8月1日(火) ホーク氏との別れ

 雨はあがった。昨夜のうちに。XL氏は八甲田にむかったことだろう。XLも水がはいらなければ止まることもなく、無事に進んでいることだろうとホーク氏と話しあう。

 ふたりで恐山にむかった。火山のただなかにある恐山は不気味な雰囲気がただよっていた。観光客もすくない。ござのうえに座って客をまつ老婆のイタコは、胡散臭いが口寄せをつづけた年月が目の送りや所作にしみついていて、独特の引力がある。見るのは良くないのに目をひかれてしまうような感じ。健全ではないのについ見てしまうような後ろめたいイメージ。いずれにしてもあまり見ないようにした。もともと私は霊感は皆無なのだ。

 

 賽の河原に一面にさされた風車の原色の赤が印象的だった。水子は、こんなにいるものなのか、と素朴に感じるほどおびただしい数の赤い羽根が湖岸にたっていた。

 恐山からむつにくだり、陸奥湾沿いの279号線を南下し青森駅についた。ホーク氏は日本キャニオンが見たいという。私は十和田、田沢湖、八幡平をはしりたい。ここでホーク氏と別れた。ホーク氏は学生ではなかった。たしか札幌でコックをしていたが、日本一周のために辞めて旅にでた人だった。氏は当時としてはめずらしくジェットヘルを愛用していた。シールドもクリヤとスモークを持参していて、日差しの強くなったここでクリヤをスモークにつけかえて走り去った。ホークにジェットヘル、彼の好みが忍ばれる。片岡義男の小説にでてくるようなイメージ。アップハンのバイクにジェットヘルで、風を感じて自分のペースではしるタイプの男。ホーク氏は無口だった。

 ひとりになった私は再び思い出の十和田湖への道を登っていった。高校生のときに自転車ではしって休憩した菅野茶屋をすぎ、豪雨で停滞を余儀なくされた酸ヶ湯を通過する。十和田湖をぬけてさきにすすみ、『八幡平支所前』というバス停で泊まったと記録されているが記憶に残っていない。覚えているのは高速で帰る金は残っていなかったこと。高速にのらずに野宿していけば、ガス代と食事代は足りるという計算で行動していた。

                                 走行距離  306.4キロ

 

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