が冷えてしまう気温だった。

 岬には観光客やライダー、サイクリストが集まっていたが、思ったほど多くはない。最北端のモニュメントの前に記念撮影の人がいなくなる時間があるほどだ。宗谷の海は浅く海草が一面に生えていてコンブのにおいがする。遠浅の海辺にはサギのような鳥が立っていて魚をねらっていた。

 稚内にむかうと晴れてきた。途中でリザーブになったのでフラッグのあるホクレンのGSをさがすがない。稚内駅につくと駅舎がたてかえられていた。となりに道の駅も併設されている。ここで車中泊をすれば稚内の町で飲めるが、居酒屋が少ないのが残念なところだ。

 稚内駅がたてかえられてしまったのは、昔の思い出のある無責任な旅人としてはさびしいことだ。地元の方は便利できれいになったと喜んでいるのだろうが、以前の建物のほうが味があったと思う。

 昼時になったのでどこで食事をとるのか考えた。スープ・カレーの店がよいと思ったら月曜日は定休日だ。稚内ではラーメン店、ノシャップ岬では漁師の家がリスト・アップされているが、まだ空腹ではないので、ガスを入れにゆくことにした。

 ホクレンがなければТポイントのたまるエネオスである。22、5K/L。単価は125円。ここでおすすめの店を聞いてみると、近くにある温泉施設『稚内温泉 港の湯』にあるレストランをおしえてくれた。海鮮から和食、洋食となんでもあるとのことで。観光客にすすめるには無難なのだろうが、これは面白くないと考えてゆかなかった。

 北防波堤ドームを見にゆく。ドームで写真をとったところで昼食はラーメンと決めた。海鮮料理に2000円も、3000円もだしたくないし、ふだんから海鮮丼などは食べないからだ。

 稚内駅前にひろがっている商店街にラーメン店はあるので、バイクで走ってさがす。商店街はシャッター商店街でさびれていた。以前セレナで家内とPキャンの旅に来たときに、この商店街の店からメロンを送ったことを思い出した。

 商店街のはずれでさがしていてラーメン店の『青い鳥』をみつけた。店はみすぼらしくてはやらないスナックのような外観だ。それを見てここはやめようかと考えたのだが、カワサキの大型バイクが1台とまり、中にライダーがいるようなので入ることにした。因みにとなりは大盛りで人気の喫茶店、ボリューム亭だった。

 店内にはいると客は3人いてカウンターはふさがっているから、4人掛けのテーブル席に腰をおろした。塩ラーメンが人気なので、その700円に野菜トッピング100円をつけ、餃子もたのもうとすると650円もする。餃子がそんなに高いのは私の価値観にあわないので、ラーメンを100円増しの大盛りにした。塩野菜ラーメンの大盛りで900円だ。

 

 青い鳥の塩野菜ラーメン

 

 青い鳥はテレビの取材をたくさん受けていて、サイン色紙や写真が壁にはってあった。それらをながめながらメモをつけていると、ラーメンは5分ほどでやってきた。早くてびっくりしたが、手早いのはポイントが高い。

 ラーメンはスープが透き通ったとてもきれいな仕上がりだ。盛りつけのバランスもよい。スープを飲んでみると、あっさり薄口のほんのり甘い味つけだ。麺は業務用のものを使っている感じ。チャーシューは硬くてメンマも業務用だろうか。よくないのは野菜で、炒めたものではなく、白菜ともやしを茹でたものがトッピングされていた。茹でた野菜は素人臭いし、しょぼい印象をうける。見た目はととのっているが内実のともなっていない一杯だった。

 11時55分に青い鳥をでた。都内ナンバーのホンダCRF250がとまっているが、ライダーはボリューム亭に入ったようだ。たぶん若い人なのだろう。ボリューム亭からは揚げ物のにおいがつたわってくる。CRFはモトクロス・タイヤをはいていて林道をはしった跡がある。これがこのツーリングで見た唯一の林道ライダーだった。

 ノシャップ岬にゆく。昔の岬には看板しかなかったが、イルカのモニュメントが設置されてから何年たつのだろうか。ここはイルカが置かれてもあまり変わらないところだ。

 BMWR100Rのライダーがやってきた。上下黒革のライディング・スーツを着た45くらいの人だ。BM氏は、DRはめずらしいですね、と話しかけてきた。そう、滅多にないバイクで、私もオーナーズ・クラブでしか同じモデルに会ったことがないんですよ、と答える。BM氏の友人ががDRビックに乗っているそうで、その人に私のDRを見せたいから写真をとらせてほしいと言うので、うなずいた。

 BM氏はR100GSがほしくてさがしたが、たまたま出会ったのがR100Rだったと言う。中身はほとんどGSなのだそうで、オンロードに見えてオフロードのようなバイクなのだそうだ。しかしハーレーやBMWなどの外車が多くなった。それらのバイクも車齢をかさねているし、ライダーも高齢化している。私も人のことは言えないが。

 

 蝦夷鹿の母子

 

 BM氏と別れて道道254号線にでようとすると、分岐に鹿の母子がいた。民家の横で草をたべている。車が通っても動じない。そのようすをカメラで撮影しているとBM氏がやってきたが、彼は蝦夷鹿に気づかないのか、手をあげて稚内方向に走り去っていった。

 

  太平洋上に浮かぶ利尻富士

 

 道道106号線に入ると待望の利尻富士が見えた。利尻富士は富士山のような形をした独立峰である。太平洋上にたっているからとても魅力的だ。

 

 道道106号線

 

 道道106号線にはガードレールも電柱もない。何もない原野をゆく道だ。人工物のない空間。日本であってそうでないような場所だ。空と海、地平線と利尻富士、丘陵地の原野と道道のうねりだけが見える。北海道ツーリングのエッセンスがここにある。自分とバイクと北の大地がまじりあう。北海道ツーリングは楽しい。幸せでも、そうでなくともたのしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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