2017年北海道トランポ林道ツーリング7日目

 

 

 藻琴山PAから屈斜路湖を見下ろす

 

帆立づくしの日 

6時5分に起床した。弱い雨が降っていて空の雲は厚い。予報では南の釧路・根室の降水確率は50パーセントで、北の網走は20パーセントになっている。釧路や根室の林道を走行する予定だったが、雨天では楽しめないので、計画を変更して網走方面にツーリングにゆくことにした。

 コーヒーをいれて飲み、セイコマ・ブランドの鶏だし塩そばのカップめんと昨夜たべきれなかったホッキの酢味噌和えの朝食をとる。駐車場には水たまりができている。バイクは雨に濡れているのでウエスでふきとり、ついでにカウリングに付着した虫のそうじをしておいた。ТW氏は雨で完全に見送りモードになっている。今日は1日温泉と水汲みですごすそうだ。

 雨はあがり空は明るくなってきた。バイクはキック2回で始動する。今日は林道に入らないだろうからショート・ブーツで出発した。道の駅・摩周温泉から走りだすとすぐに路面は乾き、国道391号線にはいって川湯温泉にすすむと晴れてきた。カッパを着てこなかったがそれが当たった。バイクはやはり晴れていないとたのしめない。林道もよいが天候が第一だ。

 道道102号線に入ると昨日走った屈斜路湖畔林道の出口がある。そこをすぎて山にのぼり、藻琴山展望台PAにはいると雲は多いが屈斜路湖がきれいに見えていた。ここでいっしょになった宮城ナンバーのカワサキZ1000氏と、湖が見られてよかったですね、と話しあう。Z1000氏は40くらいの人だったが、川湯に泊まったが雨は降らなかった、とのこと。明日はもっと悪くなるみたいですね、と話すと、そうみたいですが、今日北海道をたつので、今年は一度も雨にあたらずにすみます、だって。

 Z1000氏はこの先にあるハイランド小清水の展望台にもゆくと言う。私もそのつもりなので、そっちも湖が見えるといいですね、と話しあい、彼は先に出発した。ひとりで屈斜路湖をながめていると都内ナンバーのカワサキ250TRの若い女性もやってきた。

 ハイランド小清水に移動して展望台に歩いてゆくとZ1000氏がもどってくるところだった。よく見えてますよ、とのこと。そして、この先は晴れているから、今日のツーリング・コースは網走方向ですね、と話しあった。

 ハイランド小清水のほうが藻琴山PAよりも高所にあるので、よりダイナミックな湖がみえた。これはすごいと思って写真をとったり自撮りをしたりしていると、こんにちは、と250TRの女の子もやってきた。ライダーの走るコースは似ているのだ。

 

 

 藻琴林道の鹿避けゲート

 

 

道道102号線を北上するつもりだったがすぐ北に藻琴林道がある。TMには、銀領水までダート5キロ、とある。名水があるようだし今日は林道を走れないかもしれないから、行きがけの駄賃だとばかりにここを走り飛ばしてゆくことにした。

 しかし林道に入ってみるとジャリの浮いた走りづらい道だ。嫌だなと思っていると0、7キロで鹿避けゲートがあらわれた。そこに熊出没注意と大きく書いてある。前にも記したが文字は恐怖心を触発するのだ。ゲートを開け閉めするのも面倒で、ここで引き返すことにした。

 気温は24℃にあがり快晴となった。爽快な気分で道道102号線を北上してゆく。根室・釧路でなく網走にしてよかったと思う。オホーツク海にでると古くて味のある駅がある。見にゆくと藻琴駅で、高倉健主演の映画『網走番外地』で網走駅として登場したそうだ。現在は喫茶店もやっているようだが準備中だった。

 藻琴湖を見てとなりにある濤沸湖にもゆく。2014年版のTMの表紙になったという濤沸湖PAにバイクをとめた。よいところだが光線の加減か気に入った写真はとれなかった。

 TMを見ると、農道を網走方向にいったところに『感動の径』がある。名前がいささか安易だが、TMに、美しい丘陵地帯を走る、とあるので広域農道でむかうことにした。すると農道に入ったところから広大でゆるやかにうねる農地がひろがっていて、ここでもう感動した。十勝のような平原ではない。丘のつらなりで土地に起伏があるのがよい。写真をとりながらすすみ、感動の径でもたくさんの画像を撮影した。

 

 

感動の径近くの農地

 

 網走にむかい11時すぎに道の駅・流氷街道網走についた。気温は30℃近くあるようで暑い。道の駅は土産物が充実していた。ポスターが貼ってあり、根室さんま祭りときりたっぷ岬まつりのものがある。きりたっぷ岬まつりのキャラクターはなぜかルパン3世だ。こういう祭りがあることをバイク誌で読んだことを思い出した。

 そろそろ昼時なのでスマホで近くの店をチェックした。しかし周辺にゆきたいと思っていた食堂はない。そこで将来この道の駅でPキャンすることがあったとして、網走駅まで飲みにゆけるのか距離をはかることにした。駅についてみると1、6キロなので歩くのは可能だが、まわりに飲食店はない。網走の繁華街は駅からはなれていたと記憶するので、そこまでの検証が必要だ。

 網走で給油をする。22、9K/L。128円。能取岬にむかうが途中にバイラギ林道がある。TMには、走りやすいダート11、8キロ、とあるので走ってゆくことにした。しかし入口がわかりづらい。最初は通りすぎてしまい、舗装路で内陸にむかう道にはいったがちがうと気づいてもどった。

 道道76号線から見えているダートに入りなおす。しかしここも民家につづく道だ。廃品回収をしている方の住居で行き止まりだった。この家の老人にバイラギ林道のことをたずねると、すぐ先をはいるとのこと。しかし今は通行止めだと教えてくれた。なんでも農家の人が道に土をつんで封鎖しているとか。そんなことがあるだろうか。

 老人の家につづくダートのすぐ先に舗装の細い道があった。バイラギ橋の手前、カニなどの倉庫が角にたっているのが目印だ。バイラギ林道は通れないとのことだが、行けるところまで走ってみることにする。

 入ってゆくとすぐにダートとなりジャリが深くて走りづらい。バイラギ林道の看板もたっていたが1、3キロ先のY字路で通行止めとなっていた。林道決壊のためとある。Y字の一方は能取林道という林道で、8、9キロと表示されているので通行できるようだが、このルートは呼人浦方向にゆくのかと考えたものの、TMを見ても判然としないので入らなかった。

 バイラギ林道ではエゾリス1匹にあった。道道76号線にもどって能取岬にすすむ。岬には数年前にいっているので立ち寄らない。岬の入口付近にはクマの糞があった。アスファルトの道道にあるのははじめて見た。

 能取岬の見えるパーキングにはいりメモをつけて写真をとっていると、山陽ナンバーの軽キャンカーの方が、写真をとってあげようか、と話しかけてきた。リタイヤした方だ。ありがたくお願いすることにする。軽キャンカー氏は能取岬でスケッチをしてきたそうだ。それはいいですね、と言うと氏は笑っていた。リタイヤしたらスケッチ旅行をするのも素敵だ。皆さん自分の好きなことで楽しくすごされている。

 

 

清楚で美しい 能取湖

 

 道道75号線で能取湖沿いをはしる。快晴のためか湖がとてもきれいだ。清々しくなるほどの清楚なたたずまいだった。今日の目的地はサロマ湖を見下ろす幌岩山展望台といつの間にか決めていた。ここは1983年のツーリングでも立ち寄り感銘をうけたところだ。その後車で来たときにゆこうとしたのだが、熊出没のため林道が閉鎖されていて果たせなかった。はからずも網走・能取岬に来ることになったのでたずねたいと考えたのだ。

 卯内原にセイコマがあったのでゴミを捨てさせてもらい、カップめんを買った。昼食は北勝水産でカニをたべたいと思っていたがまだ距離がある。セイコマのホットシェフにあるカツ丼ですませようかと思ったが、イートイン・コーナーはなく、日差しが強いのに日陰は店の軒先しかないし、たって食事をするのも、地べたにすわるのも嫌である。店の前の駐車場の車の中で弁当を口にしている人がいてうらやましいが、バイクに乗っている今はやせ我慢をして走りだした。

 常呂に食堂があるだろうと思ったのだが、ホタテで有名な『レストハウスところ』しかない。TMを見てもこの先は蕎麦屋と北勝水産しかないから、ホタテは好きではないのだが、ここを利用することにした。

 レストハウスところの推しはホタテとホッキとなっている。ラーメンやチャーハン、カツ丼などもあるのだが、観光客の私がここでホタテをたべないわけにはゆかないではないか。これもご縁だと思って帆立づくし定食1800円を注文することにした。

 店内は観光客と地元の人が半々という感じだった。駐車場には埼玉ナンバーのセローがとまっていて、その50くらいのライダーが帆立づくしをたべているのが見える。地元の方はラーメンやカツ丼にしていてそれらも美味しそうだった。

 料理をまっていると地元の人が入ってきて相席してよいかと聞く。席がないのかと思ってOKすると、店の方がやってきて空いているテーブルがあるからそこに移るようにその人に言う。しかしその60過ぎの男性はここがよいのだとゆずらない。私の前の席がお気に入りのようだ。店の人は、すいませんね、相席をお願いします、と言って下がっていった。相席者はラーメンとライスを注文し、雑誌とヒーヒーを持ってきた。コーヒーを見ていると、コーヒーはセルフで一杯サービスだと教えてくれた。

 

 

帆立づくし定食

 

 帆立づくし定食は手早く提供された。内容は刺身にフライ、塩茹でに煮付けなどで味はふつうだ。☆5点満点平均3点で3点かな。オホーツク沿いという場所や地域の名産なのを加味して3、1点。ただ品数を考えればお値打ちだと思う。

 相席者にもラーメンとライスがきて食べていたが、彼は私に「ホタテは美味しい?」と聞く。「ふつうじゃないですか、まあまあかな」と答えたが、ホタテの仕事をしてきた帰りなのだそうだ。自分が作業をしてきたホタテを観光客がたべているのが気になったようだが、ホタテの仕事でこき使われて帰るところだ、と言う。こき使われてまいったよ、と。これにはなんと返事をしてよいのかわからないから、はあ、と相槌をうっておいた。ホタテの仕事をする人には会ったことがないから話をしてみようかと思ったが、ネガティブな人なのでやめておいた。相席者は食事をおえると会釈もせずに立ち去った。

 セルフ・サービスのコーヒーを飲んでお会計をすると、帆立づくし定食は1800円ではなく1944円だった。この先に食堂はないと思ったのだが、走りだすとすぐに中華料理店があって脱力してしまった。しかし帆立づくし定食は一度はためす価値があると思う。

 キムアネップ岬がサンゴ草の群生地とのことで立ち寄った。サンゴ草はほんのり赤い状態で濃い色にはなっていない。季節が早いのだろうか。

 14時30分に北勝水産についた。以前に来たときにカニをたべられたと記憶していたのだが、そうではなくなっていた。イートイン・コーナーにあったのはホタテバーガーとホタテカレー、それにおにぎりだ。こうなると帆立づくしをたべてきてよかったと思う。そしてそれに一品加える遊び心で、ホタテバーガーもためしてみることにした。ホタテバーガーはホタテフライのバーガーで、フライ2個は360円、3個は450円だ。フライ2個のバーガーをオーダーした。

 

 

 北勝水産のホタテバーガー

 

 ホタテバーガーはおいしかった。香ばしいパリパリのバンズにトマト、レタス、オニオン、ホタテフライ、それにたっぷりのタルタルソースという構成なのだが、B級グルメのような、ジャンクフードみたいな味わいがとても好みだ。ご当地グルメにもえらばれたとのことだが、さもありなんと感じられた。☆5点満点平均3点で3、8点。今日たべたホタテ料理の中でいちばんだ。

 北勝水産の駐車場には荷台にホタテ貝と氷を満載しているダンプカーがいた。ダンプの荷台に直接ホタテを積むという豪快な光景はオホーツクでしか見られないだろう。

 今日の目的地の幌岩山展望台にむかう。幌岩山林道でゆくのだが、その入口は北勝水産のすぐ横だ。幌岩山林道は展望台まで5、4キロだが、入ってから1、4キロが舗装路で、その先がダートになっている。未舗装だがとても走りやすい道だ。狭いから車の離合はできないがバイクは問題ない。車2台とすれちがい、物欲しそうにしているキツネ1匹に会ったがなにもやらずに展望台の駐車場についた。

 誰もいないのではないかと思ったが、駐車場には車が2台とまっていた。ここから山の上の展望台に階段がのびているので上がってゆくと、観光客が4人いる。展望台からはサロマ湖とオホーツク海が見下ろせた。サロマ湖が海とつながっている湖口とよばれる部分がよく見える。1983年にも同じ風景を目にしたが、5キロも林道をのぼらなかったから、もっと下の展望台だったと思う。

 弟子屈に帰ることにする。来た道はもどらず、幌岩山林道を北にすすんでダートを4キロ下り、サロマ湖にでた。国道238号線で北勝水産方向にもどり、道道103号線、道道655号線とつないで南下する。道道655号線はほとんど車が走っていなかった。

 国道333号線に入って北見から美幌にむかう。美幌から国道243号線で弟子屈にむかうはずが、道をまちがえて国道39号線で網走方向にすすんでしまった。おかしいと気づいて地図で確認してもどることにしたが、たまたまバイクをとめたところに『びほろ後楽園』の看板があった。温泉で立ち寄り湯ができるとあるし、TMに「低料金で宿泊可」とコメントされているので、道をまちがえたついでにここで風呂に入ってゆくことにした。

 

 

びほろ後楽園

 

 びほろ後楽園は広い敷地に古くてぼろい(失礼)建物がたくさんたっている施設だった。サイロのようなものや、豚舎のような建物、ロココ調の木造ホテル、プレハブの飯場のようなものがある。一見すると廃墟のようで近寄りがたいが、人気はあって車はたくさんとまっていた。

 サイロのようなものがある建物が温泉だった。入浴料は格安の380円だ。風呂もぼろいが(またまた失礼)湯はヌルヌルとした好ましい泉質だった。露天風呂はあるがぬるい。サウナもあるが砂時計はこわれていた。低料金だから石けんやシャンプーはない。ドライヤーも100円だ。施設は古くてぼろいが、安くて味があるから人気があるのがわかるところだった。

 9月11日から補修のため休業するとあるからタイミングもよかった。縁もあったのだろう。今後も機会があれば利用したい温泉だ。(補修は終わり2017年の10月30日から営業を再開している。名前も、ライフ・イン・ビホロ、に変わり、入浴料も400円になっている。)

 湯上りにコーヒー牛乳130円を飲んで出発する。17時55分だった。国道243号線に入ると美幌峠まで24キロ、弟子屈まで55キロとでていて思ったよりも距離があって力がぬける。しかし70キロから80キロの速度で美幌国道をすすんでいった。

 美幌峠にさしかかるとライトをハイビームにし、鹿に注意して劇走する。DRのシングル・サウンドをまきちらしながらの走行だ。前にも書いたが我がDRのマフラーは2本出しで、しかも古くなってぬけているから音が大きい。アクセルを開けると、ズババババッ!、と排気音がひびくのだ。

 ライトに虫がむかってくる。時折手のひらほどの大きさの蛾が視野を通りすぎた。あんなのにぶつかったら嫌だなとおもいつつ美幌峠を通過してゆく。美幌峠は21℃だった。

 美幌峠を下ってゆくと暗闇の中に屈斜路湖がみえた。中島もわかったが和事半島は見わけられなかった。真っ暗な山道を下ってゆくと忽然とリゾート・ホテルがあらわれた。プリンス・ホテルだ。明かりが煌々とついた光のあふれる建物がならんでいる。ガラス張りのレストランがあり、ディナーをとっている人たちが見えた。夜にここを通ったことがなかったからホテルがあることに気づかなかった。ここだけ別世界のようだった。

 19時に弟子屈についた。美幌から約1時間だ。ホクレンでガスをいれる。23、1K/L。127円。フクハラで刺身の盛り合わせ半額の249円とイカの酢味噌和え274円、サッポロ・クラシックを買った。

 道の駅に帰る段になると、とめたままにしている車が気になる。第二駐車場は空いているし、助手席に道の駅で買ったみやげを見えるように置いてあるから問題ないと思う。しかし2日間おなじ場所にとめっぱなしだから、今更気がかりになったのだ。

 道の駅の駐車場にもどってみるとやはり何の問題もなかった。ただハイエースの隣りにバイク用としてあけておいたいちばん奥のスペースに、数台はなれたところにいた同ナンバーのワンボックスカーが入ってしまっている。空いているのに隣りにぴったりとだ。いちばん奥にとめたいのかもしれないが、同ナンバーでならんでいては友人のようだし、すぐ横で寝るのは嫌なので車を移動させた。

 バイクの荷物をおろしているとТW氏がやってきた。ずいぶん走ってきたね、どこに行ってきたの?、と聞くので、サロマ湖まで行ってきました、と答える。弟子屈も晴れたのでТW氏もバイクで美幌峠や石北峠などを200キロ走ってきたそうだ。ТW氏は走るのが好きな方のようだ。バイクを操るのがお好きなのだろう。

 明日は朝から雨だそうだ。雨降りならば車で行動するほかない。ТW氏に亀の湯の場所をお聞きする。亀の湯は朝7時から夜の20時まで300円で利用できる弟子屈の温泉なのだ。200円ではいれる泉の湯もあるが、亀の湯のほうがよいと教えていただいた。

 

 

今宵の夕食

 

 車の中にはいり刺身とイカの酢味噌和えで一杯やりだす。イカの酢味噌和えは昨日のホッキの酢味噌和えが美味しかったから買ったのだ。明日雨ならばまず亀の湯につかり、その後は網走で飲むか、昨年のように旭川でジンギスカンとバーにゆくか、もしくは苫小牧のマルトマ食堂にむかうかだ。網走は今日いったばかりだし、旭川には去年いっている。マルトマ食堂は何年もたずねていないからここにしたい。しかし雨天でなければバイクで走るつもりだ。すべては明朝の天候しだいである。

                        バイクの走行距離347、6キロ ダート12、5キロ

 

 

 

 

 

 

 

 

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