2019北海道トランポ林道ツーリング4日目

 

 浦幌森林公園キャンプ場

 

 

9月2日。月曜日。釧路湿原周辺の林道めぐり。 

 6時に起床した。天候は晴れ。寒い。毛布を2枚かけて寝ていたが、足がでていて冷えてしまった。長袖シャツにライディング・ジャケットまで着て体をあたためる。カレーヌードルで朝食とした。昨夜は暗くてわからなかったが、近くにキャンプ場があると表示されているので車でいってみることにした。

 道の駅の裏にある丘を越えてゆくと広い公園があった。そのいちばん奥に野営場がある。車をとめて歩いてゆくとライダーが3人テントを張っていた。大型バイクにクロスカブと車種がバラバラだから3人ともソロのようだ。現役の人がふたり、リタイヤした方がひとりのようで、彼らは思いおもいにすごしている。カブの旅人が引退した人だが、私も年をとって大型バイクに乗れなくなったら、最後のオートバイはスーパーカブにしようと思っている。

 じつはキャンプ場で水を調達したいと思っていた。ここの水場で私がタンクに飲料水をくんでも、彼らは何も言わないと思うが、それを見られるのはカッコ悪いからやめておいた。

 今日の目的地は釧路の林道だ。今後の拠点にするつもりの道の駅しらぬか恋問にむかう。距離は50キロほどだ。昨夜とおなじく原野や海沿いをゆく。昨晩は荒野の風景が見られないのを残念に思ったが、ここと同様のながめのはずだと思うと気がすんだ。

 ナビの指示ですすむと鉄道の白糠駅にゆこうとするので修正する。目的地は電車の駅ではなく道の駅だ。白糠のホクレンにフラッグありますと看板がでているが、後で来ることにして通過する。8時40分に道の駅しらぬか恋問についた。

 道の駅は大きくて駐車場もひろい。道の駅の建物のまわりだけでなく、隣接するジャリの土地にも車がたくさんとまっている。駐車場は奥にひろがっているので、いちばん端までいって、空いている場所にハイエースをとめた。閉店した店舗の前だ。はじめは何の店なのかわからなかったが、以前あったローソンだと気づいた。道の駅にあるコンビニならば繁盛は必至と思うが、潰れてしまっていた。

 まわりにほとんど車はとまっていないので、長時間駐車をしても問題はないと判断し、ここを今後の拠点とすることにした。バイクを車からおろして出発の準備をする。気温があがってきた。Tシャツの上にライディング・ジャケットを着て走りだす。素肌にはいたジーパンがスースーするがそれもすぐに慣れた。

 車で走ってきた国道38号線を白糠方向にもどり、途中で道道242号線に入って北にある新興松川林道にむかう。林道の入口がわかるか心配だったが、いってみると林道看板がたっていたのですぐにみつけることができた。

 

 新興松川林道 ヌタヌタは念のために押してゆく

 

 林道看板の文字はうすれていたが、なんとか新興松川林道と読むことができた。林道に入ってゆくと水たまりが多くヌタヌタがある。慎重にすすんでゆくが、泥が斜面から流れだして、路面をおおっているところは念のためにバイクをおりて押してゆく。足場の悪いところでオートバイをたおすと、引き起こすのが非常に困難だからだ。山の中にひとりでいて、何かあっても誰も助けてくれないから、よくよく考えて行動する必要がある。

 車が1台だけ通った跡がある。四駆の軽トラかジムニーと思われるものだ。ヌタヌタを2ヵ所押しで通過してゆくと、入口から1、7キロで大規模に斜面がくずれて路上を泥でおおったところにでた。ここは泥濘が深く、ブーツのくるぶしまで埋まりそうだ。距離も長いし、途中でカーブしているから行くのが嫌になる。何度もバイクを押していて息もあがっているし、この先も状況は変わらないようなので、ここで引き返すことにした。

 林道は毎日のようにコンディションが変わるから、行ってみないと走れるのかわからないものである。この地域は新興松川林道だけの予定だったから時間があいてしまった。TMを見て近くにある林道を物色すると、庶路本流林道があるのでここにゆくことにする。その手前に阿寒にぬける道東第2期林道もあるが、庶路本流林道をゆけば白糠の町にアクセスすることができる。昼食は白糠にある『はまなす』というレストランでとり、ホクレンで給油をしてフラッグをゲットしようと考えた。

 道道を北上してゆくとまず阿寒にゆく道東第2期林道の入口が右にあらわれ、そこを通過してゆくと庶路本流林道が左にあった。庶路本流林道と看板がたっているが、TMではここも道東第2期林道となっているから、ふたつの林道はひとつながりの道なのだろう。

 庶路本流林道に入ってゆくと路上にキタキツネが1匹寝そべっていた。健康的で若い個体だ。お腹がいっぱいなのか満ち足りた表情をしている。キツネは私に気づくとのっそりと茂みにはいっていった。

 走りやすいダートをゆく。たまに浮きジャリがある。路上には色づいた葉が落ちていて秋の気配がただよっていた。沢沿いをゆく。庶路川の支流だ。この道はぬけられそうだと思ってすすむと、4、7キロ地点で通行止めとなっていた。工事中のためとある。それならそうと入口に書いておいてくれよと思うが、往復で10キロのオフ・ロード走行ができたのだから、よかったのかもしれない。

 

庶路本流林道は4、7キロで通行止め 右はNТТの私有地で進入禁止だった。

 

 通行不可の林道ばかりを走っているが楽しい。林道で冒険をしている気分なのだ。阿寒にむかう道東第2期林道に転進することにする。阿寒には食事処が少ないがなんとかなるだろうと考えたりしていた。

 道東第2期林道にゆくとすぐに通行止めの看板があった。2、5キロで通行不可と。しかしここもゆけるところまで走ることにする。林道は走りやすいダートだ。軽いヌタ場や路面を水がながれているところもあるが、ステップから足をはずすまでもなく通過する。やがて通行止めのゲートがあらわれた。その前でバイクをとめて写真をとって引き返す。往復で5キロのダート走行だった。

 昼食をとるために白糠のはまなすにゆくことにした。そこにむかって走りだしたが、念のためにバイクをとめて食べログをチェックすると、登録しておいたのははまなすではなく『やはた』というラーメン屋だった。はまなすは道の駅で紹介されていた店で、それと勘違いをしたのだ。そこで『やはた』にゆこうと思ったが、これから釧路湿原にゆくので、その方向のレストランをしらべてみると、大楽毛のぶた福という食堂がリスト・アップされている。豚丼の店だ。ラーメンよりも豚丼の気分だし、釧路方向にすすめば効率もよいからぶた福にゆくことにした。

 ぶた福までの地図を頭の中に入れて出発する。ハイエースをとめている道の駅しららぬか恋問の前を通過するときに、車のようすを見た。私のバンのまわりに車はほとんどいないから問題はないようだった。

 釧路の手前にある大楽毛の町に入ってゆくとすぐにぶた福はあった。店の前に車やバイクがたくさんとまっているから目立つ。ただ入口がわかりづらい。スナックの扉のようなドアをみつけて店内にはいった。

 

 ぶた福のミックス丼 肉とごはんとも大盛り

   

 店の中は炭火で豚肉を焼いているよい匂いがしていた。メニューを見てロース肉とバラ肉のミックス丼880円にすることにし、女性スタッフにミックス丼の大盛りを注文すると、肉とごはんのどちらを大盛りにしますか、と聞かれて、せっかくなので両方とも大盛りにすることにした。ミックス丼880円+ライス大150円+肉の大盛り200円で1230円だ。

 これから行く釧路湿原の林道を林道ツーリングガイドブックであらためて読んでみた。このダートは完走することができるだろうかと考えたりする。肉はコック服をきたご主人が丁寧に焼いている。迷いのない熟練の手つきだ。そのようすを見れば几帳面に仕事をしていることがよくわかった。

 15分ほどでミックス丼の肉・ライス大盛りはやってきた。はじめに見た印象はこれで大盛りなの? 少ないんじゃないの、というものだった。しかし豚肉もごはんもぎっしりと詰まっていた。肉は炭であぶっているから脂が落ち、炭火の香りがうつっていて美味しい。豚肉は厚切りなので食べごたえもある。薄味で仕上げてあるので卓上にあるタレをかけながらたべた。

 食べすすめてゆくとロースはよいのだが、バラ肉は脂がつよくてしつこく感じられだした。そして自分で大盛りをたのんだのだが、肉が罰ゲームのようにたくさん入っているのだ。食べきれないのではないかと思ったが、なんとか完食することができた。次に来ることがあったらロース丼のライスのみ大盛りにするつもりだ。ぶた福はおいしくて接客も親身だが、トイレが和式なのがマイナス。☆5点満点平均3点で3、8点。店内に同年輩のライダーがいたが、細身のその方は並をたべきれずにのこしていた。脂につよくない人はむかないかもしれない。

 ぶた福をでて国道139号線で遠矢にむかう。遠矢の交差点にセイコマがあり、ゴミ箱があったのでゴミを捨てさせてもらい、カップめんを買った。この交差点から釧路本線の線路に沿ってゆく道に入る。3キロほどすすむと踏切があり、ここが林道の入口だ。ここからジャリダートを5キロほどゆくと釧路湿原の細岡展望台にいたるのである。

 林道はジャリがいれてありよく手入れされていた。浮きジャリダートをゆく。湿原にゆくのでフラットなのかと思ったら山にのぼってゆく。やがて森に入り山越えのルートとなった。交通量のまったくない森林帯をすすむ。あと2キロで細岡展望台につくという地点までゆくと、人が歩いていた。それも若い女性だ。私とおなじく展望台にむかっている。会釈をかわしてぬいたが、こんなところにひとりで来る? クマが怖くないのだろうか。いやヒグマよりも人間の男のほうが危険なのではないか、などと考えてしまった。細岡展望台から歩いてきたのだろうか。ハイキング気分で? しかしいるはずのない場所に人間がいると、ものすごくこわい。

 

 細岡展望台

 

 細岡展望台につくとつきぬけた広大な風景がひろがっていた。湿原の幅は約10キロだ。湿原の中を釧路川が蛇行してながれ、はるか先に対面する山なみが見える。ここには2016年にも来ているから景色はわかっていたが、あらためて雄大だと思った。

 気温は22℃だ。日差しが強くなり暑くなってきた。2016年は雲がわいていて空も劇的だったが今日はそれがない。それでもここはよい。気持ちが晴ればれとする。釧路湿原には展望台が何ヶ所かあるがここがいちばん好きだ。

 細岡展望台の先は舗装路となった。水を満々とたたえた達古武沼の横をとおって国道391号線にでた。国道を左にゆくとすぐ右手に林道の入口がある。ここが次の目的地、団体営西和農道だ。

 団体営西和農道は幅広の浮きジャリダートだ。すすむとジャリは少なくなり飛ばせるようになる。やがて宗谷丘陵のような丘陵風景がひろがった。団体営西和農道はぴったり5キロで終わり舗装路にでた。

 道道221号線にでて北上するがこの道は車がほとんど走っていないので、50~60キロでゆったりとながした。

 塘路湖にでてコッタロ湿原展望台にむかう、道道1060号線クチョロ原野塘路線にはいる。このダートは2016年にも走りにきたが、大雨のために道が水没していて、走れなかったところだ。したがって3年越しの再チャレンジである。

 

 道道1060号線クチョロ原野塘路線 幅広の浮きジャリダートだ。

 

 林道をすすむと幅広ダートとなった。観光バスがすれちがえるほど広い道で、未舗装路としては北海道でも有数のものだ。ただ浮きジャリダートなので走りづらい。やがて見とれるほど水量のゆたかな釧路川のほとりにでた。周囲は湿原で平坦なのに川は滔々とながれていた。

 ジャリはときに深くなり、ハンドルをとられるので、浅いところをえらんで走った。5キロでコッタロ湿原展望台に到着する。誰もいない展望台だ。バイクをとめて展望台にのぼってゆくがずっと階段がつづいている。そこを上りたくないので、展望台とは別の方向にある三角点にいってみた。小高くなっていて展望台の3分の1くらいの高さのところだ。ここでも十分に湿原が見える。何もない草原のような原野がひろがっていた。しかし展望台までゆかないと後悔しそうな気がして、階段を上るのは嫌なのだが、ゆくことにした。

 苦労して展望台についてみると、三角点よりも広い範囲を見渡すことができた。湿原に点在する小さな沼も見える。原野が地平線までつづいていた。

 展望台の登り下りで汗をかいてしまった。バイクまでもどると車の夫婦がついたところだ。その奥さんが車からおりてきて、ジャリ道を指差し、こっちの道にいかないほうがいいですよ、と言う。私が走ってきた方向だ。そっちから来たんですよ、と答えると、たいへんでしたよね、と言う。バイクだからそうでもなかったですよ、と答えているとご主人が自動車からおりてきて、オフロード・バイクなんだよ、と説明していた。女性は何もわからずに親切心で忠告してくれたのだが、わざわざ好んでこんな道ばかりを走っているなんて、思いもしないだろう。

 コッタロ湿原展望台の先は舗装路となった。この道をゆくとキタキツネが2匹いて、鹿が1頭路上にぼんやりとたっていた。蝦夷鹿はしばらく動かなかったが、DRで近づくと突然はじかれたように走りだし、茂みに消えた。鹿はこういう行動をすることが多い。反応が鈍いのである。

 鶴居にある無料で人気のキャンプ場が見てみたいと思っていた。鶴居温泉にもはいりたいので国道274号線まで北上し、西にすすんで道道53号線で南下して鶴居にむかった。

 鶴居の町にはいればすぐに温泉があると思っていたが、ない。キャンプ場の案内はあったので行ってみると、こちらはすぐにみつかった。芝生の公園のような野営場だが、想像していたほど広くはない。テントはたくさんたっていたが混雑はしていなかった。ワンボックスカーにクロスカブを積んでいる人がいたが、バイクの趣向がちがうので話しかけなかった。

 鶴居で温泉は見つけられなかった。TMには国道沿いにあると記されているが廃業してしまったのだろうか。セイコマに入ってコーヒーを飲みながらスマホで近くにある立ち寄り湯をしらべてみると、山花温泉リフレがあるので、ここにゆくことにした。

 

  影の長くなった夕刻の道道

 

 日が傾いて影の長くなった道道をリフレにむかう。昨年家内とこの付近を車で旅したが、そのときにリフレの看板を見ていたことを思い出した。キツネ1匹と会い17時すぎにリフレについた。料金は620円だがJAFの割引で520円になった。しかし手ぬぐいもバンダナも忘れてきてしまった。タオルを買おうかと思ったが、使わないタオルがふえるのは嫌なので、バスタオルとハンドタオルのレンタル・セット210円を利用することにした。因みにハンドタオルの値段は270円だった。

 リフレの温泉は緑色で塩分の濃い泉質だ。温度は42℃なのでじっくりとつかっていられた。露天風呂とミストサウナもあってくつろいだ。

 メモを整理して19時すぎにリフレをでた。タンク・バックがほころんでいることに気づく。何十年もつかっているから壊れもするだろう。しかしまだ使用するのに問題はなかった。暗い道道666号線で釧路市街にむかう。道道は60キロで流れているが、国道38号線のバイパスに入ると80キロになった。

 気温が下がってきて寒い。手もかじかんでいるが我慢して走る。道の駅の周辺には店がないので、通りすぎた先にあるセイコマまで行ってビールとツマミを買おうかと考えた。いやそれならいっそ、白糠の町までいって、ホクレンで給油をしてフラッグをゲットし、買物もすることにする。しかしGSについてみると、店は閉まっていた。夜になっても営業しているという都会の感覚は、地方では通用しないのだ。そんなことはわかっているはずなのに、同じ失敗を繰り返してしまう。

 コープがあったのでここで色の悪くなった半額の刺身の盛り合わせとビールを買った。コープのビールはコンビニよりも安いから、その分だけ長く走った甲斐があったと思うことにする。道の駅と白糠の町の往復は15キロほどだ。セイコマの往復なら5キロほどだから10キロ無駄に走って20時すぎにハイエースの中に入ったが、体は冷えきっていた。

                                     バイクの走行距離 234、2キロ ダート 36、4キロ 車の走行距離 57キロ

 

 

 

 

 

 

 

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