江戸の高利貸 旗本・御家人と札差 北原進 吉川弘文館 2008年 1700円+税

 江戸時代の代表的な高利貸し『札差』について詳述した書。

 江戸時代におこなわれていた金融全般について紹介し、その後で特異な発展をとげた札差の成立と繁栄、金を借りた武士の困窮と、借金の棒引きの歴史について記述している。

 江戸時代には大商人による大名への融資から、小商人が朝に100文を借りて商品を仕入れ、それを1日売って、夕方に101文にして返したという(年利365%!)ものまで、幅広い金融活動が展開されていた。

 江戸幕府の体制が確立されてくると、旗本・御家人の生活も定期的に俸禄米を支給されるサラリーマンのようになっていった。幕府の米蔵は浅草にあり、俸禄米の支給日には武士が手形(札)を持って蔵前にならび、長い時間待ったという。混雑もひどかったことから、武士の代わりに手形を受け取り、米を受給して売却し、換金して手数料を取ったのが札差の始まりで、商売柄米問屋が多かった。これが後に支給予定米を担保に金を貸すようになり、大繁栄するのである。

 世が太平となると生活は華美になり、都市生活者の武士の消費性向も高まっていった。しかし武士の収入は一定の米だけであり、しかも平和な社会では米の値が低下していったから、武士の経済は苦しくなった。社会のメカニズムから必然的に武士の借金は増えていくことになったのである。

 札差は繁栄していくが、数字に弱い武士の無知につけこんで、高利、高手数料を取り、あこぎな稼ぎをしていた。これは幕府の規制を受けることとなるが、札差の存在は武士社会になくてはならないものとなっていて、保護と規制、そして過大になりすぎた借金の棒引きの歴史を明治維新まで繰り返すのである。

 繁栄を極めた札差たちの文化や遊びなどの記述もあって非常に興味深い書である。

 

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