文学2004 日本文藝化協会編 講談社 2004年 3300円+税
2003年度に文芸誌に発表された作品のなかから、選りすぐられた小説をあつめた短編集である。
近年手にする本の作家に幅がなくなり、固定化しつつあると自覚していた。私が知らなくとも実力のある新人は常に誕生しているものなので、未知の実力派を発掘して贔屓にくわえたいと思い、この本を読むことにした。2003年度の代表作に眼をとおせば、注目すべき新たな作家をみいだせると期待したのである。
読みすすめていくと重苦しい作品からはじまる。そして若い作家ほど気に入らず、これはと思うのはベテランか、おなじみの小説家なのだった。この年に新人は不作だったのだろうか。ベテランほど輝いていて、若々しい感性や、刺激的な才能には出会えなかった。
掲載されているのは以下のとおり。
人蕈 吉田知子 千年蒼茫 金城真悠 丸の内 黒井千次 ナガレボシ 増田みず子 逆水戸 町田康 微熱語り 落合春侑 ザーサイの甕 辻原登 古墳の話 車谷長吉 長きこの夜 佐江衆一 入学式 佐藤洋二郎 ぶーらんこ ぶうらんこ 林京子 アンタロマの爺さん 湯本香樹実 いも・たこ・なんきん 大道珠貴 機縁 飯尾憲士 大きい犬 川上弘美 袋小路の男 絲山秋子
辻原登の作品は『枯葉の中の青い炎』に収録されていたので再読であった。辻原は『森林書』で呆れ果てたがこの作品は秀逸。また、まえから好きな黒井千次、重苦しい作風で苦手の車谷長吉、村田喜代子、佐江衆一、飯尾憲士の作品がよかった。